EPA:DHA比率のメタアナリシス、オメガ3サプリの最適配合を論文から読み解く
はじめに
2026年1月22日、Critical Reviews in Food Science and Nutritionに興味深いメタアナリシスが掲載された。
Khabir et al., 2026「Role of the EPA: DHA dosing ratio in omega-3 supplements on blood fatty acid profiles and inflammation」
96の臨床試験を分析し、EPA:DHA比率が効果に与える影響を体系的に評価した研究だ。
「EPA多めがいい」「DHAは脳に効く」という一般的な認識は、部分的にしか正しくないことが分かった。
EPA:DHA比率で効果が変わる
メタアナリシスの結果
研究チームは96の臨床試験(2025年2月以前に発表)を分析し、EPA:DHA比率別に効果を比較した。
比率別の効果まとめ:
| 比率 | 炎症マーカー低下 | アラキドン酸低下 | 血中EPA上昇 |
|---|---|---|---|
| <1.0(DHA優位) | 最も効果的 | 中程度 | 中程度 |
| ≥1.0(EPA優位) | 中程度 | 最も効果的 | 最も効果的 |
これは重要な発見だ。「EPA多めがいい」とは一概に言えない。
なぜ効果が異なるのか
EPAとDHAは、作用機序が異なる。
EPA(エイコサペンタエン酸)の特徴:
- アラキドン酸(AA)と競合する
- AAから産生される炎症性エイコサノイドを抑制
- 血中EPA:DHA比を効率的に上げる
DHA(ドコサヘキサエン酸)の特徴:
- 直接的なサイトカイン抑制効果
- CRP、TNF-α、IL-6をより効果的に低下
- 脳・神経系への移行が良い
最適用量は1-3g/日
用量別の抗炎症効果
メタアナリシスは、EPA+DHA合計用量別の効果も分析している。
| 用量 | CRP | TNF-α | IL-6 |
|---|---|---|---|
| <1g/日 | 効果小 | 効果小 | 効果小 |
| 1-3g/日 | 最も一貫 | 最も一貫 | 最も一貫 |
| >3g/日 | 一貫性低い | 一貫性低い | 一貫性低い |
1-3g/日が最も一貫した抗炎症効果を示した。
3g/日を超えると、効果が頭打ちになるか、一貫性が低下する。
健康状態による差
興味深いことに、効果は健康状態によっても異なった。
| 対象者 | 最も顕著な効果 |
|---|---|
| 健康な個人 | 血中EPA+DHAレベル上昇 |
| 疾患を有する人 | 炎症マーカー低下 |
健康な人では「血中濃度が上がる」効果が、疾患を有する人では「炎症が下がる」効果が目立った。
REDUCE-IT試験:EPA高用量の衝撃的結果
コクランレビューとの矛盾
実は、2018年のコクランレビュー(PMID: 30521670、79のRCT、112,059人)は、こう結論している。
「EPA+DHAサプリは死亡率や心血管健康にほとんど効果がない(高品質エビデンス)」
全死亡RR 0.98(0.90-1.03)、心血管イベントRR 0.99(0.94-1.04)。ほぼ効果なし。
では、なぜオメガ3サプリは推奨され続けるのか?
REDUCE-IT試験の結果
同じ2018年、REDUCE-IT試験(Bhatt et al., NEJM)が全く異なる結果を示した。
| 試験 | 介入 | 結果 |
|---|---|---|
| コクランレビュー | EPA+DHA混合、様々な用量 | 効果なし |
| REDUCE-IT | EPA単独4g/日(イコサペントエチル) | 25%リスク低下 |
REDUCE-IT試験のデザイン:
- 対象:中性脂肪高値、スタチン服用中の高リスク患者8,179人
- 介入:イコサペントエチル(高純度EPA)4g/日 vs プラセボ
- 追跡:4.9年
結果:
- 一次エンドポイント(心血管イベント複合):17.2% vs 22.0%、HR 0.75
- 心血管死:4.3% vs 5.2%、HR 0.80
EPA単独高用量で、心血管イベントが25%低下した。
なぜEPA単独は効くのか
いくつかの仮説がある。
- EPA:AA比の最大化: DHAがないことで、EPAがAAとの競合で優位に立つ
- 膜安定化効果: EPAの方が細胞膜での作用が強い可能性
- 用量の問題: 4g/日という高用量が効果を発揮
ただし、REDUCE-IT試験には批判もある。プラセボにミネラルオイルを使用しており、これがLDL上昇を引き起こした可能性が指摘されている。
オメガ3インデックス:8%以上を目指す
オメガ3インデックスとは
von Schacky, 2014(Nutrients)のレビューは、オメガ3インデックスという指標を提唱している。
赤血球膜中のEPA+DHA含量(%)で、長期的なオメガ3摂取状態を反映する。
| レベル | 心血管リスク |
|---|---|
| <4% | 高リスク |
| 4-8% | 中リスク |
| 8-11% | 低リスク(目標) |
なぜ介入試験が失敗したか
von Schackyは、オメガ3介入試験が失敗した理由をこう分析している。
- ベースラインを測定していない: 既にオメガ3インデックスが高い人も参加
- 目標範囲を設定していない: 8-11%を目指す試験デザインがない
- 用量が不十分: 一般的なサプリ用量では目標に到達しない
オメガ3インデックス4%の人と8%の人では、サプリの効果が全く異なるはずだ。
目的別:最適なEPA:DHA比率
私の整理
今回のメタアナリシスとREDUCE-IT試験を踏まえ、目的別の最適比率を整理した。
| 目的 | 推奨EPA:DHA比 | 理由 |
|---|---|---|
| 炎症性疾患(RA等) | <1:1(DHA優位) | サイトカイン低下効果が最大 |
| 中性脂肪低下 | どちらでも可 | EPA/DHAで同等の効果 |
| 心血管リスク低下 | EPA優位または単独 | REDUCE-ITの結果 |
| 脳・認知機能 | <1:1(DHA優位) | 脳への移行性 |
| 一般的健康維持 | 1:1〜2:1 | バランス |
ただし、これは私の解釈だ。「最適比率」を直接検証したRCTはまだない。
サプリメント選びの実践
EPA優位製品
心血管リスクやアラキドン酸低下を重視するなら、EPA優位製品。
EPA 1000mg/粒。EPA:DHA比約4:1のEPA優位設計。
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EPA 720mg + DHA 480mg。Life ExtensionのEPA優位フォーミュラ。
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DHA優位製品
認知機能や炎症性サイトカイン低下を重視するなら、DHA優位製品。
DHA 1660mg/2粒。DHA優位で脳・認知機能向け。
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DHA優位の高濃度フォーミュラ。
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バランス型(高濃度)
一般的な健康維持なら、バランスの取れた高濃度製品。
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正直なエビデンス評価
確実に言えること
- EPA:DHA比率によって効果が異なる(96試験のメタアナリシス)
- DHA優位は炎症性サイトカイン低下に最も効果的
- EPA優位はアラキドン酸低下・血中EPA上昇に最も効果的
- 1-3g/日が最も一貫した抗炎症効果
- EPA高用量(4g/日)は心血管イベントを25%低下(REDUCE-IT)
言えないこと
- 一般的なオメガ3サプリが心血管死亡を減らすかは不明確(コクランレビュー)
- 最適なEPA:DHA比率は目的によって異なり、万能解はない
- REDUCE-ITの結果が一般サプリにも適用できるかは不明
- オメガ3インデックス8%以上を目指すことの長期効果は未確立
三島の結論
この研究の意義
「EPA多めがいい」という一般的認識は、部分的にしか正しくない。
DHA優位の方が炎症性サイトカイン(CRP、TNF-α、IL-6)の低下には効果的だ。一方、EPA優位の方がアラキドン酸低下には効果的。
目的によって最適比率が異なるという当たり前の結論だが、96試験のメタアナリシスで定量的に示されたのは価値がある。
私の実践
私自身は、EPA優位の製品を選んでいる。
理由は、心血管リスク低下を重視しているからだ。REDUCE-IT試験の結果は、プラセボの問題を差し引いても印象的だった。
ただし、4g/日のイコサペントエチル(処方薬)と、一般的なサプリでは話が違う。サプリで同等の効果が得られるとは限らない。
現実的な選択肢として、Wiley’s Finest Peak EPAやLife Extension メガEPA/DHAを使っている。EPA優位で、1日2-3gのEPA+DHAを摂取している。
推奨ではなく情報提供
オメガ3の「最適配合」は、あなたの目的次第だ。
- 炎症を下げたい → DHA優位
- 心血管リスクを下げたい → EPA優位
- 認知機能が気になる → DHA優位
- よく分からない → バランス型
エビデンスを読んで、自分で判断してほしい。
関連情報
今回引用した論文
- Khabir Z et al., 2026. Crit Rev Food Sci Nutr. PMID: 41568426
- Abdelhamid AS et al., 2018. Cochrane Database Syst Rev. PMID: 30521670
- Bhatt DL et al., 2019. N Engl J Med (REDUCE-IT). PMID: 30415628
- von Schacky C, 2014. Nutrients. PMID: 24566438
今回紹介したサプリ
EPA優位製品。心血管リスク低下を重視する人に。
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DHA優位製品。認知機能・抗炎症を重視する人に。
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バランス型の定番。一般的な健康維持に。
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