血清マグネシウムが正常でも不足する?細胞内を見る赤血球検査の意味
マグネシウム不足を疑って採血するとき、普通はまず 血清マグネシウム を見る。
これは間違っていない。重度の低Mg血症や緊急対応が必要な状態を拾うには、まず血清だ。
ただし、ここで話が終わると雑になる。
なぜなら、マグネシウムの主戦場は細胞内 だからだ。
先に結論を書く。
- 血清Mgは重要だが、体内 Mg ステータス全体の代理としては弱い
- RBC Mg は細胞内寄りなので、正常血清でも低い例を拾いやすい
- ただし RBC Mg だけで完璧という話でもない
つまり、RBC Mg の方が信頼できる という言い方は半分正しい。正確に言い直すなら、血清 Mg 単独より、細胞内不足の補助線として使いやすい だ。
なぜ血清Mgだけだと弱いのか
2015年のPhysiological Reviews総説 がまず大前提を置いている。Mg は 細胞内で2番目に多い陽イオン だ。
つまり、マグネシウムは基本的に細胞内に多い。
さらに 潜在性マグネシウム欠乏のレビュー では、総体内 Mg の99%超は細胞内 と整理している。
ここから見えてくる問題はシンプルだ。
血清Mgは、体内 Mg のうちごく小さい外液区画しか見ていない。
しかも血清 Mg は、腎臓や骨、細胞内外シフトの調整でかなり守られる。だから、体内がじわじわ不足していても、血清は最後まで “正常っぽく” 見えることがある。
この意味で、血清 Mg は
- 低すぎるときは重要
- でも正常だから十分とは限らない
という指標だ。
RBC Mg が注目される理由は、細胞内を少し見に行けるから
RBC Mg は、赤血球内の Mg を測る。
当然ながら、赤血球は全身の組織そのものではない。筋肉でも脳でもない。
それでも血清よりは、外液ではなく細胞内寄りの情報 を持っている。
2011年のシステマティックレビュー では、Mg のバイオマーカーを補充/欠乏試験で見直していて、
- 血清/血漿 Mg
- RBC Mg
- 尿中 Mg 排泄量
は食事操作に反応するとしている。
ここが重要だ。
RBC Mg は「怪しい代替指標」ではなく、少なくとも 操作に反応するバイオマーカー としては成立している。
一番分かりやすいのは、高齢者の「血清は全員正常、でもRBCは半分以上低い」データ
2010年の高齢者外来研究 は、かなり象徴的だ。
246人の高齢外来患者で、
- 血清 Mg は全員正常
- それでも RBC Mg は 57% で低値
だった。
しかも血清と RBC Mg の関係は非常に弱いとされている。
この論文だけでも、血清が正常だから Mg は足りている という読み方が危ういことはかなり伝わる。
もちろん、ここで飛びつきすぎてもいけない。著者ら自身、RBC Mg と臨床パラメータの相関は強くなかったと書いている。
つまりこの論文が示したのは、
- RBC Mg は血清と違う情報を持つ
- ただし、その差がそのまま臨床判断を全部決めるわけではない
ということだ。
補充しても血清は動かず、RBCだけ動く例がある
RBC Mg の価値が一番伝わりやすいのは、補充試験だ。
1992年のDiabetes Care論文 は、2型糖尿病患者で赤血球内の遊離Mgを見ている。
ここでは、
- 糖尿病患者で RBC Mg は低い
- 8週間の経口 Mg 補充で RBC Mg は正常化
- でも 血清 Mg は有意に変わらない
と報告している。
この形はかなり示唆的だ。
もし血清だけ見ていたら、
- 補充前もそこまで低く見えない
- 補充後も改善が見えない
という読みになりやすい。
一方で RBC を見ると、細胞内不足があり、補充でそこが動いた ことが見える。
RBC Mg が血清より信頼される最大の理由は、まさにここだ。
だから、どんな人でRBC Mgの価値が上がるのか
私は次のようなケースで、血清 Mg だけでは足りないと思う。
- 糖尿病やインスリン抵抗性がある
- 高齢者
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)や利尿薬を使っている
- 不整脈、筋けいれん、片頭痛、睡眠問題など Mg を疑う症状がある
- 血清 Mg は正常だが、臨床像がどうも噛み合わない
このタイプは、外液の血清 Mg より、細胞内寄りの補助線 を足した方が読み違えにくい。
ただし、RBC Mg を最強視するのも雑
ここはかなり大事だ。
2017年のレビュー は、臨床的に一番実用的なのは
- 血清 Mg
- 24時間尿中 Mg
- 食事からの Mg 摂取量
の組み合わせた評価だとしている。
つまり、現時点の PubMed 的には
- 血清 Mg は無用
- RBC Mg だけ見れば十分
ではない。
正確には、
- 血清 Mg: 明らかな低Mg血症、安全性、急性対応の入口
- RBC Mg: 正常血清に隠れた細胞内不足の補助線
- 尿 Mg / 摂取量 / 症状 / 薬歴: 背景整理
この組み合わせが一番堅い。
だから私は、RBC Mg を「血清 Mg の上位互換」とは書かない。
血清単独よりは信頼できる局面があるが、単独で完璧ではない。
この言い方が一番誠実だ。
三島の結論
RBC マグネシウムが血清マグネシウムより信頼される理由は、単純だ。
血清は外液、RBC は細胞内寄り だからだ。
その結果、
- 血清は正常
- でも RBC は低い
というズレが普通に起こる。高齢者データでも、糖尿病の補充試験でも、それは見えている。
ただし、ここから RBC Mg こそ真実 まで飛ぶのも危ない。
PubMed ベースで一番妥当なまとめはこうだ。
血清 Mg は入口として必要。でも、慢性的な Mg 不足を疑うなら、RBC Mg や尿 Mg、摂取量まで足した方が読み違えにくい。
それが今のところ、一番雑味の少ない答えだ。
補充を考えるなら、まずは基本形でいい
RBC Mg や摂取不足が気になるなら、まずは胃腸にやさしく続けやすい基本形から。検査値の解釈と補充はセットで考えたい。
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検査値の前に、何をどれだけ摂れているかも見直したい。フォームの違いまで含めて考えるなら、マグネシウム比較記事 も役に立つ。
