フィッシュオイルと血管内皮機能、中高年240名RCTで効果サイズを検証
前回の記事で、オメガ3の心血管死亡への効果は「ほぼゼロ」と報告した。
79のRCT、11万人以上のデータで、心血管死亡のリスク比は0.95(有意差なし)だった。
だが、「心血管死亡」と「血管内皮機能」は別の話だ。
今回は、最新のRCTで血管内皮機能への効果サイズを検証する。
結論から言う
| アウトカム | 効果サイズ | 最適用量 |
|---|---|---|
| ICAM-1(炎症マーカー) | -24% | 1g/日 |
| MCP-1(炎症マーカー) | -27% | 1g/日 |
| FMD(血管拡張反応) | +0.8-2.3% | - |
| 心血管死亡 | ほぼなし | - |
フィッシュオイルは血管内皮機能を改善する。ただし1g/日で十分、4g/日は無駄。
そして、血管内皮機能が改善しても心血管死亡は減らない。この矛盾をどう解釈するかが重要だ。
最新RCT: 中高年240名、12週間
Quan et al. 2026の研究を紹介する。
研究デザイン
- 対象: 中高年(地域ベース)240名
- 期間: 12週間
- 介入:
- 対照群(0g)
- 1g/日群(EPA 182mg + DHA 129mg)
- 2g/日群
- 4g/日群
結果: U字型の用量反応
驚くべき結果が出た。
| マーカー | 1g vs 対照 | 2g vs 対照 | 4g vs 対照 |
|---|---|---|---|
| ICAM-1 | -24.21% (p=0.026) | 有意差なし | 有意差なし |
| MCP-1 | -27.38% (p=0.024) | 有意差なし | 有意差なし |
| NO | 有意差なし | 群内で上昇 | 有意差なし |
| ET-1 | 群内で低下 | 有意差なし | 群内で低下 |
| Ox-LDL | 有意差なし | 有意差なし | 有意差なし |
1g/日が最も効果的で、高用量(2g、4g)では追加効果がない。
これは「多く摂れば良い」という常識に反する結果だ。
ICAM-1とMCP-1とは
- ICAM-1(細胞間接着分子-1): 白血球が血管内皮に付着するのを促進。高値は血管炎症を示唆
- MCP-1(単球走化性タンパク質-1): 単球を血管壁に誘導。動脈硬化の初期段階で上昇
どちらも血管の炎症マーカーだ。これらが低下するということは、血管内皮の炎症が抑制されていることを意味する。
メタアナリシスでの確認
個別のRCTだけでなく、メタアナリシスでも確認する。
Arabi et al. 2023(GRADE評価済み)
32研究、2385名のメタアナリシスによると:
- FMD(血流介在血管拡張反応): +0.8%(95%CI: 0.3-1.3%, p=0.001)
- 異質性: I² = 82.5%(高い)
Wang et al. 2012
16研究、901名のメタアナリシスによると:
- FMD: +2.30%(95%CI: 0.89-3.72%, p=0.001)
- EIV(内皮非依存性拡張): 有意差なし
FMD(血管が広がる能力)は一貫して改善している。
効果サイズの評価
血管内皮機能への効果
| 研究 | アウトカム | 効果サイズ | 評価 |
|---|---|---|---|
| Quan 2026 | ICAM-1 | -24%(1g群) | ★★★★☆ |
| Quan 2026 | MCP-1 | -27%(1g群) | ★★★★☆ |
| Arabi 2023 | FMD | +0.8% | ★★★☆☆ |
| Wang 2012 | FMD | +2.3% | ★★★☆☆ |
炎症マーカーの低下(24-27%)は臨床的に意味のある効果サイズだ。FMDの改善(0.8-2.3%)も、血管の健康という観点では有意義。
これらは「抗炎症」という目的に対しては、明確な効果を示している。
目的によって評価は変わる
ここが重要なポイントだ。
- 血管内皮機能(抗炎症): 改善する → この目的なら意味がある
- 心血管死亡: 減らない → この目的なら優先度下げる
「何に効いて、何に効かないか」を明確にするのが俺の仕事だ。
仮説1: 期間が足りない
血管内皮機能の改善が心血管イベントの減少に繋がるには、もっと長期間(数十年単位)が必要かもしれない。
仮説2: 目的の違い
俺はこちらを支持する。
FMDやICAM-1の改善は、血管の健康・抗炎症という目的には意味がある。
だが、それが心血管死亡予防に直結するかは別の話だ。
- 「炎症マーカーが改善した」= 抗炎症目的には価値あり
- 「心血管死亡が減る」= これは別の評価が必要
- 目的によって、同じサプリの評価は変わる
仮説3: 他のリスク因子
オメガ3はLDLや血圧にはほぼ効果がない。これらの方が心血管イベントへの影響が大きい可能性がある。
最適用量: 1g/日で十分
今回のRCTで最も重要な発見はU字型の用量反応だ。
- 1g/日: ICAM-1 -24%、MCP-1 -27%
- 2g/日: 有意差なし
- 4g/日: 有意差なし
多く摂っても効果は増えない。むしろ無駄になる。
これは俺の「効果サイズ原理主義」に完全に合致する:
- 効果があるならミニマルな用量で摂る
- 過剰摂取はコストの無駄
- 高用量は副作用リスクも増える(出血傾向など)
俺の結論
フィッシュオイルの評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 血管内皮の炎症抑制 | ★★★★☆(効果あり) |
| 血管拡張機能(FMD) | ★★★☆☆(効果あり) |
| 心血管死亡予防 | ★☆☆☆☆(効果なし) |
| コスパ | ★★★★☆(1g/日で十分) |
筋トレ民への推奨
フィッシュオイルは抗炎症目的なら明確に効果がある。
- トレーニング後の回復
- 関節の健康
- 慢性炎症の抑制
- 血管内皮の健康維持
これらの目的なら、摂る価値は十分にある。
一方、心血管死亡予防を主目的にするなら、他の介入(運動、食事、LDL管理)を優先すべきだ。
用量の結論
1g/日(EPA+DHA合計300mg程度)で十分。
高用量(4g/日)を勧めるインフルエンサーもいるが、今回のRCTを見る限り1g/日で十分な効果が得られる。
お金があるなら、その分を食事(魚)に回した方がいい。
俺が選ぶなら
1g/日で十分なので、高用量製品は不要。コスパ重視で選ぶ。
1粒でEPA 180mg + DHA 120mg。1日1粒で十分。コスパ良し。
iherb.com
(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)
高用量製品を買う必要はない。研究が示す最適用量は1g/日だ。
まとめ
- フィッシュオイルは血管内皮の炎症マーカーを24-27%低下させる → 抗炎症効果あり
- FMD(血管拡張反応)も0.8-2.3%改善 → 血管の健康に効果あり
- U字型の用量反応で、1g/日が最適(コスパ良し)
- 2g/日、4g/日に追加効果はない → 高用量製品は不要
- 心血管死亡への効果は限定的 → 死亡予防が主目的なら他を優先
抗炎症・血管の健康が目的なら、フィッシュオイルは効果サイズのあるサプリだ。
