βアラニンは持久系に効く?1-4分のパフォーマンス改善を検証
βアラニンは「持久力サプリ」として売られやすい。
でも PubMed を並べると、ここはかなり誤解されやすい。
βアラニンがハマりやすいのは、
- マラソンみたいな長時間運動
ではなく、
- 1-4分前後
- 広めに見ても 0.5-10分
の高強度努力だ。
つまり、これは
長い有酸素のサプリというより、酸性化しやすい持久系のサプリ
と考えた方がズレにくい。
竹内の結論を先に書く。
βアラニンには signal がある。だが、ハマる競技時間がかなり限定される。
先に結論
| 論点 | 数字 | 竹内の評価 |
|---|---|---|
| 全体メタ | ES 0.18 | 小さいが有意 |
| trained men meta | ES 0.39 | 小〜中程度 |
| 4-10分の努力 | ES 0.55 | ここが主戦場 |
| capacity test | ES 0.50 | 効きやすい |
| time trial | ES 0.11 | 実戦だと地味 |
| 2000m rowing | -2.9〜-6.4秒 | 数秒勝負ならあり |
| 用量・期間 | 5.6-6.4g/日を4週 | 現実ライン |
要するに、
- 400-1500m走
- 2000m row
- 1-4分の全力インターバル
には筋がいい。
逆に、
- 長時間 endurance
- Zone 2 メイン
なら優先度は下がる。
一番大事なのは「capacity と performance は別」という話
2017年の systematic review and meta-analysis は、βアラニンの基準点として一番使いやすい。
- 40 studies
- 1461 participants
で、まず全体の effect size は
- ES 0.18
- 95% CI 0.08 to 0.28
だった。
つまり、ゼロではないが派手でもない。
ただ、この論文の本当に大事な点は別にある。
運動時間が moderator になっていて、特に 0.5-10分 の枠では、
- exercise capacity: ES 0.50
- performance: ES 0.11
と差がついた。
ここはかなり重要だ。
exercise capacity は、時間切れまでこらえるとか、疲労困憊までの持続時間みたいな open-endpoint のテスト。
performance は、タイムトライアルや実戦に近い closed-endpoint のテストだ。
つまり βアラニンは、
「粘れるようになる」方では効きやすい。
でも、
実戦のタイムに換算すると改善幅は小さくなる。
ここを分けずに「持久力が上がる」と言うのは雑だなと思う。
trained 男性に絞ると、少し見栄えは良くなる
2024年の meta-analysis は、trained young male に絞っている。
- 18 studies
- 331 participants
対象をそろえると、全体 effect size は
- ES 0.39
- 95% CI 0.09 to 0.69
になった。
全体メタの 0.18 よりは一段大きい。
さらに効きやすい条件も見えている。
- 4 weeks: ES 0.34
- 4-10 min: ES 0.55
- 5.6-6.4 g/day: ES 0.35
ここから竹内が読むのは単純だ。
βアラニンは、「4週間以上」「5.6-6.4g/日」「4-10分の高強度努力」で一番ハマりやすい。
逆に言えば、
- 飲み始めて3日
- なんとなく低用量
- 20分以上の有酸素
では期待しすぎない方がいい。
実戦に近い 2000m row だと、改善は「数秒」
βアラニンの話が盛られやすいのは、time to exhaustion の数字だけが一人歩きするからだ。
実戦に近い 2000m rowing の RCT を見ると、見え方がだいぶ変わる。
まず、はっきりしなかった試験
2013年の rowing trial では、well-trained male rowers 16人 に 28日 補給している。
結果は、
- βアラニン群: -2.9 ± 4.1秒
- placebo群: +1.2 ± 2.9秒
- 群間: p = .055
- ES = 0.20
だった。
つまり、
少し速くなっていそうだが、決め切れない。
これが実戦寄りアウトカムのリアルだ。
もう一つの rowing 試験
同じく 2013年の別 trial では、βアラニン 6.4g/日を4週間 で
- 6.4 ± 8.1秒
の改善が reported されている。
ただしこちらは magnitude-based inference の書き方で、今の厳しめ基準で読むなら少し割り引きたい。
それでも、全体としてのレンジ感は見えてくる。
2000m row みたいな 6-7分競技で、改善しても数秒〜1%台くらい。
このくらいが現実的だ。
time to exhaustion だと、数字は大きく見えやすい
2015年の masters female cyclists trial は、この対比がかなり分かりやすい。
28日補給で、
- TTE: +23%
- total work completed: +21%
とかなり大きい数字が出ている。
これは嘘というより、
open-endpoint test だから大きく見える
という話だ。
レースは「いつやめるか」ではなく「決まった距離を何秒で行くか」なので、ここをそのまま実戦パフォーマンスに変換しない方がいい。
だから βアラニンは、
- lab test で効いた
と
- 競技成績が大きく伸びた
を分けて見るべきだ。
つまり、βアラニンは「長い有酸素」より「酸性化ゾーン」
βアラニンの理屈は、筋カルノシンを増やして H⁺ buffering を助けることにある。
だから一番ハマるのは、
- 乳酸がたまりやすく
- 呼吸がきつく
- でも完全スプリントほど短すぎない
中間ゾーンだ。
ISSN の position stand でも、
- 4-6g/日を4週間
- 効果が出やすいのは 1-4分
と整理されている。
逆に、
- フルマラソン
- 長い Zone 2
- 純粋な最大筋力
では優先度が落ちる。
長時間有酸素そのものの組み方は、先に Zone 2トレーニングの記事 を読むと整理しやすい。
用量は 5.6-6.4g/日が本線
実務で一番使いやすいのはここだ。
- 5.6-6.4g/日
- 少なくとも4週間
これがいちばんエビデンスに寄る。
副作用は主に paresthesia(ピリピリ感)。
ただしこれは危険というより不快感寄りで、
- 1.6g前後に分割
- 食後に分ける
でかなり減らせる。
つまり βアラニンは、
acute pre-workout というより、4週間かけて仕込む chronic supplement
だ。
実務ならどんな人に向くか
竹内ならこう切る。
向いている人
- 400-1500m をやる
- 2000m row をやる
- 1-4分の全力インターバル が競技や練習の中心
- 数秒差に価値がある
優先度が低い人
- 長時間の LSD / Zone 2 がメイン
- レース時間がかなり長い
- まず睡眠やトレーニング設計の方がボトルネック
この手の buffering 系サプリは、ハマる人にはちゃんとハマる。
でも競技時間がズレると、一気に微妙になる。
今の時点で商品として選ぶなら
今回の論点だと、分割しやすくて 4週間回せること が大事だ。
1粒750mgで分割しやすい。βアラニンは5.6-6.4g/日を4週間が本線なので、ピリピリ感を避けながら小分けに入れたい人向け。
iherb.com
(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)
ただし、毎日 5.6-6.4g を狙うなら粒数は増える。
その手間を許容できるかは先に考えた方がいい。
竹内の結論
βアラニンの効果サイズを PubMed で読むと、こうなる。
- 全体では小さいが有意(ES 0.18)
- trained な高強度努力では 小〜中程度(ES 0.39)
- 一番ハマるのは 4-10分、特に 1-4分寄り
- capacity test では効きやすいが、time trial では縮む
- 実戦の改善幅は 数秒〜1%台 と読むのが安全
最終評価はこれだ。
βアラニンは「持久力サプリ」というより、「1-4分の酸性化ゾーン向けサプリ」。
競技時間がハマるならあり。ハマらないなら優先度は一気に落ちる。
