ロディオラの不安・コルチゾール低減、マウス研究とヒトRCTを検証
最新のマウス研究で、ロディオラ(Rhodiola rosea)がコルチゾールを「強く」低下させたと報告された。
Lelong et al. 2026の研究だ。慢性ストレスを与えたマウスに、ロディオラ根粉末を投与した結果、不安行動とコルチコステロン(マウスのコルチゾール)が大幅に減少した。
SNSでは「ロディオラすごい」と盛り上がっている。
だが、待ってくれ。これはマウス研究だ。
マウスで効いても、ヒトで効くとは限らない
これは基礎研究の常識だ。
マウス研究は作用メカニズムの理解に有用だが、ヒトへの外挿には慎重になるべき。代謝、薬物動態、脳の構造がマウスとヒトでは違う。
効果サイズ原理主義者としては、ヒトRCTのデータを見る必要がある。
そして、ロディオラには意外とヒトRCTが存在する。
ヒトRCT①: Phase III試験(疲労症候群)
Olsson et al. 2009の研究。Phase IIIという点が重要だ。
研究デザイン
- 対象: 60名(ストレス関連疲労症候群)
- 期間: 28日間
- 用量: SHR-5抽出物 576mg/日
- デザイン: 二重盲検RCT
結果
プラセボと比較して有意差があったのは:
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| Pines’ burnout scale | 改善 |
| 注意力(omissions) | 改善 |
| 注意力(Hit RT SE) | 改善 |
| 注意力(variability) | 改善 |
| 覚醒時コルチゾール反応 | 有意に異なる |
研究者の結論:
“R. rosea extract SHR-5 exerts an anti-fatigue effect that increases mental performance, particularly the ability to concentrate, and decreases cortisol response to awakening stress”
疲労、注意力、コルチゾール反応に効果あり。
ただし、効果サイズ(Cohen’s d等)は報告されていない。
ヒトRCT②: 夜勤医師のクロスオーバー試験
古い研究だが、デザインが良い。
Darbinyan et al. 2000。56名の若い医師を対象に、夜勤中の精神パフォーマンスを評価した。
結果
- Fatigue Index: 統計的に有意に改善
- 連想思考、短期記憶、計算、集中力、視聴覚知覚速度: 改善
- 副作用: なし
高ストレス環境(夜勤)での疲労軽減に効果あり。
これは俺のような筋トレ民より、夜勤や激務をこなす人に関連性が高い。
ヒトRCT③: 軽度不安の80名
研究デザイン
- 対象: 80名(軽度不安)
- 期間: 14日間
- 用量: 400mg/日(Vitano®)
結果
- 不安、ストレス、怒り、混乱、抑うつ: 有意に減少
- 総合的気分: 有意に改善
- 認知機能: 有意差なし
問題点
この研究には重大な欠陥がある。
対照群が「プラセボ」ではなく「無治療」だ。
研究者は「プラセボ効果ではないと思う」と書いているが、プラセボなしでは断定できない。エビデンスレベルは下がる。
唯一の効果サイズ報告: d=0.29
Noah et al. 2022の研究で、効果サイズが報告されている。
研究デザイン
- 対象: 100名(慢性ストレス)
- 期間: 28日間
- 介入: マグネシウム + ビタミンB群 + ロディオラ + 緑茶(L-テアニン)
結果
| 項目 | 効果サイズ | p値 |
|---|---|---|
| DASS-42ストレススコア | d=0.29 | 0.04 |
| 冷痛感受性 | - | 0.01 |
| 日中の眠気による機能障害 | - | <0.001(56日目) |
Cohen’s d = 0.29は「小さい」効果サイズ。
ただし、これは配合製品だ。ロディオラ単独の効果は分からない。
効果サイズの評価
ロディオラのエビデンス状況
| 研究 | デザイン | 結果 | 評価 |
|---|---|---|---|
| Olsson 2009 | Phase III RCT | 疲労・注意力に有意差 | ★★★★☆ |
| Darbinyan 2000 | クロスオーバーRCT | 疲労に有意差 | ★★★☆☆ |
| Cropley 2015 | 非プラセボ対照 | 不安等に改善 | ★★☆☆☆ |
| Noah 2022 | RCT(配合製品) | d=0.29 | ★★★☆☆ |
| Lelong 2026 | マウス研究 | 強い効果 | ★★☆☆☆ |
他のアダプトゲンとの比較
正直に言うと、ロディオラはアダプトゲンの中では比較的エビデンスが充実している。
- アシュワガンダ: RCTあり、でも耐性に関するデータなし
- キノコブレンド: RCTあるが効果サイズ未報告
- ロディオラ: Phase III RCTあり、効果サイズ0.29(配合製品)
アダプトゲンの中で選ぶなら、ロディオラは悪くない選択肢だ。
誰に向いているか
試す価値がありそうな人
- ストレス関連の疲労に悩む人: Phase III RCTで改善
- 夜勤や高ストレス環境で働く人: Darbinyan 2000で改善
- 軽度の不安がある人: 複数の研究で改善傾向
- アダプトゲンを試したい人: 比較的エビデンスが充実
慎重になるべき人
- 確実な大きい効果サイズを求める人: d=0.29は小さい
- 重度のうつ病や不安障害がある人: RCTの対象外、医師に相談すべき
- コスパ最優先の人: プロテイン・クレアチンの方が効果サイズ明確
用量と選び方
研究で使われた用量
- SHR-5抽出物: 288-576mg/日
- Vitano®: 400mg/日
選び方のポイント
- 標準化抽出物を選ぶ: salidroside(サリドロシド)、rosavin(ロサビン)の含有量が明記されたもの
- SHR-5はエビデンスが豊富: この抽出物を使った研究が多い
- 根由来を確認: 地上部ではなく根からの抽出
安い製品には有効成分が少ないものもある。
試すなら
標準化抽出物で、salidroside/rosavin含有量が明記されたものを選ぶ。
標準化抽出物。salidroside 3%、rosavin 1%含有。研究で使われた用量に近い。
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高品質な抽出物。夜勤や高ストレス環境の人に。
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俺の結論
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| エビデンスの存在 | ★★★★☆(Phase III RCTあり) |
| 効果サイズ | 小さい(d=0.29、配合製品) |
| アダプトゲン内での位置 | 比較的充実 |
| リスク | 低い(重篤な副作用報告なし) |
| 優先度 | 中 |
ロディオラは、「効かない」と断定するには惜しいエビデンスがある。
Phase III RCTで疲労・注意力・コルチゾール反応に有意差。夜勤医師のクロスオーバー試験でも疲労軽減。効果サイズは小さい(d=0.29)が、これは配合製品のデータだ。
マウス研究はメカニズムを示唆するが、それだけでは判断できない。俺が見るのはヒトRCTだ。
アダプトゲンを試すなら、ロディオラは悪くない選択肢。
ただし、効果サイズが明確なプロテインやクレアチンを差し置いて優先する理由はない。
ストレスや疲労に悩んでいて、基本(睡眠、運動、食事)を整えた上で「何か追加したい」という人には、試す価値はある。
過度な期待は禁物だが、「試す価値がない」とも言えない。
これが効果サイズ原理主義者としての、正直な評価だ。

