減量は週0.5%と1%どっちがいい?筋量保持を効果サイズで検証する
「減量は週1%でガンガン落とした方が早い」
これは体重だけ見ればそうだ。
でも、
筋肉まで守りたいなら話は変わる。
今回の問いはシンプルだ。
週0.5%減と週1%減では、どっちが筋量を壊しにくいのか。
PubMed を並べると、竹内の結論はこうなる。
筋量保持を最優先するなら、週0.5-0.7%減が基本。
1%/週も短期では回る。
ただし、
- 除脂肪体重の増加は出にくい
- 同時に筋力を伸ばす余地も減る
- タンパク質とレジスタンストレーニングが甘いと崩れやすい
だから、
急ぐ減量ほど、筋肉には不利
と読んだ方がいい。
先に結論
| 論点 | 数字 | 竹内の評価 |
|---|---|---|
| ゆっくり減量の目標 | 0.7%/週 | 実質これが「0.5%寄り」 |
| 速い減量の目標 | 1.4%/週 | 実測は約1%/週 |
| 体重減少 | -5.6% vs -5.5% | 体重はどちらも落ちる |
| 体脂肪量 | -31% vs -21% | ゆっくりが有利 |
| 除脂肪体重 | +2.1% vs -0.2% | ゆっくりが有利 |
| 上半身筋力 | +12% vs +6% | ゆっくりが有利 |
| 筋トレ+赤字の除脂肪体重 | 効果サイズ -0.57 | 赤字は筋量増を削る |
| 筋トレ+赤字の筋力 | 効果サイズ -0.31 | 有意差なし |
| 除脂肪体重の増加停止目安 | 約500 kcal/日の赤字 | 赤字が深いと止まる |
| 高タンパク+減量 | 除脂肪体重 -1.6kg vs -0.3kg | タンパク質の影響は大きい |
要するに、
- 脂肪だけ見れば速い減量も回る
- 筋量保持ではゆっくり減量が有利
- でもペースだけではなくタンパク質と筋トレが本体
ということだ。
「週0.5% vs 1%」に一番近い直接的エビデンスはこれ
Garthe 2011 は、ここにかなり正面から答えている。
エリートアスリートを、
- ゆっくり減量:
- 0.7%/週が目標
- 速い減量:
- 1.4%/週が目標
にランダムに割り付けた試験だ。
厳密には 0.5% vs 1% そのものではない。
でも実務的には、
- slow 側は 0.5-0.7%/週レンジ
- fast 側は 1%/週前後レンジ
の議論としてかなり使える。
しかも実際に達成した週あたりの減量幅は、
- ゆっくり:
- 0.7 ± 0.8%/週
- 速い:
- 1.0 ± 0.4%/週
だった。
同じくらい体重を落としても、体組成はゆっくりの方が良かった
この試験で面白いのは、
体重はどちらも同じくらい落ちている
ことだ。
- slow:
- -5.6%
- fast:
- -5.5%
でも中身が違った。
| 指標 | ゆっくり | 速い |
|---|---|---|
| エネルギー摂取の削減 | -19% ± 2% | -30% ± 4% |
| 体脂肪量 | -31% ± 3% | -21% ± 4% |
| 除脂肪体重 | +2.1% ± 0.4% | -0.2% ± 0.7% |
ここがかなり重要だ。
ゆっくり減量は、同じくらい体重を落としながら、より脂肪を削って、除脂肪体重はむしろ増えた。
一方で速い減量は、
体重は落ちたが、筋量側の上積みが消えた。
これが今回のコアメッセージになる。
最大挙上重量やパワーを伸ばしたいなら、速い減量はやや不利
同じ Garthe 系列の 12か月追跡調査 でも、
介入期間中は
- 除脂肪体重:
- +2.0% ± 1.3%
- vs +0.8% ± 1.1%
- 上半身筋力:
- +12% ± 2%
- vs +6% ± 2%
で、ゆっくり側が有利だった。
ただし 12か月後には群差が消えた。
ここから読めるのは、
短期の減量局面ではゆっくりが有利。
でも、
長期の体組成は減量ペース単独では決まらない。
ということだ。
要するに、
- コンテスト準備
- 階級調整
- 夏前の短期減量
みたいな場面ではゆっくり側の優位は確かだが、
1年スパンの最終結果は、その後の食事やトレーニングの方が大きい。
なぜ速い cut が筋量に不利なのか
単純で、
赤字が深いから
だ。
レジスタンストレーニングをしていても、エネルギー赤字をかけると
- 除脂肪体重の増加:
- 効果サイズ -0.57
で削られる。
一方で、
- 筋力の増加:
- 効果サイズ -0.31
- 有意差なし
だった。
つまり、
赤字を深くすると、まず止まりやすいのは筋量の増加。
重量そのものは、神経適応でしばらく持つ。
このズレがある。
さらにメタ回帰分析では、
約500 kcal/日のエネルギー赤字で除脂肪体重の増加が止まる目安
が示されている。
だから実務的には、
- まず筋量を増やしたい:
- 大きいエネルギー赤字は切らない
- 減量中に筋量維持したい:
- 赤字を深くしすぎない
という話になる。
ただし、ペースだけ見ても半分しか見えていない
ここで終わると雑だ。
減量ペースより大きい修正因子がある。
1. タンパク質
Mettler 2010 では、
アスリートを通常摂取量の 60% まで落とした短期減量で、
- protein ~1.0 g/kg
- protein ~2.3 g/kg
を比較した。
結果は、
- 総体重減少:
- -3.0 kg vs -1.5 kg
- 除脂肪体重の減少:
- -1.6 kg vs -0.3 kg
だった。
つまり、
高タンパクは、減量中の除脂肪体重保持でかなり効く。
ここを外して「週0.5%が正義」とだけ言うのは、かなり片手落ちだ。
2. トレーニング
Longland 2016 はさらに極端だ。
- 約40%のエネルギー赤字
- 高強度のエクササイズ 6日/週
- protein:
- 1.2 g/kg/day
- 2.4 g/kg/day
で比べると、
- 除脂肪体重:
- +0.1 ± 1.0 kg
- +1.2 ± 1.0 kg
- 体脂肪量:
- -3.5 ± 1.4 kg
- -4.8 ± 1.6 kg
になった。
かなりキツい赤字でも、
- トレーニングを外さない
- タンパク質を高く保つ
と、除脂肪体重は守れるどころか増えることもある。
なので、今回の問いへの答えは、
ゆっくりの方が有利。
でも、
ペースよりタンパク質とレジスタンストレーニングの管理の方が効果サイズは大きい
でもある。
じゃあ実務ではどう切るか
竹内ならこう分ける。
筋量維持が最優先
- 週0.5-0.7%減
- タンパク質は高め
- 筋トレのボリュームは落としすぎない
この設計がいちばん無難だ。
特に
- 既にかなり絞れている
- 筋量を見せたい
- パフォーマンスも維持したい
なら、急ぎすぎる理由は薄い。
短期で落とす必要がある
- 週1%前後
も現実には使う。
ただしその場合は、
- 除脂肪体重の増加は期待しない
- パフォーマンスの上積みも狙いすぎない
- タンパク質をかなり雑にしない
が前提になる。
速い減量でやりがちなのは、
- エネルギー赤字だけ深い
- タンパク質不足
- 有酸素だけ増やす
- 筋トレのボリュームが崩れる
の組み合わせだ。
これが一番筋肉を削る。
減量中にまず固定したいもの
減量ペースより先に、ここを固定したい。
- タンパク質
- レジスタンストレーニング
- 睡眠
- エネルギー赤字の深さ
特にタンパク質は、1.6g/kg で十分かを整理した前回記事 より、減量中は少し上振れ気味に考えた方がいい。
減量ペースより先に固定したいのはタンパク質。減量中に2.0g/kg以上を安定させるなら、結局ホエイがいちばんラク。
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まとめ
週0.5%減と1%減を効果サイズで整理すると、
- 直接比較試験に最も近い Garthe では
- 体重は -5.6% vs -5.5%
- 体脂肪量は -31% vs -21%
- 除脂肪体重は +2.1% vs -0.2%
- 追跡調査では
- 介入中の差は確か
- 12か月後の差は消失
- メタアナリシスでは
- エネルギー赤字下の除脂肪体重増加は 効果サイズ -0.57
- 約500 kcal/日 を超えると増やしにくい
- 高タンパクでは
- 除脂肪体重の減少 -1.6 kg vs -0.3 kg
- あるいは +0.1 kg vs +1.2 kg
となる。
だから結論はこうだ。
筋量保持を最優先するなら、週0.5-0.7%減が基本。
1%/週も使える。
でもそれは、
「急ぐ代わりに、筋量側の期待値を少し捨てるペース」
だと思っておいた方がいい。
