NMNのエビデンス、本当に効くのか。2024年メタアナリシスが出した厳しい結論

NMNのエビデンス、本当に効くのか。2024年メタアナリシスが出した厳しい結論

はじめに

正直に告白する。僕はNMNに月2万円を使っている。

NAD+の前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、アンチエイジング研究で最も注目されているサプリメントの一つだ。動物実験では老化の逆転、寿命の延長、代謝機能の改善といった劇的な効果が報告されている。

しかし、タスクのタイトルにある「本当に効くのか」という問いに対して、僕は正直に答えなければならない。2024年のメタアナリシスの結論は、期待とは異なるものだった

今回は、PubMedに掲載されているヒト臨床試験のエビデンスを徹底的にレビューする。NMNを飲んでいる僕自身にとっても痛い内容だが、エビデンスには正直でありたい。


NMNとは何か

まず基本を押さえておこう。

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体だ。NAD+は細胞のエネルギー代謝に必須の補酵素で、加齢とともに減少することが知られている。

理論的には、NMNを摂取することでNAD+濃度を上げ、加齢による代謝低下を防げるはずだ。マウス実験ではこの仮説を支持する結果が多数報告されており、「若返りサプリ」として注目を集めた。

しかし、マウスで効いたものがヒトで効くとは限らない。ヒトでのエビデンスを見ていこう。


確実に言えること:NAD+は上がる

まず、ポジティブな点から。

2022年のマルチセンターRCT(Yi et al.)では、健康な中年80人を対象に、NMN 300mg、600mg、900mgを60日間投与した。

結果は明確だった。

  • 血中NAD+濃度は全NMN群で有意に上昇(P≤0.001)
  • 30日目と60日目の両方で、プラセボと比較して有意差あり
  • 600mg群と900mg群で最も高いNAD+濃度

2020年の最初のヒト安全性試験(Irie et al.)でも、NAD代謝物が用量依存的に上昇することが確認されている。

つまり、NMNを飲めばNAD+濃度は確実に上がる。この点は科学的に確立されている。


厳しい現実:メタアナリシスの結論

問題はここからだ。

2024年にCurrent Diabetes Reports誌に掲載されたメタアナリシス(Chen et al.)では、8つのRCT(合計342人の中高年)をプールして分析している。

対象となった研究の用量は250〜2000mg/日、期間は14日〜12週間だ。

結論は以下の通り。

  • 空腹時血糖:有意差なし
  • 空腹時インスリン:有意差なし
  • HbA1c:有意差なし
  • HOMA-IR(インスリン抵抗性):有意差なし
  • 脂質プロファイル:有意差なし

著者らは「短期のNMN摂取は、糖代謝・脂質代謝に有意な正の影響を示さなかった」と結論づけている。

筋肉量・筋力にも効果なし

さらに、2025年のメタアナリシス(Prokopidis et al.)では、NMNとNR(ニコチンアミドリボシド)の筋肉への効果を検証している。

結果は以下の通り。

  • 骨格筋指数(SMI):有意差なし
  • 握力:有意差なし
  • 歩行速度:有意差なし
  • 5回立ち座りテスト:有意差なし
  • 大腿筋量:有意差なし

結論は厳しい。「現在のエビデンスは、60歳以上の成人における筋肉量・機能維持のためのNMN/NR補給を支持しない


一部でポジティブな結果も

公平を期すため、ポジティブな結果も紹介しておく。

Science誌の研究(インスリン感受性)

2021年のScience誌に掲載された研究(Yoshino et al.)は、糖尿病前症の閉経後女性(過体重/肥満)を対象とした10週間のRCTだ。

  • 筋肉インスリン感受性が上昇(ゴールドスタンダードのクランプ法で測定)
  • インスリンシグナル(AKT、mTOR)も改善

ただし、この結果を一般化するのは難しい。対象は「糖尿病前症の閉経後女性」という特定の集団であり、健康な人に同じ効果があるかは不明だ。

身体機能の改善

2022年のマルチセンターRCTでは、6分間歩行テストでNMN群がプラセボより有意に改善した(P値0.01未満)。

2024年の日本の研究(Morifuji et al.)でも、高齢者60人を対象とした12週間のRCTで、4m歩行時間の短縮と睡眠の質の改善が報告されている。

アマチュアランナーを対象とした研究(Liao et al.)では、600mg以上のNMN摂取でVO2(酸素摂取量)が改善した。

摂取タイミングの重要性

日本の研究(Kim et al.)では、興味深い発見があった。NMNは午後に摂取した方が、朝よりも効果的だという。5回立ち座りテストと眠気の改善において、午後摂取群の方が良い結果を示した。


なぜマウスほど効かないのか

ここで疑問が生じる。なぜ動物実験では劇的な効果があったのに、ヒトではこれほど限定的なのか。

僕なりの考察を述べる。

  1. 用量の問題: マウス実験では体重あたり高用量を使用しているが、ヒト試験ではコストの問題から用量が控えめ
  2. 期間の問題: 最長でも12週間の研究しかない。アンチエイジング効果を検出するには短すぎる可能性
  3. 対象の違い: 健康な中高年を対象にすると、改善の余地が少ない
  4. NAD+低下の程度: 若いマウスと加齢マウスのNAD+差は大きいが、ヒトでは個人差が大きい

僕がそれでもNMNを飲み続ける理由

ここまで読んで、「じゃあNMNは無駄なのか?」と思うかもしれない。

正直に言う。現時点のエビデンスでは「アンチエイジングに効く」とは言えない。メタアナリシスの結論は明確だ。

それでも僕がNMNを飲み続ける理由は以下の通り。

  1. NAD+が上がることは確実: 少なくとも生化学的な変化は起きている
  2. 安全性は確認されている: 900mg/日までの短期摂取で問題なし
  3. 動物実験のデータは無視できない: マウスでの効果が完全に否定されたわけではない
  4. 長期データを待っている: 現在進行中の長期試験の結果を見たい

これは科学者としての判断ではなく、n=1実験として続けているというのが正直なところだ。月2万円を「将来のエビデンスに投資している」と考えている。

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結論:正直なエビデンス評価

NMNについて、エビデンスベースで言えることをまとめる。

確実に言えること

  • NAD+濃度は上昇する(複数RCTで確認)
  • 短期摂取は安全(900mg/日まで)
  • 一部の身体機能は改善する可能性(歩行速度、有酸素能力)

言えないこと

  • 「アンチエイジングに効く」とは言えない
  • 糖・脂質代謝の改善効果は示されていない(メタアナリシスで否定)
  • 筋肉量・筋力の維持効果は示されていない(メタアナリシスで否定)
  • 長期的な効果は不明(最長12週間の研究のみ)

批判的に見るべき点

  • 動物実験ほどの劇的な効果はヒトで再現されていない
  • ポジティブな結果は特定集団(糖尿病前症女性、アスリート)に限定
  • 効果サイズが小さく、臨床的意義は不明
  • 製造元が資金提供している研究が多い

こんな人に向いている・向いていない

向いている人

  • NAD+濃度を上げたいという明確な目的がある人
  • 長期的なデータが出るまで自己実験として試したい人
  • 金銭的に余裕がある人(月数万円の出費に抵抗がない)

向いていない人

  • 「若返り」を期待している人(エビデンスは不十分)
  • コスパを重視する人
  • 確実なエビデンスがないと飲みたくない人
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試すならまずこのサイズから。効果を感じなければ継続する必要はない。

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まとめ

「NMNは本当に効くのか?」という問いに対する僕の答えは、こうだ。

NAD+は上がる。しかし、それがヒトの「アンチエイジング」につながるかは、まだ分からない。

2024年のメタアナリシスは厳しい結論を出した。糖・脂質代謝にも、筋肉量・筋力にも、有意な効果は認められなかった。

僕はそれでもNMNを飲み続けている。それは科学者としての判断ではなく、長期データを待ちながら自己実験を続けているからだ。

NMNに月2万円を使っている人間として、この記事を書くのは正直つらかった。しかし、エビデンスには正直でありたい。読者には、このデータを見た上で、自分で判断してほしい。

追記: 効果サイズが小さいNMNより、クレアチンやビタミンDのような効果サイズが大きく、エビデンスが確立したサプリを優先した方が合理的かもしれない。「まず効果サイズを見ろ」という原則は、やはり正論だと思う。


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試してみたい人向け。ただしエビデンスは限定的であることを理解した上で。

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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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