Peter Attia vs Bryan Johnson、長寿サプリ哲学の違いを効果サイズで比較
長寿・アンチエイジング界隈で影響力を持つ2人がいる。
Peter AttiaとBryan Johnson。
どちらも「長く健康に生きる」ことを追求しているが、サプリ哲学は真逆だ。
- Peter Attia: 医師、保守的、「エビデンスが固まってから」派
- Bryan Johnson: 起業家、積極的、年間数百万ドルを自己実験に投資
どちらの戦略が正しいのか?
効果サイズで検証してみた。それぞれに効果がある部分と、期待ほどではない部分がある。
2人のサプリ哲学の違い
まず、両者の違いを整理する。
| 項目 | Peter Attia | Bryan Johnson |
|---|---|---|
| 職業 | 医師(元外科医) | 起業家(Braintree創業者) |
| スタンス | 保守的・慎重 | 積極的・実験的 |
| サプリ数 | 少数精鋭(5-10種) | 大量(100+種類) |
| 判断基準 | RCTのエビデンス | バイオマーカーの変化 |
| メタボ薬 | 限定的 | メトホルミン、ラパマイシン |
| NAD+系 | 懐疑的 | NMN大量摂取 |
Peter Attiaは「エビデンスが固まるまで待つ」派。Bryan Johnsonは「待ってたら老いる。自分で実験する」派。
どちらが効果サイズ的に正しいか、サプリごとに検証していく。
NMN: Bryan Johnson派の主力サプリ
Bryan JohnsonはNMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)を大量に摂取している。NAD+の前駆体で、「細胞のエネルギー工場を若返らせる」という触れ込みだ。
Peter Attiaは懐疑的。「NAD+が上がっても、それが健康アウトカムに繋がるかは別問題」と指摘している。
RCTの結果(PMID: 36482258)
80名の中高年を対象にした60日間のRCT。
- 血中NAD+: 600mg以上で有意に上昇(p ≤ 0.001)
- 6分間歩行テスト: 有意に改善(p < 0.01)
- SF-36(主観的健康度): 有意に改善(p < 0.05)
- HOMA-IR(インスリン抵抗性): 有意差なし
俺の評価: ★★★☆☆
NAD+は確かに上がる。6分間歩行テストも改善した。
だが、60日間のRCT1本だけだ。
「長期的に健康寿命が延びるか」「心血管疾患リスクが下がるか」といった本当に重要なアウトカムはまだ分からない。
Bryan Johnsonは「NAD+が上がった!若返った!」と喜んでいるが、それはサロゲートマーカー(代理指標)に過ぎない。
効果サイズが「確定」したとは言えない。
スペルミジン: 動物実験の罠
Bryan Johnsonはスペルミジンも採用している。オートファジー(細胞の自己貪食)を促進し、寿命を延ばすとされる成分だ。
マウスでは確かに寿命が延びた。だがヒトではどうか?
RCTの結果(PMID: 35616942)- SmartAge試験
100名の認知機能低下が気になる高齢者を対象にした12ヶ月のRCT。
- 記憶弁別能力(主要評価項目): 有意差なし(p = 0.47)
- 副次評価項目: すべて有意差なし
俺の評価: ★☆☆☆☆
12ヶ月やって主要評価項目が有意差なし。効果サイズはほぼゼロ。
動物実験の結果がヒトに転用できない典型例だ。
0.9mg/日という用量が低すぎた可能性もあるが、現時点では「スペルミジンは効く」とは言えない。Bryan Johnsonが採用しているからといって、盲目的に真似する必要はない。
メトホルミン: 長寿薬の最有力候補
メトホルミンは糖尿病治療薬だが、「長寿薬」として注目されている。
Bryan Johnsonは採用。Peter Attiaは「糖尿病でない人が飲む必要があるか?」と慎重だ。
メタアナリシスの結果(PMID: 28802803)
53研究をまとめたシステマティックレビュー。
- 全死亡率(メトホルミン使用者 vs 非糖尿病者): HR = 0.93(7%低下)
- 全死亡率(vs 他の糖尿病薬): HR = 0.72(28%低下)
- がん罹患率(vs 非糖尿病者): RR = 0.94(6%低下)
俺の評価: ★★★☆☆
効果サイズは中程度。HR 0.93は7%のリスク低減。
だが注意点がある。これは観察研究が中心で、RCTではない。
メトホルミンを飲んでいる人と飲んでいない人で、ベースラインの健康状態が違う可能性がある。因果関係は確定できない。
現在、健康な高齢者を対象にしたTAME試験(Targeting Aging with Metformin)が進行中だ。この結果が出るまでは「有望だがエビデンス不十分」というのが正確な評価だ。
ラパマイシン: mTOR阻害の夢と現実
Bryan Johnsonはラパマイシン(mTOR阻害剤)も採用している。免疫抑制剤だが、老化を遅らせる可能性が動物実験で示されている。
Peter Attiaは非常に慎重。免疫抑制のリスクを考慮すると、健康な人が飲む薬ではないと考えている。
RCTの結果
Mannick et al. 2014(PMID: 25540326):
- インフルエンザワクチン応答: 約20%向上
- PD-1+ T細胞(免疫老化マーカー): 有意に減少
Mannick et al. 2021(PMID: 33977284)- Phase 2b/3:
- Phase 2b: 呼吸器感染症が28%→19%に減少(有望)
- Phase 3: 主要評価項目で有意差なし(p = 0.65)
俺の評価: ★★☆☆☆
Phase 2bでは良い結果が出たが、Phase 3で主要評価項目未達。
これは「再現性がない」可能性を示唆している。サンプルサイズが大きくなると効果が消えるパターンは、効果サイズが小さい(または存在しない)ことを意味する。
さらに、ラパマイシンは免疫抑制剤だ。長期使用での感染症リスクは無視できない。
「動物で寿命が延びた」という話と、「ヒトで安全に使える」という話は別問題だ。
オメガ3: Peter Attia派の定番
Peter Attiaはオメガ3(EPA/DHA)を推奨している。心血管健康に良いとされる定番サプリだ。
Cochraneレビューの結果(PMID: 30521670)- 79 RCT, 112,059名
長鎖オメガ3(EPA/DHA):
- 全死亡: RR 0.98(95%CI: 0.90-1.03)→ 有意差なし
- 心血管死亡: RR 0.95(95%CI: 0.87-1.03)→ 有意差なし
- 心血管イベント: RR 0.99(95%CI: 0.94-1.04)→ 有意差なし
- 中性脂肪: 約15%低下(これは確実)
俺の評価: ★★★☆☆
心血管死亡への効果は期待より小さい。だがすべてが無意味というわけではない。
効果があるもの:
- 中性脂肪: 約15%低下(確実)
- 抗炎症マーカー: 低下(別記事で詳述)
- 血管内皮機能: 改善
効果が限定的なもの:
- 心血管死亡: 有意差なし
抗炎症目的なら意味がある。心血管死亡予防が主目的なら、他の介入を優先すべき。
ビタミンD: 思ったより効果がない
ビタミンDも両者が採用している。だが効果サイズはどうか?
メタアナリシスの結果(PMID: 31405892)- 52 RCT, 75,454名
- 全死亡: RR 0.98(95%CI: 0.95-1.02)→ 有意差なし
- 心血管死亡: RR 0.98(95%CI: 0.88-1.08)→ 有意差なし
- がん死亡: RR 0.84(95%CI: 0.74-0.95)→ 16%減少(有意)
俺の評価: ★★★☆☆
全死亡への効果はほぼゼロ。
だが、がん死亡への効果は有望(16%減少)。これは注目に値する。
ただし、ビタミンD欠乏者への補充と、十分なレベルの人への追加摂取は別問題だ。Peter Attiaは血中濃度を測定して個別化している点は合理的。
効果サイズ比較表
| サプリ | 使用者 | 主要評価項目 | 効果サイズ | 俺の評価 |
|---|---|---|---|---|
| NMN | Bryan Johnson | NAD+、歩行能力 | 中(短期) | ★★★☆☆ |
| スペルミジン | Bryan Johnson | 記憶機能 | なし | ★☆☆☆☆ |
| メトホルミン | Bryan Johnson | 全死亡 | 小〜中 | ★★★☆☆ |
| ラパマイシン | Bryan Johnson | 感染症 | Phase 3未達 | ★★☆☆☆ |
| オメガ3 | Peter Attia | 心血管死亡 | ほぼなし | ★★☆☆☆ |
| ビタミンD | 両者 | 全死亡 | なし | ★★★☆☆ |
| ビタミンD | 両者 | がん死亡 | 中(16%減) | ★★★☆☆ |
俺の結論: 目的を明確にせよ
効果サイズで見ると、どちらのアプローチにも「効く部分」と「期待ほどではない部分」がある。
Peter Attia的アプローチの評価
- オメガ3: 心血管死亡には効かないが、抗炎症には効果あり
- ビタミンD: 全死亡には効かないが、がん死亡16%減少
- 強み: エビデンスを重視、リスクを最小化
Bryan Johnson的アプローチの評価
- NMN: NAD+は上がる、6分間歩行も改善。長期アウトカムは今後の研究待ち
- スペルミジン: 12ヶ月RCTで効果なし → 優先度下げるべき
- メトホルミン: 有望だがTAME試験待ち
- 強み: 最先端を攻めている、データ収集に貢献
どちらが「正しい」ではなく、自分の目的に合った戦略を選ぶべきだ。
結局、何が効くのか
効果サイズが確実に大きいのは、サプリではない。
- 運動(Zone 2有酸素 + 筋トレ)
- 睡眠(7-9時間、質も重要)
- 食事(地中海食、加工食品を避ける)
- 禁煙・節酒
これらの効果サイズは、どのサプリよりも大きい。
サプリは**これらを最適化した後の「補助」**でしかない。
Peter AttiaもBryan Johnsonも、サプリより運動と睡眠を重視している点では一致している。そこは真似すべきだ。
サプリに月10万円かける前に、まずジムに行け。それが効果サイズ原理主義者としての俺の結論だ。
まとめ
- Peter Attia: 保守的、リスク最小化。オメガ3は抗炎症に効果あり、ビタミンDはがん死亡16%減少
- Bryan Johnson: 積極的、最先端を攻める。NMNは短期効果あり、スペルミジンは優先度下げるべき
- NMN: NAD+上昇、歩行能力改善 → 長期アウトカムは今後の研究待ち
- メトホルミン: 有望だがTAME試験待ち
- 結論: 目的によって最適な戦略は異なる。運動・睡眠・食事が土台
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