プロバイオティクスLp815と睡眠改善、尿中GABA増加のメカニズムをRCTから解説

プロバイオティクスLp815と睡眠改善、尿中GABA増加のメカニズムをRCTから解説

「腸内細菌が睡眠を改善する」——これを聞いて、眉唾だと思う人は多いだろう。

私もそうだった。腸-脳軸(gut-brain axis)という概念は知っていても、「プロバイオティクスで睡眠が良くなる」というのは、効果サイズが小さすぎて臨床的に意味がないと思っていた。

しかし、2026年1月にScientific Reportsに発表されたRCT(PMID: 41554764)は、私の認識を改めさせるものだった。GABA産生菌株Lactiplantibacillus plantarum Lp815が、尿中GABA濃度を上昇させながら睡眠を改善したという、メカニズムとアウトカムを結びつける初めてのヒト試験だ。

Lp815とは何か

Lactiplantibacillus plantarum Lp815は、Verb Biotics社が開発したGABA産生能を持つプロバイオティクス菌株だ。

GABA(γ-アミノ酪酸)は、脳内の主要な抑制性神経伝達物質として知られている。鎮静作用、抗不安作用があり、睡眠の導入に関与する。

興味深いのは、GABAは腸内細菌によっても産生されるということだ。一部の乳酸菌は、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)という酵素を使って、グルタミン酸をGABAに変換する。

Lp815は、先行研究(PMID: 40312029)で軽度〜中等度の不安を持つ成人の不安スコアを有意に改善することが示されていた。今回の研究は、同じ菌株の睡眠への効果を検証したものだ。

2026年RCTの詳細

Grant ADらの研究(PMID: 41554764)を詳しく見ていこう。

試験デザイン

  • デザイン: 分散型、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験
  • 対象: 自己報告の睡眠障害を持つ成人(中等度以上のISIでスクリーニング)
  • 介入: Lp815 50億CFU/日 vs プラセボ
  • 期間: 6週間

参加者

  • 評価対象: 139名(Lp815群 n=70、プラセボ群 n=69)
  • 年齢: 44±13歳
  • 性別: 51.1%女性
  • 尿中神経伝達物質分析サブコホート: 17名

主要結果

不眠症重症度指数(ISI):

  • Lp815群は6週時点でプラセボ群より有意に低スコア(p < 0.05
  • **77.3%**が4ポイント以上改善 vs プラセボ群57.8%(p=0.02

この「4ポイント以上改善」は、臨床的に意味のある改善(MCID: Minimal Clinically Important Difference)とされる閾値だ。プラセボでも57.8%が改善しているのはプラセボ効果の大きさを示すが、Lp815群はさらに20ポイント上回った

不安スコア(GAD-7):

  • Lp815群で有意に減少(p < 0.05)
  • 女性でより顕著な効果(p < 0.01)

客観的睡眠指標:

  • ウェアラブルデバイスによる睡眠時間が有意に延長(p < 0.05)
  • 主観的な寝汗の重症度も低下

尿中GABA上昇:メカニズムの手がかり

この研究で最も興味深いのは、尿中GABA濃度の変化を追跡した点だ。

サブコホート17名の分析で、

  • Lp815群は1週目に尿中GABAが有意に上昇(p < 0.05)
  • 2週目の時点で尿中GABAと以下の逆相関:
    • 不眠スコア: r=-0.30
    • 不安スコア: r=-0.48

つまり、尿中GABAが高い人ほど、不眠と不安のスコアが低かった。

ただし、注意が必要だ。相関は因果を意味しない。GABA上昇が直接睡眠改善を引き起こしたのか、それとも両者が別の共通因子(腸内細菌叢の改善など)によって独立に変化したのかは、この研究では区別できない。

それでも、プロバイオティクス摂取→尿中GABA上昇→睡眠改善という一貫したストーリーは、メカニズムの手がかりとして価値がある。

他のプロバイオティクス睡眠研究との比較

Lp815だけでなく、他の菌株でも睡眠改善のRCTが報告されている。

Lacticaseibacillus paracasei 207-27(PMID: 39385735):

  • 28日間のRCT、健康成人
  • ウェアラブルデバイス測定の睡眠時間が有意に改善
  • 血中コルチゾール低下、短鎖脂肪酸(SCFA)増加を確認

Bifidobacterium animalis subsp. lactis BLa80(PMID: 40169760):

  • 8週間のRCT、106名
  • PSQI総スコアが有意に改善
  • In vitroでGABA産生能を確認

これらを総合すると、複数の菌株で睡眠改善効果が報告されているが、メカニズムは菌株によって異なる可能性がある。

  • Lp815: GABA産生
  • L. paracasei 207-27: HPA軸調節(コルチゾール低下)、SCFA産生
  • BLa80: 腸内細菌叢改善、GABA産生

腸-脳軸とGABAの関係

腸内で産生されたGABAが脳に到達するかどうかは、長年議論されてきた。

従来の見解では、GABAは血液脳関門(BBB)を通過しにくいため、腸内GABAが直接脳に作用する可能性は低いとされてきた。

しかし、現在考えられている経路は複数ある。

  1. 迷走神経経由: 腸管のGABAが迷走神経を介して脳に信号を送る
  2. 腸管透過性の変化: 腸管バリアの状態によってはGABAが血中に移行する可能性
  3. 間接的経路: 腸内細菌叢→SCFA産生→HPA軸調節→コルチゾール低下→睡眠改善

Lp815の研究で尿中GABAが上昇したということは、少なくとも腸管から全身循環にGABAが移行していることを示唆する。ただし、それが脳に到達して直接作用しているかどうかは、まだ推測の域を出ない。

正直なエビデンス評価

確実に言えること

  1. Lp815 50億CFU/日で不眠症重症度指数(ISI)が有意に改善(RCT、p < 0.05)
  2. 77%以上が臨床的に意味のある改善を達成
  3. 尿中GABA濃度が1週目に有意に上昇(p < 0.05)
  4. 尿中GABAと不眠・不安スコアに逆相関あり
  5. 同じ菌株で不安改善のRCTも存在

言えないこと

  1. GABA上昇が直接睡眠改善を引き起こすかどうか(相関≠因果)
  2. 他のL. plantarum株でも同等の効果があるか(菌株特異性が高い)
  3. 長期使用の安全性・有効性(6週間のみの検証)
  4. 重度の不眠症への効果
  5. メカニズムの詳細(腸-脳軸の具体的経路は推測段階)

この研究の限界

  • サブコホート(尿中GABA分析)がn=17と少数
  • 分散型試験(在宅試験)によるコントロールの限界
  • Verb Biotics社(Lp815開発元)による資金提供
  • 中等度以上の不眠者のみが対象

私の見解

Lp815のRCTは、プロバイオティクスと睡眠の関係を研究する上で、メカニズムとアウトカムを結びつけた点で重要な一歩だ。

ただし、Lp815は現時点で一般消費者向けに販売されていない。Verb Biotics社の独自菌株であり、iHerbやAmazonでは入手できない。

では、一般的なL. plantarum含有プロバイオティクスで同じ効果が得られるか?残念ながら、菌株特異性が非常に高いため、「L. plantarum」というだけでは同等の効果は期待できない。

それでも、腸内細菌叢の改善が睡眠に好影響を与える可能性を示すエビデンスは増えている。質の高いプロバイオティクスを継続的に摂ることは、睡眠以外にも多くのメリットがある。

睡眠改善に役立つサプリメント

Lp815は入手困難なため、エビデンスのある他の睡眠サポート成分を紹介する。

California Gold Nutrition, LactoBif®(ラクトビフ)30プロバイオティクス、300億CFU、ベジカプセル60粒

8種の菌株を含むプロバイオティクス。L. plantarumは含まれるが、Lp815とは異なる菌株。腸内環境改善のベースとして。

iherb.com

(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)

NOW Foods, グリシン、ベジカプセル100粒(1粒あたり1,000mg)

抑制性神経伝達物質として睡眠をサポート。3gで深部体温を下げ、入眠を促進するエビデンスあり。

iherb.com

(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)

NOW Foods, L-テアニン、ベジカプセル60粒

α波を増加させてリラックスを促進。カフェインと異なり覚醒作用なしで、睡眠の質を改善する可能性。

iherb.com

(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)

まとめ

Lp815の研究は、GABA産生プロバイオティクスが睡眠を改善するという仮説を支持する重要なエビデンスだ。

尿中GABA濃度の上昇と睡眠改善の相関は、メカニズムの手がかりを与えてくれる。ただし、これが因果関係を証明するものではないし、Lp815という特定の菌株に限定された結果である可能性が高い。

「腸内細菌を改善すれば睡眠も良くなる」という単純な話ではない。しかし、腸-脳軸を介した睡眠調節の研究は、今後さらに発展する分野だろう。

私は引き続き、睡眠サポートにはグリシンとL-テアニンを使いながら、プロバイオティクス研究の進展を見守っている。


参考文献

  • Grant AD et al. (2026) Lactiplantibacillus plantarum Lp815 improves sleep and increases urinary GABA. Sci Rep. PMID: 41554764
  • Grant AD et al. (2025) Lactiplantibacillus plantarum Lp815 decreases anxiety. Benef Microbes. PMID: 40312029
  • Li J et al. (2024) Lacticaseibacillus paracasei 207-27 and sleep duration. Food Funct. PMID: 39385735
  • Liu Y et al. (2025) Bifidobacterium animalis BLa80 on sleep quality. Sci Rep. PMID: 40169760

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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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