Sinclairがメトホルミンをやめた理由は「お腹の事情」だった
世界一のバイオハッカーも「お腹の事情」でサプリを変える
David Sinclair。ハーバード大学の遺伝学教授で、老化研究の第一人者。
NMNやレスベラトロールを何年も前から飲み続け、処方薬のメトホルミンまで「長寿目的」で取り入れていた人。
そのSinclairが、2025年6月のPeter Diamandisとの対談で、あっさりこう言った。
「メトホルミンはお腹に合わなかった。ベルベリンに替えた」
聞いたとき、思わず笑ってしまった。
世界トップレベルの研究者が、最先端の長寿薬を「お腹の調子が悪いから」やめた。その判断が、すごく人間的で、すごく正直だと思ったから。
メトホルミンの「お腹問題」は、実はかなり多い
メトホルミンは2型糖尿病の第一選択薬。アンチエイジング界でも「AMPK活性化」の目的で使う人がいる。
ただ、2017年のレビュー論文(Bonnet & Scheen, Diabetes Obes Metab)によると、メトホルミンのGI(胃腸)副作用はかなりの割合で発生する。
主な症状は:
- 下痢(最も多い)
- 吐き気
- 膨満感
- 腹部不快感
論文の表現を借りると「a rather large proportion of patients cannot tolerate metformin in adequate amounts because of its associated gastrointestinal adverse events」。つまり、かなり多くの患者が胃腸の副作用でメトホルミンを十分な量で続けられない。
Sinclairのように、何年も飲み続けた人でも「お腹がつらい」と感じることがある。
正直、これを聞いて少し安心した。「続けられないものを無理に続ける必要はない」というのは、研究者の立場からしても正しい判断なんだな、って。
ベルベリンは「天然のメトホルミン」と呼ばれる理由
ベルベリンは、オウレン(黄連)やメギ科の植物に含まれるアルカロイド。メトホルミンと同じAMPK経路を活性化する。
2021年のメタアナリシス(46のRCT)では、ベルベリンの血糖コントロール効果が確認されている。
| 指標 | 平均変化量 |
|---|---|
| HbA1c | -0.73% |
| 空腹時血糖 | -0.86 mmol/L |
| HOMA-IR | -0.71 |
| 中性脂肪 | -0.5 mmol/L |
| LDL | -0.86 mmol/L |
2023年のプラセボ対照メタアナリシス(20のRCT、n=1,761)でも同様の結果。空腹時血糖 -0.52 mmol/L、HOMA-IR -0.85の有意な改善が報告されている。
メトホルミンと「同等」とまでは言えないけれど(そもそも医薬品とサプリメントは比較対象が違う)、AMPK活性化というメカニズムが共通しているのは事実。
Sinclairが「替えても大丈夫」と判断できた背景には、このエビデンスがあるんだと思う。
ベルベリンも完璧じゃない。でも「続けられる」
正直に書くと、ベルベリンにもGI副作用はある。
2008年のRCTでは、34.5%の患者が一過性の胃腸症状を経験している。
ただ、ポイントは**「一過性」**という部分。メトホルミンのGI副作用は長期間続くことがあるのに対して、ベルベリンの場合は体が慣れれば収まることが多い。
そして何より、ベルベリンは:
- 処方箋が不要(iHerbで買える)
- 低用量から始められる(250mgから調整可能)
- 食事と一緒に摂れば負担が軽くなる
Sinclairが「続けやすさ」を理由に切り替えたのは、私にはすごく共感できる判断だった。
2025年、Sinclairが変えたのはベルベリンだけじゃない
実は、メトホルミン→ベルベリンの切り替えと同時期に、Sinclairはスタック全体を見直している。
やめたもの
タウリン
2023年にScience誌に載った論文で「タウリン不足が老化を加速する」と話題になった成分。でもSinclairは中止。
TMG(トリメチルグリシン)
NMNを摂ると体内のメチル基が消費されるため、その補充目的で飲んでいた。これも中止。
追加したもの
フィセチン 500mg/日
ケルセチンから切り替え。老化細胞を除去するセノリティクス目的。
ナットウキナーゼ
日本の納豆由来の酵素。動脈プラークへの作用を期待して追加。
ラパマイシン(年4回程度)
Bryan Johnsonが中止した一方で、Sinclairは少量のパルス投与を開始。面白い対比。
残したもの(コアスタック)
- NMN 1g + レスベラトロール 1g(朝、脂質と一緒に)
- フィッシュオイル
- ビタミンD3 + K2
- スペルミジン 1-2mg
- ALA(αリポ酸)
この変更から見えてくる「Sinclairの判断基準」
一連の変更を俯瞰すると、ある傾向が見える。
「エビデンスが微妙なものは切り、体感で合わないものもやめる」
タウリンは話題の論文があったけど、自分の判断で中止。TMGもNMNとの理論的関係はあったけど、実感がなければ切る。メトホルミンはエビデンスは強いけど、お腹がつらければやめる。
これって、すごくQOL重視の考え方だと思う。
ハーバードの教授がこういう判断をするということ自体が、「続けられないものを無理に飲み続ける必要はない」というメッセージだと私は受け取った。
私がSinclairの変更から学んだこと
1. 「お腹の声」を無視しない
サプリを選ぶとき、つい論文の数字ばかり追いかけてしまう。でもSinclairでさえ、最終的には「お腹に合うかどうか」で判断を変えた。
体感を軽視しない。これは、私がずっと大切にしてきたことでもある。
2. スタックは「引き算」していい
Sinclairはタウリンもトリメチルグリシンもやめた。追加するだけじゃなく、引くこともできる。
「たくさん飲んでいるほうが偉い」わけじゃない。三島やAttiaに怒られそうだけど、私は「少ないスタックで続ける」方がいいと思ってる。
3. n=1を恐れない
Sinclairのプロトコル変更は、彼自身のn=1(個人の体験データ)に基づいている。
もちろん、n=1だけで判断するのは危うい。でも、エビデンスを調べた上で、最後は自分の体で判断する。この順番が大事なんだと思う。
私のベルベリンとの付き合い方
実は私も、Sinclairの話を聞いてからベルベリンを試している。
250mgから始めて、2週間かけて500mg×2回/日に。朝食後と夕食後に飲むようにしたら、胃腸の不快感はほとんどなかった。
体感としては…正直、劇的な何かがあるわけじゃない。でも「お腹が張る」とか「下す」とかのネガティブな体感もない。それだけで十分だと思ってる。
私にとっては「害がないこと」「続けられること」が最優先。数値の変化より、毎朝の味噌汁のあとに自然にカプセルを飲めている、という事実の方が大事。
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まとめ:「お腹の事情」は、立派な理由になる
Sinclairの2025年プロトコル変更は、一見すると「最先端の研究者がスタックを最適化した」という話に見える。
でも、根っこにあるのは**「お腹がつらかった」**という、すごくシンプルな理由。
世界トップの長寿研究者ですら、最終的には「続けられるかどうか」で判断している。
だったら、私たちが「お腹の調子」や「続けやすさ」でサプリを選ぶのは、まったくおかしくない。
「続けられることが、最強のエビデンス」。
Sinclairの変更を見て、この考えにますます自信が持てるようになった。
関連記事としては、より一般化した整理なら Sinclair式ベルベリン、メトホルミンから切り替える理由と注意点、同時期のスタック変化全体を見るなら ラパマイシンはもう古い?Attia・Johnson・Sinclairの2026年アップデート もつながります。

