マグネシウムの種類と吸収率を論文から解説。酸化物を避けるべき科学的な理由

マグネシウムの種類と吸収率を論文から解説。酸化物を避けるべき科学的な理由

はじめに

「マグネシウムを飲んでいるのに効果を感じない」

そんな声を聞くと、僕はまず「どの形態のマグネシウムを飲んでいますか?」と確認する。同じマグネシウムでも、酸化マグネシウムグリシン酸マグネシウムでは吸収率が全然違うからだ。

マグネシウムサプリには、酸化物、クエン酸、グリシン酸(ビスグリシネート)、L-トレオン酸など、さまざまな形態がある。ドラッグストアで安く売られている酸化マグネシウムは、実は吸収率が非常に低い。にもかかわらず、多くの人がその事実を知らずに飲み続けている。

今回は、PubMedに掲載されている論文をもとに、マグネシウムの種類ごとの吸収率の違いを解説する。「成分量」だけでなく「成分フォーム」を見ることの重要性を、データとともに伝えたい。


酸化マグネシウムは、なぜ吸収されにくいのか

まず、酸化マグネシウム(MgO)の問題点を整理しよう。

1990年にJournal of the American College of Nutritionに掲載された古典的研究では、クエン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの溶解性と吸収率が比較されている。

結果は明確だった。

  • 酸化マグネシウムは水にほとんど溶けない
  • 胃酸環境(最大分泌状態)でも、溶解率は43%程度
  • 一方、クエン酸マグネシウムは水でも55%溶ける

尿中マグネシウム排泄量(吸収の指標)を比較すると、クエン酸マグネシウムは酸化マグネシウムより有意に高い吸収を示した。つまり、酸化マグネシウムは胃で溶けにくく、腸で吸収されにくいということだ。

酸化マグネシウムはプラセボと変わらない?

さらに衝撃的なのは、2003年のRCTの結果だ。この研究では46人の健康な成人を対象に、60日間にわたってクエン酸、アミノ酸キレート(グリシン酸など)、酸化物の3種類を比較した。

結論は以下の通り。

  • 有機塩(クエン酸、アミノ酸キレート)は酸化物より有意に吸収が高い(P=0.033)
  • クエン酸マグネシウムは血清Mg濃度を最も上昇させた
  • 酸化マグネシウムはプラセボと有意差なし

つまり、酸化マグネシウムを60日間飲み続けても、何も飲んでいないのと同じだったということだ。これは非常に重要な知見だと思う。


有機塩vs無機塩:システマティックレビューの結論

2021年にNutrition誌に掲載されたシステマティックレビューでは、14件の研究をもとにマグネシウムサプリの生体利用率が比較されている。

主な結論は以下の2点。

  1. 無機塩(酸化物、炭酸塩など)は有機塩より生体利用率が低い
  2. 吸収率は用量依存的(一度に大量に摂るより、分割して摂る方が効率的)

これはフランスINRAの研究でも裏付けられている。マグネシウム欠乏ラットを使って10種類のマグネシウム塩の吸収率を比較した結果、有機塩は無機塩より吸収率が高かった。吸収率は50〜67%の範囲で、グルコン酸マグネシウムが最も高かった。


マグネシウムの形態比較:どれを選ぶべきか

研究をまとめると、以下のような傾向が見えてくる。

形態吸収率特徴推奨用途
グリシン酸アミノ酸キレート、胃腸に優しい睡眠、リラックス
クエン酸溶解性高、研究が多い汎用、便秘傾向の人
L-トレオン酸中〜高血液脳関門を通過認知機能
タウリン酸中〜高心血管系に好まれる心臓の健康
酸化物低(4〜10%)安価、下剤効果あり便秘薬として

ここで一つ、正直に書いておきたいことがある。

グリシン酸は本当に最良か?2024年の研究結果

グリシン酸(ビスグリシネート)マグネシウムは人気があるが、エビデンスは実はクエン酸ほど強くない

2024年に発表された最新のRCTでは、40人の健康な成人を対象にクロスオーバー試験が行われた。比較されたのは、マイクロカプセル化Mg、酸化物、クエン酸、ビスグリシネートの4種類だ。

結果は驚くべきものだった。

  • マイクロカプセル化Mg:全時点で有意な血中Mg上昇
  • 酸化物:1時間後のみ有意
  • クエン酸:4時間後のみ有意
  • ビスグリシネート:有意な上昇なし

この結果をどう解釈すべきか。僕なりの見解を述べる。

まず、この研究は単回投与の急性試験であり、長期摂取とは異なる。2003年のRCTでは、60日間の慢性摂取でアミノ酸キレート(グリシン酸など)はクエン酸に次ぐ吸収を示している。また、グリシン酸は「血中濃度を急上昇させる」のではなく、「緩やかに吸収される」特性を持つ可能性がある。

しかし、現時点でクエン酸の方がエビデンスが多いのは事実だ。僕がグリシン酸を選んでいるのは、胃腸への負担が少ないという体感と、睡眠前のリラックス目的だからだ。吸収率だけを見れば、クエン酸の方が研究で支持されている。

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Thorne Researchは医療機関向けの品質基準を満たしているブランドで、cGMP認証と第三者検査を受けている。僕はサプリを選ぶとき、成分フォームの次に製造元の信頼性を見る。


睡眠に対するマグネシウムのエビデンス

マグネシウムと睡眠の関係についても、簡単に触れておきたい。

2021年のメタアナリシスでは、高齢者を対象とした3つのRCT(計151人)をプールして分析している。

結果は以下の通り。

  • 入眠時間がプラセボより17.36分短縮(95%CI -27.27〜-7.44、P=0.0006)
  • 総睡眠時間は16分改善(ただし統計的有意差なし)

エビデンスの質は「低〜非常に低」と評価されているが、方向性としては睡眠への好影響を示唆している。僕は就寝前にグリシン酸マグネシウムを摂っているが、これはこうした研究を踏まえた選択だ。


僕が実践しているマグネシウムの摂り方

僕のマグネシウム摂取ルーティンを紹介しよう。

  • 形態: グリシン酸マグネシウム(Thorne)
  • タイミング: 就寝30分〜1時間前
  • : 1日200〜400mg(元素マグネシウム換算)

マグネシウム吸収に関するレビューによると、一度に大量に摂るより、分割して摂る方が吸収効率が良い。マグネシウムは体内に貯蔵できず、過剰分は尿で排泄されるからだ。

体感としては、就寝前に摂ると寝つきが良くなる感覚がある。ただし、これはあくまで僕個人の主観であり、プラセボ効果の可能性もある。エビデンスベースで語るなら、前述のメタアナリシスのデータを参照してほしい。


認知機能を重視するならL-トレオン酸

最後に、認知機能を重視する人向けの選択肢も紹介しておく。

L-トレオン酸マグネシウム(Magtein)は、MITの研究者によって開発された形態で、血液脳関門を通過しやすいとされている。2019年の動物実験では、アセチルタウリン酸マグネシウムとともに脳内マグネシウム濃度を上昇させることが示されている。

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Life Extensionもアンチエイジング研究に注力しているブランドで、品質には信頼を置いている。ただし、ヒトでの大規模RCTはまだ少ないので、エビデンスレベルとしてはグリシン酸やクエン酸より低いことは覚えておいてほしい。


こんな人におすすめ

グリシン酸マグネシウム

  • 睡眠の質を上げたい人
  • 胃腸が弱い人
  • 吸収率を重視する人
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クエン酸マグネシウム

  • 便秘傾向がある人
  • コストを抑えたい人
  • 汎用的にマグネシウムを補いたい人
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コスパの良いクエン酸マグネシウム。研究データも豊富な形態。

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L-トレオン酸マグネシウム

  • 認知機能、記憶力をサポートしたい人
  • 脳への移行性を重視する人
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脳への移行性を重視した形態。認知機能サポートの研究あり。

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酸化マグネシウム

  • 睡眠・健康目的には推奨しない
  • 便秘薬として使う場合のみ

まとめ

マグネシウムは「何mg入っているか」だけでなく、「どの形態か」が重要だ。

論文をまとめると、以下のことが言える。

  1. 酸化マグネシウムは吸収率が低く、RCTでプラセボと有意差なし
  2. 有機塩(クエン酸、グリシン酸など)は無機塩より吸収が良い
  3. クエン酸は吸収率に関するエビデンスが最も豊富
  4. グリシン酸は人気だが、2024年の研究では急性吸収で有意差なし
  5. 分割して摂る方が、一度に大量に摂るより効率的

「グリシン酸が最良」という結論を期待していた人には申し訳ないが、エビデンスを素直に読むとクエン酸の方が研究で支持されている。グリシン酸は胃腸への負担が少ないという利点があるので、目的に応じて選ぶのが合理的だろう。

いずれにせよ、酸化マグネシウムを健康目的で飲むのは避けた方がいい。これだけは明確に言える。


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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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