ホエイ vs カゼイン vs ソイ、筋肥大の効果サイズで見る本当の差
「筋肥大ならホエイ一択」
この言い方は、
半分は正しい。
でも、
半分は雑だ。
PubMed を順に並べると、
- 急性の筋タンパク合成(MPS)は ホエイ > ソイ > カゼイン
- ただし長期の除脂肪体重/筋力は 差がかなり縮む
というのが全体像になる。
竹内の結論を先に言う。
理論上いちばん強いのはホエイ。
ただし、
実務でいちばん重要なのは原料よりタンパク質総量とロイシン設計。
なので、
- 乳OKでラクに済ませたい:
- ホエイ
- 乳製品が合わない、ヴィーガン:
- ソイ
- 夜の腹持ち、抗異化寄り:
- カゼイン
くらいの使い分けが現実的だ。
先に結論
| 論点 | 数字 | 竹内の評価 |
|---|---|---|
| 急性MPS | ホエイ > ソイ > カゼイン | 序列はかなり明確 |
| ホエイ vs カゼイン 安静時 | +93% | ホエイ有利 |
| ホエイ vs カゼイン 運動後 | +122% | ホエイ有利 |
| ホエイ vs ソイ 運動後 | +31% | ホエイ有利 |
| 12週 ソイ vs ホエイ | 除脂肪体重 +1.54kg | 群差なし |
| 2018 メタ | 除脂肪体重/ベンチ/スクワット 差なし | 長期差は小さい |
| カゼイン | 分解 -34% | 抗異化寄り |
| 高齢者NMA | ホエイ 標準化平均差 1.29 | 間接比較なので盛りすぎ注意 |
要するに、
- 単発の同化シグナルはホエイが最強
- 長期の筋肥大でソイが明確に負けるとは言えない
- カゼインは最強というより役割が違う
という話だ。
まず、なぜホエイが強いと言われるのか
Tang 2009 はこの話の起点としてかなり重要だ。
必須アミノ酸(EAA)を10gに揃えた状態で、
- ホエイ加水分解物
- ソイプロテインアイソレート
- ミセラーカゼイン
を比較すると、混合筋タンパク合成はこうなった。
| タンパク質原料 | 安静時MPS |
|---|---|
| whey | 0.091 ± 0.015 %/h |
| soy | 0.078 ± 0.014 %/h |
| casein | 0.047 ± 0.008 %/h |
さらに差分で見ると、
- whey は casein より
- 安静時 約93%高い
- 運動後 約122%高い
- whey は soy より
- 運動後 約31%高い
ここだけ見ると、
ホエイ一択
に見える。
実際、
- ロイシン密度が高い
- 消化吸収が速い
- 血中アミノ酸ピークが高い
ので、急性の同化反応ではホエイがいちばん説明しやすい。
でも casein は「弱いプロテイン」ではない
Boirie 1997 は、いわゆる「速い」タンパク質/「遅い」タンパク質の元ネタだ。
- ホエイ:
- タンパク質合成 +68%
- カゼイン:
- タンパク質分解 -34%
- 7時間の正味ロイシンバランス:
- カゼイン > ホエイ
つまり casein は、
MPS の立ち上がりでは負ける。
でも、
分解抑制では強い。
ここを無視して
「casein はホエイの劣化版」
と読むのは雑だ。
むしろ casein は、
- 就寝前
- 長時間食事を空ける日
- 空腹感を抑えたい減量期
みたいな文脈で役割が違う。
いちばん重要なのは、急性と長期を混同しないこと
ここが今回の本題だ。
MPSの急性反応は分かりやすい。
でも、
数時間のMPS差が、そのまま12週間や24週間の筋肥大差になるとは限らない。
ここで直接比較試験を見る必要がある。
ソイは長期で本当に負けるのか
Lynch 2020 は、かなり実務的な比較になっている。
- 12週間のレジスタンストレーニング
- ホエイアイソレート 19g
- ソイアイソレート 26g
- どちらもロイシン 2g に調整
結果は、
- LBM:
- +1.54 kg
- leg extensor torque:
- +40.27 Nm
- leg flexor torque:
- +20.44 Nm
まで伸びた。
で、
群間差はなかった。
ここはかなり大事だ。
つまり、
ソイは原料として弱いから負けた
ではなく、
ロイシンと総量を揃えると、長期適応ではかなり戦える
ということになる。
古い trial でも、本体は「何を飲むか」より「ちゃんと足すか」
Candow 2006 でも、
- ホエイ
- ソイ
- プラセボ
を6週間のレジスタンストレーニングで比べた結果、
- 除脂肪組織量
- 筋力
はプロテイン補充で改善した。
ただし、
原料非依存
だった。
つまり、昔の時点でも
プロテインを足すこと自体が本体で、原料差はそこまで大きくない
と読める。
メタアナリシスで見ると、ソイは長期でほぼ負けていない
Messina 2018 は、
- 9研究
- 266名
をまとめたメタアナリシスだ。
ここでは、
- ソイ vs ホエイ:
- ベンチプレス 差なし
- スクワット 差なし
- 除脂肪体重 差なし
- ソイ vs その他の動物性タンパク質:
- ベンチ 差なし
- スクワット 差なし
- 除脂肪体重 差なし
となっている。
なので、少なくとも長期の筋肥大と筋力については、
ソイは動物性タンパク質に対して明確に劣るとは言えない。
ここは「植物性だから筋肉がつかない」という雑な言説をかなり削るデータだ。
じゃあ whey の優位はどこで残るのか
残るのは主にここだ。
- 急性MPS
- 少ない量でロイシン閾値を越えやすい
- 味、溶けやすさ、流通量
- 高齢者の同化抵抗性対策では有利そう
高齢者 + レジスタンストレーニングでホエイは
- 筋肉量:
- 標準化平均差 1.29
- 握力:
- 標準化平均差 1.46
- 歩行速度:
- 標準化平均差 0.73
と最上位にランクされている。
ただしこれは、
高齢者/サルコペニア文脈
で、
間接比較を多く含むネットワークメタアナリシス
だ。
若い筋トレ勢の筋肥大にそのまま
「だからホエイ圧勝」
と持ち込むのはやりすぎだ。
原料より先に見るべきは、この3つ
今回の PubMed をまとめると、優先順位はこうなる。
1. タンパク質総量
まずは1日の総量だ。
1.6g/kg 問題を検証した前回記事 でも書いた通り、
原料を気にする前に、
- 総摂取量
- 食事回数
- 継続性
を揃えた方が効果サイズは大きい。
2. ロイシン/EAA設計
ソイはホエイよりロイシン密度で不利になりやすい。
でも、
- 量を少し増やす
- ロイシン量を合わせる
で、長期差はかなり縮む。
だから「ソイはダメ」ではなく、
同じ1スクープで雑に比べると不利になりやすい
くらいに読む方が正確だ。
3. 消化・嗜好・実際に続くか
ホエイが理論上少し強くても、
- 乳糖で腹を壊す
- 味が苦手
- ヴィーガンで使えない
なら続かない。
その時点で実務上の勝者ではなくなる。
竹内の使い分け
ホエイ
- 最小コストで高品質タンパク質を入れやすい
- 少ない量でロイシンを確保しやすい
- トレ後や朝に使いやすい
一番「失敗しにくい」のはこれだ。
急性の同化シグナルを取りやすく、総量管理もしやすい。原料差で迷うくらいなら、まずは定番ホエイで必要量を満たす方が早い。
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ソイ
- ヴィーガン対応
- 乳製品が苦手でも使いやすい
- 長期ではロイシンと総量を揃えれば十分実用的
「植物性だから筋肥大に不利」と決めつける必要はない。
ソイでもタンパク質総量とロイシンを設計すれば、長期の筋肥大差はかなり小さい。乳製品が合わない人の現実的な選択肢。
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カゼイン
今回は direct な商品導線は置かないが、役割ははっきりしている。
- 寝る前
- 空腹を抑えたい減量期
- 分解抑制寄りの設計
なら依然として使い道がある。
今回のテーマは「どれが万能に最強か」ではなく、
どの指標で強いかが違う
と読むべきだ。
まとめ
ホエイ、カゼイン、ソイを effect size で整理すると、
- 急性MPS:
- ホエイ > ソイ > カゼイン
- ホエイ vs カゼイン:
- 安静時 +93%
- 運動後 +122%
- ホエイ vs ソイ:
- 運動後 +31%
- 12週 ソイ vs ホエイ:
- 除脂肪体重 +1.54kg
- 群差なし
- メタアナリシス:
- 除脂肪体重/筋力 差なし
となる。
だから結論はこうだ。
理論上いちばん強いのはホエイ。
でも、
長期の筋肥大を決める本体は、原料よりタンパク質総量とロイシン設計。
ホエイを飲めるなら、それがいちばんラク。
ただし、
- ソイは十分戦える
- カゼインは役割が違う
ので、
「ホエイ以外は無意味」
までは言えない。
本当に差が出るのは、
1日の総量が雑な人と、ちゃんと満たせている人の間だ。

