「発達障害」を「発達ユニーク」と捉え直す。児童精神科医が教える子供の心の声

「発達障害」を「発達ユニーク」と捉え直す。児童精神科医が教える子供の心の声

保育園の先生から「息子さん、落ち着きがないですね」と言われた。

家でも、じっとしていられない。すぐに忘れる。気が散る。

「もしかして、発達障害?」

そう思うと、不安になる。でも、診断を受けるのも怖い。

「障害」という言葉が重く感じる。

そんなとき、SNSでフォローしている児童精神科医さわの本『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』を見つけた。

「発達障害」ではなく「発達ユニーク」。

この言葉に惹かれた。

本を読んで、エビデンスも調べてみた。そして、息子の「落ち着きのなさ」を少し違う目で見られるようになった。

今回は、この本の内容と、神経多様性(ニューロダイバーシティ)に関する最新のエビデンスを元に、ワーママ目線でレビューする。

本の概要:「発達ユニーク」という視点

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』は、YouTubeチャンネル登録者数10万人の児童精神科医さわが書いた本。日本実業出版社から2024年に出版され、発売後たちまち増刷された人気書籍。

著者の背景

著者の精神科医さわは:

  • 名古屋市のメンタルクリニック院長(5歳以上〜大人が対象)
  • YouTubeチャンネルで100万回再生
  • 自身も発達障害の不登校児を育てている親

医師としての専門知識だけでなく、親としての経験も持っているのが特徴。

本の内容:子どもの心の声を聞く

この本が対象にしているのは:

  • 落ち着きがない子
  • 忘れっぽい子
  • こだわりが強い子
  • 勉強が苦手な子
  • 周りになかなかなじめない子

いわゆる「発達障害」の特性を持つ子たち。でも、本では**「発達ユニーク」**という表現を使っている。

なぜ「ユニーク」という言葉を使うのか?

「障害」という言葉には、「異常」「治すべきもの」というニュアンスがある。でも、「ユニーク」なら、「個性」「多様性」として捉えられる。

本の中では、子どもの心の声が紹介されている。

「どうして僕だけできないの?」 「みんなと同じにしなきゃダメなの?」 「頑張ってるのに、怒られる」

親や先生が気づいていない、子どもの困りごとが見えてくる。

エビデンス視点:神経多様性(Neurodiversity)の科学

本を読んで、「発達ユニーク」という視点に共感したけど、科学的根拠はあるのか?

PubMedで「神経多様性(Neurodiversity)」について調べてみた。

神経多様性とは何か

神経多様性(Neurodiversity): 神経発達の違いを「多様性」として捉える概念。

  • 1990年代にオーストラリアの社会学者ジュディ・シンガーが提唱
  • 自閉症セルフアドボケイトから広がった社会運動
  • ADHD、ディスレクシア、発達性協調運動障害などにも広がる

神経多様性の考え方:

  • 神経発達の違いは「生物多様性」の一部
  • 「病理モデル」から「社会モデル」へ
  • 「治療」や「治癒」ではなく、「ニッチ(生態的な居場所)を作る」

神経多様性に基づいた療法:DMCN論文

2022年のDevelopmental Medicine & Child Neurologyの論文(PMID: 36082483)は、神経多様性に基づいた療法を提案している。

3つの鍵となるテーマ:

  1. 機能不全を個人ではなく関係性として再概念化

    • 問題は「子どもにある」のではなく、「子どもと環境の関係」にある
  2. 神経多様性の受容とプライド

    • 神経規範性(ニューロノーマティビティ)からの解放
    • 障害コミュニティと文化の重要性
  3. セラピストの関係的認識論的謙虚さ

    • 異なる神経多様性の経験に対する謙虚さ

つまり、**「子どもを変える」のではなく、「環境と関係性を変える」**という視点。

これは、本の「発達ユニーク」という言葉と一致する。

歴史的に疎外されたコミュニティの子供における神経多様性

2025年のPediatric Annalsの論文(PMID: 40772942)は、神経多様性と診断の格差について述べている。

重要なポイント:

  • 小児科医は神経多様性発達の特定・評価の最前線にいる
  • 診断の遅れは介入の臨界期を逃す
  • 文化的に応答的なスクリーニング・介入ツールが重要

つまり、「ユニーク」として受け入れることと、早期介入は矛盾しないということ。

「ユニーク」として受け入れることで、子どもの自己肯定感が高まる。そして、適切な介入で、困りごとを減らすことができる。

欧州ADHDガイドライングループの視点

2021年のEuropean Child & Adolescent Psychiatryの論文(PMID: 34677682)は、欧州ADHDガイドライングループからの視点を提供している。

重要なポイント:

  • 個人/家族中心のエビデンスベースの実践アプローチ
  • 個人の強みと障害を優先
  • 個人の治療目標の重要性

つまり、一律の「治療」ではなく、子どもと家族の目標に合わせた個別化された支援が重要ということ。

本を読んで考えたこと:ワーママ目線での感想

エビデンスを確認した上で、本を読んだ感想を正直に書く。

「障害」から「ユニーク」へ:言葉の力

息子の「落ち着きのなさ」を、「ADHD(注意欠如多動症)」として捉えると、「治さなきゃ」と思ってしまう。

でも、「発達ユニーク」として捉えると、「この子の個性」として受け入れられる。

言葉が変わると、見え方が変わる。

本を読んで、息子の行動を「問題」ではなく「特性」として見られるようになった。

子どもの困りごとを理解する

本の中で、子どもの心の声が紹介されている。

「落ち着きがない」子は、「じっとしているのが辛い」と感じている。 「忘れっぽい」子は、「覚えようとしているのに忘れてしまう」と悩んでいる。

息子も、「ちゃんとしようと思ってるのに、できない」とよく言う。

本人も困っている。

親が「なんでできないの!」と怒ると、子どもは「自分はダメなんだ」と思ってしまう。

本を読んで、「できない」のではなく「やり方が違う」のだと理解できた。

環境を変えることの大切さ

神経多様性のエビデンスでも示されていた通り、問題は「子どもと環境の関係」にある

息子が「落ち着きがない」のは、保育園の環境が合っていないのかもしれない。

  • 座っている時間が長すぎる
  • 静かにしなければいけない場面が多い
  • 自由に動ける時間が少ない

家では、息子が自由に動ける環境を作るようにした。

  • リビングに小さいトランポリンを置く
  • 勉強は10分区切りで休憩を入れる
  • 「じっと座ってなさい」と言わない

すると、息子の「落ち着きのなさ」が少し減った気がする。

子どもを変えるのではなく、環境を変える。

これが、神経多様性の視点。

でも、早期介入も大切

「ユニーク」として受け入れることは大切。でも、困りごとを放置していいわけではない

Pediatric Annalsの論文でも述べられていた通り、診断の遅れは介入の臨界期を逃す

もし息子にADHDの診断が必要なら、早めに専門家に相談すべき。

適切な支援を受けることで、息子の困りごとが減り、自己肯定感が高まる。

「ユニーク」として受け入れることと、早期介入は矛盾しない。

両方が必要。

どんな人におすすめか

この本は、以下のような人におすすめ:

対象者理由
「落ち着きがない」と言われる子の親子どもの心の声を理解できる
発達障害の診断を受けた子の親「障害」ではなく「ユニーク」として捉え直せる
保育士・教師子どもの困りごとを理解し、環境を整えるヒントが得られる
発達障害について学びたい人親しみやすい文体で理解しやすい

ただし、以下の点に注意:

  • 臨床経験ベースの内容が中心(エビデンスの引用は少ない)
  • 診断基準や治療法の詳細は書かれていない
  • 専門的な支援が必要なケースは、医療機関への相談が必要

まとめ:「ユニーク」として受け入れることから始める

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』は、発達に特性のある子どもの心の声を紹介した本。

「障害」ではなく「ユニーク」として捉え直す視点が新鮮。

そして、この視点は神経多様性(Neurodiversity)のエビデンスと一致する

  • 問題は「子どもと環境の関係」にある(個人ではなく関係性)
  • 神経多様性の受容とプライドが重要
  • 個人の強みと目標を優先した個別化された支援

子どもを変えるのではなく、環境を変える。

そして、適切な早期介入も忘れない。

息子の「落ち着きのなさ」を、「発達ユニーク」として受け入れることで、私自身が楽になった。

「治さなきゃ」というプレッシャーから解放された。

そして、息子の「ユニークさ」を大切にしながら、困りごとを減らす環境を作ろうと思えるようになった。

「落ち着きがない」「忘れっぽい」「こだわりが強い」

それは、その子の「ユニークさ」。

そう捉え直すことから、始めてみませんか?

今回紹介した本

参考文献

Sources:

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桂木 瑛

エビデンス沼のワーママ。信頼できるインフルエンサー経由の情報を追い、エビデンスあるものを試して体感で続けるか決めるスタイル。

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