1日5分の運動で死亡リスク10%減少、Lancetメタアナリシスの効果サイズ
「運動は体にいい」
これは誰でも知っている。だが「どのくらい運動を増やせば」「どの程度の効果があるか」を正確に知っている人は少ない。
2026年発表のLancet論文が、その答えを出した。
1日5分のMVPA(中高強度活動)増加で、死亡の6-10%を予防可能。
これはサプリの効果サイズを遥かに上回る。詳しく見ていこう。
結論から言う
| 介入 | アプローチ | 予防可能な死亡 | 評価 |
|---|---|---|---|
| MVPA 5分/日増加 | ハイリスク群 | 6.0% | ★★★★★ |
| MVPA 5分/日増加 | 全体 | 10.0% | ★★★★★ |
| 座位 30分/日減少 | ハイリスク群 | 3.0% | ★★★★☆ |
| 座位 30分/日減少 | 全体 | 7.3% | ★★★★★ |
| 歩数 +2,000歩 | 全体 | HR 0.60(40%減少) | ★★★★★ |
小さな変化、巨大な効果。サプリに月1万円使う前に、1日5分多く歩け。
Lancet 2026: 個人参加者データメタアナリシス
Ekelund et al. 2026のLancet論文を紹介する。
研究デザイン
- 研究タイプ: 個人参加者データ(IPD)メタアナリシス
- データ: デバイス測定(加速度計)による活動量
- コホート:
- 主解析: 7コホート(ノルウェー、スウェーデン、米国)、n=40,327、4,895死亡
- 別解析: UK Biobank、n=94,719、3,487死亡
自己申告ではなく、加速度計による客観的な活動量測定。
2つのアプローチ
この研究は2つのシナリオを検討している:
- ハイリスクアプローチ: 最も非活動的な約20%の人だけ活動量を増やす
- 集団アプローチ: 最も活動的な約20%を除く全員の活動量を増やす
どちらが効果的か?答えは集団アプローチだ。
結果: MVPA(中高強度活動)の増加
| 介入 | アプローチ | 予防可能な死亡(PIF) | 95%CI |
|---|---|---|---|
| 5分/日増加 | ハイリスク | 6.0% | 4.3-7.4 |
| 5分/日増加 | 集団 | 10.0% | 6.3-13.4 |
| 10分/日増加 | ハイリスク | 11.2% | 7.1-14.9 |
| 10分/日増加 | 集団 | 14.7% | 11.1-18.1 |
1日たった5分のMVPA増加で、死亡の6-10%を予防可能。
10分増やせば、最大15%近くまで上がる。
結果: 座位時間の減少
| 介入 | アプローチ | 予防可能な死亡(PIF) | 95%CI |
|---|---|---|---|
| 30分/日減少 | ハイリスク | 3.0% | 2.0-4.1 |
| 30分/日減少 | 集団 | 7.3% | 4.8-9.6 |
| 60分/日減少 | ハイリスク | 5.6% | 3.5-7.6 |
| 60分/日減少 | 集団 | 13.1% | 8.8-17.0 |
1日30分座る時間を減らすだけで、死亡の3-7%を予防可能。
研究者の結論:
“Small and realistic increases in MVPA of 5 min/day might prevent up to 6% of all deaths in a high-risk approach and 10% of all deaths in population-based approach.”
非線形の用量反応: 最も効果が大きいのは「動かない人」
先行研究のEkelund et al. 2019(BMJ)は、活動量と死亡リスクの非線形関係を示した。
総活動量と死亡リスク
| 四分位 | ハザード比(HR) | 95%CI |
|---|---|---|
| Q1(最少活動) | 1.00(参照) | - |
| Q2 | 0.48 | 0.43-0.54 |
| Q3 | 0.34 | 0.26-0.45 |
| Q4(最多活動) | 0.27 | 0.23-0.32 |
最も活動的な群は、最も非活動的な群より死亡リスクが73%低い。
だが注目すべきはQ1→Q2の変化だ。最少活動から2番目に活動的になるだけで、リスクは52%減少(HR 1.00 → 0.48)。
一方、Q2→Q4(2番目から最も活動的)では追加で21%減少(HR 0.48 → 0.27)。
最も大きなリターンは「動かない人が少し動き始める」こと。
座位時間のリスク
| 四分位 | ハザード比(HR) | 95%CI |
|---|---|---|
| Q1(最少座位) | 1.00(参照) | - |
| Q2 | 1.28 | 1.09-1.51 |
| Q3 | 1.71 | 1.36-2.15 |
| Q4(最多座位) | 2.63 | 1.94-3.56 |
最も座っている群は、最も座っていない群より死亡リスクが163%高い。
座りすぎは明確に死亡リスクを上げる。
歩数の効果サイズ: 何歩歩けばいいのか
Paluch et al. 2022の歩数メタアナリシス(15コホート、47,471名)。
歩数と死亡リスク
| 四分位 | 中央値歩数 | ハザード比(HR) |
|---|---|---|
| Q1(最少) | 3,553歩 | 1.00(参照) |
| Q2 | 5,801歩 | 0.60 |
| Q3 | 7,842歩 | 0.55 |
| Q4(最多) | 10,901歩 | 0.47 |
3,500歩から5,800歩に増やすだけで、死亡リスクが40%減少。
「1万歩」は必要か?
| 年齢 | 効果が頭打ちになる歩数 |
|---|---|
| 60歳以上 | 6,000-8,000歩/日 |
| 60歳未満 | 8,000-10,000歩/日 |
60歳以上なら、6,000-8,000歩で十分。1万歩は必須ではない。
若い人でも8,000-10,000歩で効果は頭打ち。それ以上歩いても死亡リスクへの追加効果は小さい。
サプリとの効果サイズ比較
俺が普段評価しているサプリと比較してみよう。
| 介入 | 効果サイズ | コスト |
|---|---|---|
| クレアチン | 筋力+8-14%、筋肥大+5-10% | 月1,000円 |
| プロテイン | FFM +0.30kg(SMD 0.22) | 月3,000円 |
| オメガ3サプリ | CVD死亡に効果なし | 月2,000円 |
| αリポ酸 | 神経保護に効果なし(Phase 2 RCT) | 月2,000円 |
| MVPA 5分/日増加 | 全死亡6-10%減少 | 無料 |
| 座位30分/日減少 | 全死亡3-7%減少 | 無料 |
効果サイズはサプリを圧倒し、コストはゼロ。
サプリに月1万円使う前に、毎日5分多く歩けば死亡リスクが10%下がる。これが現実だ。
何をすればいいか: 具体的な5分MVPA
「5分のMVPA」とは具体的に何か。
MVPAの定義
- 中強度: 息が上がるが会話できる(早歩き、軽いジョギング、自転車)
- 高強度: 息が切れて会話が難しい(ランニング、階段駆け上がり)
日常に取り入れる5分
- 階段を使う: エレベーターでなく階段。オフィスの3-4階分で約5分
- 一駅歩く: 通勤で一駅分歩けば5-10分のMVPA
- 昼休みに歩く: ランチ後に5分だけ外を歩く
- 犬の散歩を早歩きで: ゆっくり歩くのではなく早歩きで
座位時間を30分減らす
- 1時間に1回立つ: デスクワーク中、1時間ごとに2-3分立ち上がる
- 立ちミーティング: 30分の会議を立って行う
- 電話は歩きながら: 通話中は歩き回る
- テレビはストレッチしながら: 座りっぱなしでなく、軽い運動を入れる
俺の結論
運動の効果サイズは、ほぼすべてのサプリを上回る。
| 介入 | 全死亡への効果 |
|---|---|
| MVPA 5分/日増加 | 6-10%減少 |
| 座位30分/日減少 | 3-7%減少 |
| 歩数 +2,000歩 | 40%減少 |
| サプリ(大半) | 効果なし〜数%程度 |
これが個人参加者データメタアナリシス(最高品質のエビデンス)の結論だ。
効果サイズ原理主義者として
俺はサプリを効果サイズで評価してきた。クレアチンは効果サイズA。プロテインはSMD 0.22。オメガ3サプリはCVD死亡に効果なし。
だが、運動の効果サイズはこれらを全て上回る。
5分の運動増加で死亡10%減少。これはクレアチンの筋力効果(8-14%)に匹敵し、対象が「筋力」ではなく「全死亡」というハードエンドポイントだ。
非線形の意味
最も重要なのは、効果が非線形であること。
- 運動ゼロ → 少し: 効果最大
- 少し → もっと: 効果逓減
- 十分 → さらに: ほぼ追加効果なし
つまり、今全く運動していない人が5分歩き始めるのが、毎日1時間走っている人が1時間10分に増やすより遥かに効果が大きい。
サプリ好きへのメッセージ
サプリに詳しい人ほど、運動を軽視しがちだ。「サプリで効率よく健康になりたい」という気持ちはわかる。
だが、効果サイズを見れば答えは明らかだ。5分歩くだけで死亡リスクが10%下がる介入は、サプリには存在しない。
サプリは「運動している人がさらに上を目指す」ためのもの。運動なしでサプリだけ飲んでも、効果サイズの大きい介入を逃している。
まとめ
- Lancet 2026 IPDメタアナリシス(13万人超): 小さな運動変化の効果を定量化
- MVPA 5分/日増加: 死亡の6-10%を予防可能
- 座位30分/日減少: 死亡の3-7%を予防可能
- 歩数 +2,000歩: 死亡リスク40%減少
- 非線形: 動かない人が少し動くのが最も効果大
- 60歳以上: 6,000-8,000歩で効果頭打ち、1万歩は不要
- 結論: サプリより先に階段を使え。5分の運動がサプリを上回る
それでも運動と相性の良いサプリを知りたい人へ
運動を始めたら、次は効果を最大化したくなるのが人情だ。効果サイズが確認されているサプリを紹介する。
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