高用量クレアチン15-20gの運動前摂取は効果があるのか、メタ回帰分析で検証
「運動前に15-20gのクレアチンを摂取すると、パフォーマンスが向上する」
一部のバイオハッカーやインフルエンサーがこう主張している。
従来の推奨量は3-5g/日。15-20gはその3-4倍だ。
本当に効果サイズに差があるのか?メタアナリシスとRCTで検証した。
結論から言う
| 介入 | 効果サイズ | 評価 |
|---|---|---|
| 標準用量(3-5g/日) | ES 0.24-0.34 | ★★★★☆ |
| ローディング(20g/日×7日) | 有効 | ★★★★☆ |
| 急性高用量(15-20g pre-workout) | プラセボと同等 | ★☆☆☆☆ |
クレアチンは効く。だが効果サイズは用量に依存しない。高用量プレワークアウトは無駄。
クレアチンの標準的な効果サイズ
まず、クレアチン自体の効果を確認する。
上肢筋力(53研究、1,138名)
Lanhers et al. 2017のメタアナリシス。
| 部位 | 効果サイズ(ES) | 95%CI |
|---|---|---|
| ベンチプレス | 0.265 | 0.132-0.398 |
| チェストプレス | 0.677 | 0.149-1.206 |
| 上肢全体 | 0.317 | 0.185-0.449 |
ES 0.27-0.32は「小〜中」の効果サイズ。統計的に有意。
下肢筋力(60研究、1,297名)
Lanhers et al. 2015のメタアナリシス。
| 部位 | 効果サイズ(ES) | 95%CI |
|---|---|---|
| スクワット | 0.336 | 0.047-0.625 |
| レッグプレス | 0.297 | 0.098-0.496 |
| 下肢全体 | 0.235 | 0.125-0.346 |
こちらもES 0.24-0.34。クレアチンの筋力向上効果は確立されている。
用量と効果サイズの関係
ここからが本題だ。
両方のメタアナリシスでメタ回帰分析が行われている。用量や期間が効果サイズに影響するかを検証するものだ。
結果は明確だった:
“The meta-regression showed no link with characteristics of population or supplementation, demonstrating the efficacy of creatine independently of all listed conditions.”
用量や期間と効果サイズに相関なし。
3g/日でも20g/日でも、効果サイズは変わらない。
これは「多く摂れば効く」という常識に反する結果だ。
衝撃のRCT: 急性高用量はプラセボと同等
Aguiar et al. 2022の研究は、高用量クレアチンの「真の効果」を暴いた。
研究デザイン
15名の男性を対象に、4つの条件を比較した:
- CON: 何も摂取しない
- PLC: プラセボ(デキストロース)を摂取、「プラセボ」と伝える
- Cr-False: プラセボを摂取、「クレアチン」と伝える
- Cr-True: 本物のクレアチン(0.3g/kg ≒ 21g/70kg)を摂取、「クレアチン」と伝える
運動30分前に摂取し、スクワットとベンチプレスを限界まで行った。
結果
| 条件 | スクワット | ベンチプレス |
|---|---|---|
| CON | 基準 | 基準 |
| PLC | CONより改善 | CONより改善 |
| Cr-False | PLCより有意に改善 | PLCより改善 |
| Cr-True | PLCより有意に改善 | PLCより改善 |
Bayes Factor分析
- PLCからCr-True: BF = 19.1(強い証拠)
- PLCからCr-False: BF = 45.3(非常に強い証拠)
「クレアチンを飲んでいると思っている」だけで、本物と同等以上の効果が出た。
研究者の結論:
“In conclusion, in acute measures, belief versus ingestion of creatine yields similar exercise performance.”
急性高用量クレアチンの効果は、大部分がプラセボ効果だ。
なぜ急性高用量は効かないのか
理由は生理学的に明確だ。
筋肉クレアチンの飽和
クレアチンは筋肉に貯蔵される。貯蔵量には上限(飽和点)がある。
- 飽和点: 約160mmol/kg乾燥重量
- 飽和までの時間: ローディング(20g/日)で5-7日、維持用量(3-5g/日)で3-4週間
急性摂取(運動30分前)では、筋肉クレアチン濃度は上がらない。
取り込みには時間がかかる。飲んですぐ効くものではない。
余剰分は排出される
飽和点を超えたクレアチンは尿として排出される。
15-20g摂取しても、吸収・貯蔵されるのは3-5g程度。残りは無駄になる。
ローディングプロトコルには意味がある
急性高用量の効果は限定的だが、ローディングプロトコルは別の話だ。
Forbes et al. 2021のメタアナリシスによると:
| 戦略 | 結果 |
|---|---|
| ローディング + 低用量(≤5g/日) | 胸部筋力に有意に効果 |
| 高用量(>5g/日)± ローディング | 脚部筋力に有意に効果 |
| ローディングなし | 有意差なし |
ローディング(20g/日×5-7日)は、筋肉クレアチンを早く飽和させるために有効。
ただし、これは「急性効果」ではなく「蓄積効果」だ。
最新RCTでの確認
Ben Maaoui et al. 2025の研究では、20g/日×7日間のローディングで:
- 主観的睡眠の質: 改善(ES = 0.81)
- 認知機能: 改善(ES = 0.77)
- 高強度間欠運動: 改善(r = 0.88)
ローディングプロトコル自体は、効果サイズで支持されている。
効果サイズの比較
| 介入 | アウトカム | 効果サイズ | コスト効率 |
|---|---|---|---|
| 標準用量(3-5g/日) | 筋力 | ES 0.24-0.34 | ★★★★★ |
| ローディング(20g/日×7日) | 早期飽和 | 有効 | ★★★★☆ |
| 急性高用量(15-20g/回) | 筋力 | プラセボと同等 | ★☆☆☆☆ |
コスパの観点
15-20g/日を継続すると、コストは3-5倍になる。
| 用量 | 月間消費量 | 月間コスト(概算) |
|---|---|---|
| 3g/日 | 90g | 約500円 |
| 5g/日 | 150g | 約800円 |
| 15g/日 | 450g | 約2,400円 |
| 20g/日 | 600g | 約3,200円 |
効果サイズが変わらないのに、コストは3-6倍。俺の優先度は低い。
俺の結論
クレアチンは効く
これは間違いない。効果サイズES 0.24-0.34は、サプリメントとしては十分に大きい。
筋トレ民が摂るべきサプリのトップ3に入る。
高用量プレワークアウトは無駄
急性高用量の効果はプラセボと同等。メタ回帰分析でも用量と効果サイズに相関なし。
「運動前に15-20g」という戦略には、効果サイズのエビデンスがない。
推奨プロトコル
早く効果を得たい場合:
- ローディング: 20g/日(5g×4回)× 5-7日間
- 維持: 3-5g/日
急がない場合:
- 3-5g/日を継続(効果発現まで3-4週間)
どちらも効果サイズは同等。
俺が選ぶなら
コスパ重視で、シンプルにモノハイドレートを3-5g/日。
1kgの大容量。1日3-5gで6ヶ月以上持つ。効果サイズAの王道サプリ。高用量は不要、これで十分。
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(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)
高用量を勧めるインフルエンサーに惑わされるな。効果サイズは用量に依存しない。
まとめ
- クレアチンは効く: 筋力向上に効果サイズES 0.24-0.34(確立されたエビデンス)
- メタ回帰分析: 用量と効果サイズに相関なし
- 急性高用量(15-20g): プラセボと同等(Aguiar et al. 2022)
- ローディングは有効: 早期飽和のため(20g/日×5-7日)
- 維持用量: 3-5g/日で十分
- 結論: 高用量プレワークアウトは無駄。標準用量で効果サイズは最大化される
