アシュワガンダの副作用、慢性使用でHPA軸抑制のリスクを論文から検証

アシュワガンダの副作用、慢性使用でHPA軸抑制のリスクを論文から検証

はじめに

2026年1月、アシュワガンダの副作用に関する重要な論文が2本発表された。

  1. Javid et al., 2026「From herbal hope to hormonal havoc: chronic ashwagandha use and HPA axis suppression」
  2. Kumar et al., 2026「Potential Adverse Effects of Ashwagandha: A Critical Review」

アシュワガンダの慢性使用でHPA軸抑制(副腎不全)が起きたという症例報告だ。

「天然だから安全」という思い込みを覆すエビデンス。正直に検証する。


症例報告:950mg/日で副腎不全

患者の背景

Javid et al., 2026が報告した症例:

  • 55歳、閉経後女性
  • 両膝関節炎の対症療法として、地域の施術者がアシュワガンダを処方
  • 約950mg/日を1年以上摂取

臨床所見

来院時の症状:

  • クッシング様症状(体重増加など)
  • 進行性の体重増加が1年続いていた

検査結果:

  • 基礎コルチゾール:低値
  • ACTH刺激試験:不十分な反応

診断:二次性副腎不全

転帰

治療:

  • アシュワガンダ中止
  • ヒドロコルチゾン補充開始

しかし、3ヶ月後もHPA軸抑制は回復せず、継続的なホルモン補充が必要だった。

著者の警告

「“天然”が常に”安全”を意味するという広く浸透した信念は、公教育キャンペーンと臨床家主導のカウンセリングを通じて積極的に異議を唱える必要がある」


なぜHPA軸が抑制されるのか

アシュワガンダの作用機序

アシュワガンダは「アダプトゲン」として、コルチゾールを低下させる効果がある。

Chandrasekhar et al., 2012のRCTでは:

  • 600mg/日、60日間
  • 血清コルチゾールが有意に低下(P=0.0006)

これは短期使用では「ストレス軽減効果」として歓迎される。

長期・高用量での問題

しかし、長期間コルチゾールを抑制し続けると:

アシュワガンダ長期使用

コルチゾール産生が持続的に抑制

視床下部・下垂体が「コルチゾールは十分」と誤認

ACTH分泌が低下

副腎皮質が萎縮

自力でコルチゾールを産生できなくなる

HPA軸抑制(二次性副腎不全)

これはステロイド薬の長期使用で起きる副作用と同じメカニズムだ。


肝毒性:死亡例も報告

アイスランド・米国からの症例シリーズ

Björnsson et al., 2020(Liver International)は、5例の肝障害を報告した。

項目詳細
患者数5例(男性3、女性2)
平均年齢43歳(21-62歳)
潜伏期間2-12週
肝障害パターン胆汁うっ滞型・混合型
転帰全例回復(1-5ヶ月)

症状:黄疸、悪心、倦怠感、掻痒。肝不全に至った例はなく、自然回復した。

インドからの症例シリーズ:死亡例あり

しかし、Philips et al., 2023(Hepatology Communications)は、より深刻な症例を報告している。

項目詳細
患者数23例中8例を詳細分析
特徴男性優位、胆汁うっ滞性肝炎
重要既存の慢性肝疾患がある5例中3例が死亡

「既存の肝疾患がある人では、急性・慢性肝不全症候群を引き起こし高い死亡率となりうる」

肝疾患がある人はアシュワガンダを避けるべきだ。


甲状腺毒性:無痛性甲状腺炎

日本からの症例報告

Hayashi et al., 2024(Cureus)は、日本人男性の症例を報告した。

  • 47歳、既往歴なし
  • アシュワガンダ開始2ヶ月後に症状出現
  • 倦怠感、夜間発熱、体重減少、下痢、頭痛

検査所見:

  • 甲状腺機能亢進を示す血液検査
  • 甲状腺エコー:内部エコー不均一、血流増加なし
  • シンチグラフィ:取り込み低下

診断:無痛性甲状腺炎

アシュワガンダ中止後、症状と甲状腺マーカーは改善した。

甲状腺への影響の機序

アシュワガンダには甲状腺ホルモン(T3、T4)を増加させる作用がある。これは甲状腺機能低下症には有益かもしれないが、正常な人では甲状腺中毒症を引き起こす可能性がある。


安全性を示す研究もある

6ヶ月の安全性試験

Vaidya et al., 2026(Food Science & Nutrition)は、より長期の安全性試験を報告している。

項目詳細
対象50-70歳の健康成人男性40名
用量200mg × 2回/日(400mg/日)
期間180日間(6ヶ月)
デザインランダム化、二重盲検、プラセボ対照

結果:

  • 血液学的、肝機能、腎機能:正常範囲内
  • 甲状腺ホルモン:有害な変化なし
  • CRP:51.1%低下(良い方向)
  • テストステロン:15.7%上昇(男性)
  • 重篤な有害事象なし

短期RCTでも安全

Lopresti et al., 2019(Medicine)のRCT:

  • 240mg/日、60日間
  • 朝のコルチゾールが有意に低下(P < 0.001)
  • 有害事象の報告なし

用量と期間がカギ

エビデンスの整理

使用パターン用量期間リスク
短期・中用量300-600mg/日8-12週低(RCTで安全性確認)
中期・低用量400mg/日6ヶ月低(安全性試験で確認)
長期・高用量600mg+/日6ヶ月+(HPA軸抑制リスク)
超高用量950mg/日1年+非常に高い(症例報告)

問題のある使い方

症例報告の患者は:

  • 950mg/日 という高用量
  • 1年以上 という長期間
  • 医師の監督なし

これは明らかに「過剰使用」だ。


安全な使用法

サイクル使用を推奨

アシュワガンダは「ずっと飲み続ける」サプリではない。

推奨される使用パターン

  • 8-12週間使用 → 4週間休薬
  • これを繰り返す

用量の上限

  • 600mg/日以下を推奨
  • 多くのRCTは300-600mg/日で実施されている
  • 950mg/日は明らかに多すぎる

標準化エキスを選ぶ

製品の品質差が大きいため、標準化エキスを選ぶ:

エキス特徴
KSM-66根のみ。ウィタノリド5%以上。臨床試験多数
Sensoril根+葉。ウィタノリド10%以上。低用量で効果
Nutricost, KSM-66®(ケイエスエム - 66)、アシュワガンダ根エキス、60粒

KSM-66標準化エキス。臨床試験で使用されるゴールドスタンダード。

iherb.com

(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)


避けるべき人

禁忌・注意が必要な人

対象理由
既存の肝疾患死亡例あり
甲状腺疾患甲状腺中毒症のリスク
自己免疫疾患免疫系への影響
妊娠・授乳中安全性データなし
手術前麻酔との相互作用の可能性

他のサプリ・薬との相互作用

Kumar et al., 2026のレビューでは、以下の相互作用が指摘されている:

  • 甲状腺薬:効果を増強する可能性
  • 鎮静薬:効果を増強する可能性
  • 免疫抑制薬:効果を打ち消す可能性
  • 糖尿病薬:血糖降下作用を増強

正直なエビデンス評価

確実に言えること

  1. 短期間(8-12週)・中用量(300-600mg)では安全性が確認されている
  2. コルチゾール低下効果は複数のRCTで再現されている
  3. 長期・高用量(950mg/日、1年以上)でHPA軸抑制が起きた(症例報告)
  4. 肝毒性の報告がある(既存肝疾患で重症化リスク)
  5. 甲状腺機能に影響する可能性がある

言えないこと

  1. どの用量・期間でHPA軸抑制が起きるかの閾値は不明
  2. 個人差(遺伝的要因等)の影響は未解明
  3. 長期使用(6ヶ月+)の安全性は十分に検証されていない
  4. 製品間の品質差による影響は不明

三島の結論

この報告の意義

「天然だから安全」という思い込みを覆す、重要な症例報告だ。

アシュワガンダのコルチゾール低下効果は、短期的にはストレス軽減として歓迎される。しかし、長期的にはHPA軸を抑制し、自力でコルチゾールを産生できなくなるリスクがある。

これはステロイド薬の長期使用と同じ問題だ。「天然」かどうかは関係ない。

私の実践

正直に言えば、私もアシュワガンダを使っている。KSM-66を300mg/日、8週間のサイクルで。

しかし、この症例報告を読んで、改めて使用法を見直した:

  • サイクル使用を徹底(8週on / 4週off)
  • 用量は600mg/日以下
  • 1年以上の連続使用は避ける

推奨ではなく警告

アシュワガンダは有用なサプリだ。ストレス軽減、睡眠改善のエビデンスはある。

しかし、「毎日ずっと飲み続ける」使い方は推奨しない。サイクル使用を強く推奨する。

特に、以下の人は医師に相談してから:

  • 肝疾患がある人
  • 甲状腺疾患がある人
  • 他の薬を服用している人

エビデンスを読んで、リスクを理解した上で判断してほしい。


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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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