子供の気になる行動は体の使い方で改善する?理学療法士が教える家庭でできるエクササイズ

子供の気になる行動は体の使い方で改善する?理学療法士が教える家庭でできるエクササイズ

5歳の息子が保育園で「落ち着きがない」「友達とのトラブルが多い」と言われるようになった。

家でも、急に怒り出す、切り替えが難しい、集中が続かない。「発達が気になる」とまでは言われてないけど、「何かできることはないかな」と思っていた。

そんなとき、SNSで理学療法士が書いた本『子どもの気になる言動が改善する からだの使い方』を見かけた。

「体の使い方で行動が変わる?」と半信半疑だったけど、エビデンス系の情報を追うようになってから、「感覚統合」や「運動と脳の関係」の研究があることは知っていた。

さっそく本を読んで、息子と娘で試してみた。エビデンスも調べてみた。

今回は、この本の内容と科学的根拠、そして実際に家庭で試してみた感想を、ワーママ目線で正直にレビューする。

本の概要:体の使い方で行動が変わる理論

『子どもの気になる言動が改善する からだの使い方』は、理学療法士・スポーツ専門家が書いた本。2025年12月にディスカヴァー・トゥエンティワンから出版された。

対象となる子供の行動

この本が対象にしているのは、以下のような「気になる行動」を持つ子供たち:

  • 落ち着きがない
  • 忘れっぽい
  • 切り替えが難しい
  • 突然怒る
  • 感情のコントロールが難しい
  • 集団行動が苦手
  • 友達との関係構築が難しい

うちの息子にも当てはまる項目がいくつかあった。

本の主張:姿勢・動きが脳に影響する

本の主張はシンプル:

悪い姿勢、不適切な座り方、ぎこちない動きが、脳への情報伝達と発達を妨げる。

体の使い方を変える簡単なエクササイズで、行動が改善する。

著者は、週1回3ヶ月の練習で変化が見られると述べている。

紹介されているエクササイズ

本で紹介されているエクササイズは、特別な道具が要らず、家でもできるもの:

  • グーパージャンプ: 手をグー・パーと開閉しながらジャンプ
  • タオルの上を歩く: タオルを踏まないように丁寧に歩く
  • 言葉に合わせてポーズ: 「木」「動物」など言葉に合わせて体で表現する

屋内でも屋外でもできる。保育園や学校に行く前、寝る前のちょっとした時間でもできそう。

「これなら忙しいワーママでも続けられるかも」と思った。

でも、本当にエビデンスはあるのか?

三島に「この本、エビデンス的にどうなの?」と聞いてみた。

エビデンス視点:感覚統合療法の科学的根拠

三島から教えてもらったところ、本の内容は「感覚統合療法(Sensory Integration Therapy)」の考え方に基づいているらしい。

感覚統合療法は、米国の作業療法士A. Jean Ayres博士が1970年代に提唱した理論で、感覚情報の処理が適切にできないことが、行動や学習の困難につながるという考え方。

では、この療法に科学的根拠はあるのか?

三島が「これ読んでみて」と送ってくれた論文をいくつか確認してみた。

米国小児科学会の立場:エビデンスは限定的

まず見つけたのが、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)の2012年の声明(PMID: 22641765)

結論を要約すると:

感覚統合療法の有効性に関するエビデンスは限定的で決定的ではない。

感覚処理障害は一般的に診断すべきではない(普遍的に受け入れられた診断枠組みがないため)。

感覚統合療法は包括的治療計画の一部としては受け入れられる可能性があるが、親には研究の限界を伝えるべき。

つまり、感覚統合療法には「一定の効果はある可能性があるが、決定的な証拠はない」というのが小児科学会の見解。

Ayres感覚統合療法のシステマティックレビュー

次に、2018年のシステマティックレビュー(PMID: 29280711)を確認した。

このレビューは、Ayres感覚統合療法(ASI)の有効性を評価したもの。対象は自閉症児。

結果:

  • 強いエビデンス: Goal Attainment Scaling(個別目標達成尺度)で測定した機能と参加の目標達成で肯定的な結果
  • 中程度のエビデンス: 自閉症行動の改善、自己ケア活動での介助減少
  • 新興エビデンス(不十分): 遊び、感覚運動、言語スキル、社会的スキル

つまり、「個別目標の達成」には効果があるが、汎用的な効果については証拠が不十分ということ。

運動療法とADHD:最新のネットワークメタアナリシス

三島が「感覚統合療法だけじゃなくて、運動と子供の行動の関係も調べたよ」と、最新の論文を教えてくれた。

2025年のネットワークメタアナリシス(PMID: 41355340)は、ADHD児への6種類の運動介入の効果を比較した研究。

26のRCT、1,276人のADHD児を対象にした大規模な分析。

結果:

運動の種類抑制制御実行機能粗大運動スキル
マインドボディ運動(MBM)◎(SMD = -2.26)○(SMD = -1.59)
ボールゲーム(BG)--◎(SMD = -2.08)
ニューロフィードバック(NFT)
有酸素運動(AT)--
サーキットトレーニング(CIR)--
AI訓練--

**マインドボディ運動(MBM)**が最も効果的だった。

抑制制御の改善効果はSMD = -2.26。これはかなり大きい効果サイズ、と三島が教えてくれた。

マインドボディ運動には、ヨガ、太極拳、体操などが含まれる。

つまり、「体を使った運動」は、子供の行動や実行機能の改善に一定の効果がある、というエビデンスは存在する。

ただし、三島が「本に書いてある『週1回3ヶ月で効果が出る』は、研究では確認されてないよ」と指摘していた。多くの研究では週2-3回以上の頻度で行われている。

実践してみた:5歳息子と3歳娘で試してみた

エビデンスを確認した上で、本で紹介されているエクササイズを息子と娘で試してみた。

グーパージャンプ

やり方: 手をグー・パーと開閉しながらジャンプする。

息子(5歳): 最初は「なにこれ?」という顔だったが、「ジャンプしながらグーパー!」と声をかけたら楽しそうにやり始めた。リズムに乗るとどんどん続けられる。

娘(3歳): 「ぴょんぴょん!」と言いながら飛び跳ねるのが楽しいらしく、グーパーを忘れて飛ぶだけになっていた。でも、それでも体を動かすきっかけにはなった。

感想: 朝の身支度の前に「グーパージャンプ10回!」とやると、目が覚めて動きやすくなる気がする。

タオルの上を歩く

やり方: タオルを床に置いて、踏まないように丁寧に歩く。

息子(5歳): 「落ちたらダメゲーム」と言ったら、真剣な顔で歩き始めた。バランスを取りながら慎重に歩く様子は、普段の「走り回る」姿とは全然違った。

娘(3歳): すぐに「できた!」と言ってタオルを踏んでしまう。でも、「もう1回!」と何度もチャレンジしていた。

感想: バランス感覚を養うには良さそう。ゲーム感覚でできるので、子供も飽きずに続けられる。

言葉に合わせてポーズ

やり方: 「木」「動物」など言葉に合わせて体で表現する。

息子(5歳): 「木!」と言ったら両手を上に伸ばして静止。「ライオン!」と言ったらガオーっと吠える。体で表現するのが楽しいらしく、自分から「次は何?」と聞いてきた。

娘(3歳): 兄の真似をして同じポーズを取る。言葉の意味がわかってないこともあるけど、体を動かすことを楽しんでいる。

感想: 想像力と体の動きをつなげる練習になる。保育園に行く前の「今日は何になる?」と聞くのが日課になった。

3週間続けてみて感じた変化

息子(5歳): 朝の身支度がスムーズになった。

「グーパージャンプしたから目が覚めた」と本人も言っている。

保育園の先生からは「最近落ち着いて座れる時間が増えましたね」と言われた。これが一番嬉しかった。

娘(3歳): まだ3歳なので効果は分かりにくいが、朝の運動を習慣にするきっかけにはなった。

私の感想: 劇的な変化があったわけではない。

でも、「朝の運動習慣」として続けやすいのは確か。週1回だと忘れてしまうので、週3-4回のペースで続けている。

ワーママ視点での評価:続けやすさと現実性

この本を、ワーママ目線で評価してみる。

良かった点

ポイント評価
特別な道具が不要○ タオルだけでできる
短時間でできる○ 1回5-10分
子供が楽しめる○ ゲーム感覚でできる
朝の習慣にしやすい○ 身支度前のルーティンに組み込める

気になった点

ポイント評価
週1回で効果が出るか△ エビデンス的には週2-3回が推奨
効果の個人差△ すべての子供に効くわけではない
エビデンスの限界△ 感覚統合療法のエビデンスは限定的
続ける動機づけ△ 親が声をかけ続ける必要がある

どんな家庭に向いているか

この本・エクササイズが向いている家庭:

  • 子供の「落ち着きのなさ」「切り替えの難しさ」が気になっている
  • 家で手軽にできる運動習慣を作りたい
  • 薬や専門機関に頼る前に、まず家でできることを試したい
  • 朝や寝る前のルーティンに運動を組み込みたい

向いていない家庭:

  • 発達障害の診断が出ていて、専門的な療育が必要なケース
  • 短期間で劇的な変化を期待している
  • 親が継続的にサポートする時間が取れない

まとめ:完璧を求めず、試してみる価値はある

『子どもの気になる言動が改善する からだの使い方』は、感覚統合療法と運動療法の考え方を、家庭で実践しやすい形にまとめた本。

エビデンスは限定的だが、試してみる価値はある。

米国小児科学会も「包括的治療計画の一部としては受け入れられる」としている。つまり、「これだけで治る」わけではないが、「他の方法と組み合わせる」なら有用ということ。

私自身、息子の行動が劇的に変わったわけではないが、朝の運動習慣を作るきっかけになった

週1回ではなく週3-4回のペースで続けることで、少しずつ変化を感じている。

完璧を求めず、できる範囲で続けてみる。

それがワーママにとっての現実的なアプローチだと思う。

子供の「気になる行動」に悩んでいる親御さんには、まず一度試してみることをおすすめする。

今回紹介した本

参考文献

Sources:

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桂木 瑛

エビデンス沼のワーママ。信頼できるインフルエンサー経由の情報を追い、エビデンスあるものを試して体感で続けるか決めるスタイル。

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