メラトニン0.3mg vs 3mg、MIT研究は本当は何を示したのか

メラトニン0.3mg vs 3mg、MIT研究は本当は何を示したのか

メラトニンの用量は、かなり揉めやすい。

「MIT研究では 0.3mg が正解」

という人もいれば、

「実際に効くのは 3mg 以上」

という人もいる。

この論争、両方とも半分正しい。

先に結論を書く。

  • MIT が示したのは、0.3mg が生理的補充に近いということ
  • でも、臨床効果の最大化だけを見ると 3mg 側にもまだ理がある
  • つまり「自然さ」と「効きの強さ」は別問題

私はこのテーマ、「低用量が正義」と一言で片づけるのは雑だと思っている。

MIT研究が本当に言ったこと

まず核になるのは、Zhdanova, Wurtman らの 2001 年論文 だ。

この試験では、50歳以上の不眠傾向のある被験者に、

  • プラセボ
  • 0.1mg
  • 0.3mg
  • 3.0mg

を就寝30分前に 1 週間ずつ入れている。

結果はかなり有名だ。

  • 0.3mg は睡眠効率を改善
  • しかも 夜間血漿メラトニンを正常範囲に戻した
  • 3mg も睡眠は改善
  • ただし 日中まで血漿メラトニンが高いまま残った
  • 低体温も起きた

ここから見えるのは、かなりはっきりしている。

MIT の主張は、

「0.3mg が一番効く」

というより、

「0.3mg が、生理的な夜間メラトニン濃度に近い」

ということだ。

この違いはかなり大きい。

0.3mg の強みは「補充」にある

この論文を丁寧に読むと、0.3mg の良さは「自然」だからではない。

足りなくなった夜間メラトニンを、過剰にしすぎずに戻す ところにある。

だから 0.3mg は、

  • 加齢で内因性メラトニンが落ちている人
  • 翌朝のだるさを避けたい人
  • まず低用量から試したい人

には、かなり筋がいい。

特に私が重要だと思うのは、

3mg は日中まで高値を引きずった

という点だ。

ここを無視して、「多い方が効くから3mgでいい」と言うのは雑だ。

ただし、0.3mg が「最強」とは言えない

ここで低用量派が一気に振り切ると、また話が崩れる。

2022年の高齢者研究 では、

  • 0.3mg
  • 5.0mg

をプラセボと比較している。

結果は、0.3mg は睡眠効率の改善がトレンドレベルだった一方、

5mg は生物学的な昼夜の両方で睡眠効率を有意に改善した。

しかも主に、

  • ステージ2ノンレム睡眠の増加
  • 中途覚醒の短縮

で効いている。

つまり、

睡眠効果そのものを取りに行くなら、高用量側がまだ強い場面はある

ということだ。

ここは MIT の低用量補充論と、普通に両立する。

なぜなら、問いが違うから。

2024年の用量反応メタアナリシスは、むしろ 4mg 前後を推す

さらに 2024年の用量反応メタアナリシス は、26本のRCT(ランダム化比較試験)をまとめて、

  • 入眠潜時の短縮
  • 総睡眠時間の延長

の用量反応を見ている。

その結果、効果は 4mg/day 前後でピーク と推定された。

しかも面白いのは、投与タイミングの方もかなり効く ことだ。

このメタ解析では、一般的な

「寝る30分前」

より、

「希望就寝時刻の3時間前」

の方が有利だと示唆している。

つまり、メラトニンの効きは

  • 用量
  • タイミング
  • 対象者の内因性分泌

の3つでかなり変わる。

ここを無視して「0.3mg vs 3mg」だけで勝敗をつけるのは、やはり粗い。

古典メタ解析も、高用量寄りのシグナルを出している

2013年のメタ解析 でも、

  • 入眠潜時: -7.06分
  • 総睡眠時間: +8.25分

と、全体としての効果は控えめだが有意だった。

しかもメタ回帰分析では、

  • 高用量
  • 長期間投与

の方が、入眠潜時と総睡眠時間の改善が大きい傾向が出ている。

この時点で、

「高用量は全部ムダ」

とは言えない。

じゃあ 3mg は古いのか

私はそこまで言わない。

1999年の高齢者原発性不眠研究 では、3mg メラトニン

  • 入眠後覚醒時間の低下
  • 総睡眠時間の増加
  • 睡眠効率の改善

が見えている。

だから 3mg は、

  • 古くてダメな用量
  • 間違った用量

ではない。

ただし、薬理学的用量である ことは忘れない方がいい。

MIT の論点はそこだ。

三島の結論

この論争は、目的を分ければかなり整理できる。

1. 生理的に近い補充をしたい

この目的なら、0.3mg にかなり理がある

MIT 研究が示したのはまさにこれだ。

夜のメラトニンを正常な夜間濃度範囲に戻しつつ、翌朝まで引きずりにくい。

2. 睡眠効果を強めに取りたい

この目的なら、3mg 前後にもまだ理がある

近年の RCT や用量反応メタアナリシスは、むしろ高用量側の臨床効果を示唆している。

ただしその代わり、

  • 残存効果
  • 体温低下
  • 翌朝の持ち越し

を受け入れる話になる。

だから私の結論はシンプルだ。

MIT は間違っていない。0.3mg は「生理的補充」として筋がいい。

でも同時に、

3mg を完全否定する理由もない。臨床効果だけ見れば、むしろ強い場面がある。

実務で言えば、

  • 初回は 0.3mg
  • 足りなければ 1-3mg
  • ただし「多いほど自然」ではない

この順番が一番まともだと思う。

メラトニン自体を毎日使わない組み立ては、以前の メラトニンなしで眠る睡眠サプリスタック でも別に整理している。今回はその反対側で、あえて使うなら何mgが筋がいいか を MIT 論文ベースで切った記事だ。

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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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