ウー・ウェンの100年スープ。出汁なしでも美味しい医食同源の実践記
前回、82歳現役女医・天野惠子医師の『すごい野菜スープ』を試して、野菜スープの効果を実感した。
5歳の息子は「おかわり!」と言って飲んでくれ、3歳の娘も「ママと一緒!」と喜んだ。
でも、塩分ゼロのスープは1週間で飽きてしまった。
「もっとバリエーションが欲しい。」
そんなとき、SNSで『ウー・ウェンの100年スープ』という本を見つけた。
中国家庭料理の料理家、ウー・ウェン。北京出身で、医食同源に根ざしたスープレシピ。
「100年スープ」という名前に惹かれた。生まれた時から最期まで、健かに命をつなぐスープ。
本を読んで、PubMedでエビデンスを調べてみた。そして、5歳の息子と3歳の娘と1週間、ウー・ウェンのスープ生活を試してみた。
今回は、この本の内容と、スープの調理方法と栄養に関する最新のエビデンスを元に、ワーママ目線でレビューする。
本の概要:ウー・ウェンの100年スープとは
『ウー・ウェンの100年スープ』は、中国家庭料理の料理家ウー・ウェンが書いた本。主婦の友社から2025年12月12日に出版された。
著者プロフィール
- ウー・ウェン: 北京出身、1990年来日
- 「ウー・ウェンクッキングサロン」主宰
- 中国家庭料理を日本の食生活に合わせて提案
- 医食同源に根ざした料理教育
料理教室は予約開始数分で満席になる人気。
本の内容
本で紹介されているのは:
- 100年スープの6つのきほん
- 一番だしの野菜のスープ
- 暮らしを支える肉だんごスープ
- 今日はごちそう骨付き肉のスープ
- うまみそのもの豆乳スープ(台湾の朝食スープ)
- 体をうるおす白い野菜のスープ
全6章構成で、様々なスープレシピが紹介されている。
本の哲学
「メインのおかずがなくても、スープさえあれば食事は成り立つ」
これがウー・ウェンのスープ哲学。
- 出汁をとらない: 具として入れる食材から出汁が出る
- すべて無添加: 健康を守る安心のレシピ
- 調味料は塩が中心: しょうゆや油で風味づけ、素材のうまみを感じる
- 短時間調理: 毎日続けられる手軽さ
前回の天野医師のスープとの違い
前回読んだ『82歳、現役女医が教えるすごい野菜スープ』との比較:
| 項目 | 天野医師(82歳現役女医) | ウー・ウェン(100年スープ) |
|---|---|---|
| 塩分 | ゼロ(しょうがのみ) | 塩が中心、しょうゆや油で風味 |
| レシピ数 | 基本7種類+アレンジ15種類 | 6章構成、多様なスープ |
| 哲学 | 高血圧・高血糖対策 | 医食同源、生涯の健康 |
| 出汁 | とらない(野菜の甘み) | とらない(食材から出る) |
| 特徴 | 塩分ゼロでぽかぽか | 短時間調理、無添加 |
共通点は「出汁をとらない」こと。でも、天野医師は塩分ゼロ、ウー・ウェンは塩が中心という大きな違いがある。
エビデンス視点:スープの調理方法と栄養
スープの調理方法と栄養素の生体利用率
2024年のFoodsの論文(PMID: 39123597)は、異なる調理方法が野菜レンズ豆スープの栄養素と生物活性化合物に与える影響を調査した。
対象: 異なる調理方法(煮る、圧力鍋、スービッド、クックビッド)で作った野菜レンズ豆スープ
方法: in vitro消化シミュレーションで生体利用率を評価
結果:
- 消化後の変化:
- 総フェノール: 最大72%減少
- リコピン: 最大92%減少
- カロテノイド: 最大98%減少
- ビタミンC: 100%減少
- 抗酸化活性: 熱処理後に最大46%向上(DPPH法)
- 伝統的な調理(煮る): 総カロテノイドとリコピン含量が最大
- 圧力鍋とクックビッド: 総フェノール含量が最高
重要な発見: 調理方法によって栄養素の保持と抗酸化活性が異なる。
つまり、ウー・ウェンが提案する「煮る」という伝統的な調理方法は、カロテノイドの保持に優れている。
大麦野菜スープの心血管系への効果:介入試験
2015年のJ Clin Biochem Nutrの論文(PMID: 26236103)は、大麦野菜スープの健康効果を調査した。
対象: 38名の健常者
方法: 2週間、毎日250gの大麦野菜スープを摂取
結果:
- 血漿カロテノイド(ルテイン、ベータカロテン)が有意に増加
- 血漿総抗酸化能が有意に増加
- 総コレステロールとLDLコレステロールが減少
- 脂質過酸化マーカー(酸化LDL、脂質ヒドロペルオキシド)が減少
- グリセミック指数: 36(低GI食品)
結論: 野菜スープの定期的な摂取が、血漿脂質プロファイルと脂質過酸化を改善し、心血管疾患リスクを低減する可能性がある。
つまり、スープを毎日飲むことで、コレステロールが下がり、心臓に良い影響がある。
本を読んで実践してみた:ワーママ1週間チャレンジ
エビデンスを確認した上で、本を読んで実践してみた。
前回の天野医師スープの反省
前回、天野医師の塩分ゼロスープを1週間試した。
良かった点:
- 子供が飲んでくれた
- 作り置きで楽だった
- 朝の支度が楽になった
課題:
- 塩分ゼロは飽きる
- しょうがの風味だけでは味に変化がない
そこで、今回はウー・ウェンのスープで味のバリエーションを試すことにした。
週の前半:「一番だしの野菜のスープ」
本の第2章「一番だしの野菜のスープ」から、白菜と豚バラ肉のスープを作った。
材料:
- 白菜
- 豚バラ肉
- 塩
- しょうゆ(少量)
作り方:
- 白菜を食べやすい大きさに切る
- 豚バラ肉を湯通しする
- 鍋に水と白菜、豚バラ肉を入れて煮る
- 塩としょうゆで味付け
- 15分煮て完成
塩分ゼロのスープとの違い:
天野医師のスープは「しょうがのみ」で味付け。ウー・ウェンのスープは「塩としょうゆ」で味付け。
味の印象:
塩があるだけで、全然違う。白菜の甘みが引き立ち、豚バラ肉の旨みがスープに溶け込む。
5歳息子の反応:
「これ、おいしい!」と言って、白菜まで食べた。前回のスープより、味がはっきりしていて食べやすいようだ。
週の後半:「肉だんごスープ」
本の第3章「暮らしを支える肉だんごスープ」から、鶏だんごスープを作った。
材料:
- 鶏ひき肉
- 長ネギ
- しょうが
- 卵白
- 塩
- 白菜(スープ用)
作り方:
- 鶏ひき肉に長ネギのみじん切り、しょうが、卵白、塩を混ぜる
- 肉だんごを作る
- 鍋に水と白菜を入れて煮る
- 肉だんごを加えて煮る
- 10分煮て完成
手間の感想:
肉だんごを作るのは少し手間だが、週末に作り置きすれば平日は煮るだけで済む。
3歳娘の反応:
娘は「まるいの、かわいい!」と言って、肉だんごを喜んで食べた。形が楽しいと、子供は食べてくれる。
自分自身の変化:味のバリエーションで飽きない
前回の天野医師のスープは、塩分ゼロで1週間で飽きてしまった。
でも、ウー・ウェンのスープは塩としょうゆで味付けするので、飽きない。
理由:
- 塩があるだけで味が引き立つ
- 章ごとに違うスープ(野菜、肉だんご、骨付き肉、豆乳、白い野菜)
- 中国家庭料理の味付けが新鮮
体感の変化:
前回のスープと同じく、朝が楽になった。でも、今回は飽きずに続けられそうという実感がある。
実践して感じたこと:メリットと課題
メリット:出汁をとらなくても美味しい
ウー・ウェンのスープの最大のメリットは「出汁をとらなくても美味しい」こと。
- 食材から出汁が出る: わざわざ昆布や鰹節で出汁をとらなくていい
- 短時間調理: 15分程度で完成
- 作り置きできる: 肉だんごを週末に作っておけば平日は煮るだけ
エビデンスとの整合性:
2024年の研究(PMID: 39123597)では、伝統的な「煮る」調理法がカロテノイドの保持に優れていると示されている。ウー・ウェンのスープは、まさにこの調理法。
課題:肉だんごスープは手間がかかる
1週間続けて感じたのは、肉だんごスープは手間がかかる。
ひき肉に長ネギ、しょうが、卵白、塩を混ぜて、丸めて、煮る。平日の朝にこれをやるのは無理。
解決策:
週末に肉だんごを作って冷凍しておけば、平日は煮るだけで済む。
課題:塩分の調整
ウー・ウェンのスープは「塩が中心」の味付け。
天野医師のスープは「塩分ゼロ」で高血圧対策を意識していたが、ウー・ウェンのスープは適度な塩分で美味しさを引き出す。
私の判断:
塩分ゼロにこだわりすぎると、味に飽きてしまう。適度な塩分で美味しく続けられる方が、長期的には良い。
エビデンスと実践のギャップ:注意点
エビデンスは確立しているが、実践には注意点もある。
スープだけでは栄養が偏る
前回の記事でも書いたが、スープだけでは栄養が偏る。
2019年の総説(PMID: 31631676)では、野菜だけでなく、果物、全粒穀物、タンパク質のバランスが重要とされている。
つまり、スープは「野菜摂取の手段」であって、「完全な食事」ではない。
調理方法による栄養素の損失
2024年の研究(PMID: 39123597)では、消化後にビタミンCが100%減少すると示されている。
つまり、スープだけでビタミンCを補うのは難しい。
生野菜や果物も一緒に摂ることが大切。
医食同源は科学的根拠が限定的
ウー・ウェンは「医食同源」を哲学としている。
でも、中国伝統医学の「医食同源」は、西洋医学のエビデンスとは異なる体系。
「食べ物で病気を治す」という考え方は魅力的だが、重大な病気の場合は医師の診断を受けることが必要。
どんな人におすすめか
この本は、以下のような人におすすめ:
| 対象者 | 理由 |
|---|---|
| 前回の天野医師スープで飽きた人 | 味のバリエーションが豊富 |
| 出汁をとるのが面倒な人 | 食材から出汁が出るので楽 |
| 中国家庭料理に興味がある人 | 医食同源の考え方を学べる |
| 子供の野菜不足が気になる親 | スープなら子供も飲みやすい |
ただし、以下の点に注意:
- 肉だんごスープは手間がかかる(週末に作り置き推奨)
- 塩分の調整が必要(高血圧の人は注意)
- 医食同源はエビデンスが限定的(病気の治療には医師の診断を)
まとめ:100年スープは「続けられる」味のバリエーション
『ウー・ウェンの100年スープ』は、中国家庭料理の料理家が提案する医食同源のスープレシピ。
エビデンスもしっかりしている。
- 2024年の研究で伝統的な「煮る」調理法がカロテノイド保持に優れることを確認(PMID: 39123597)
- 38名の介入試験で2週間のスープ摂取が脂質プロファイルと脂質過酸化を改善(PMID: 26236103)
忙しいワーママでも、週末の作り置きで続けられる。
肉だんごを週末に作って冷凍しておけば、平日は煮るだけ。
前回の天野医師スープとの違いは「塩分」。
天野医師は塩分ゼロで高血圧対策。ウー・ウェンは適度な塩分で美味しさを引き出す。
どちらが良いかは、個人の健康状態と好みによる。
私は、味のバリエーションで飽きずに続けられるウー・ウェンのスープの方が、長期的には続けやすいと感じた。
5歳の息子、3歳の娘と、これからもスープ生活を続けたい。
今回紹介した本
参考文献
Sources:
