『不夜脳』書評、脳神経外科医が教える睡眠に悩みすぎないという処方箋
「眠れない」ことを、悩みすぎていた
睡眠に関する本をたくさん読んできた。
「7-8時間は必要」「睡眠負債は取り返せない」「睡眠不足は認知症リスク」
正直、読むたびに不安になっていた。6時間しか眠れなかった日は「また負債が増えた」と落ち込む。夜中に目が覚めると「中途覚醒だ、睡眠の質が悪い」と焦る。
そんな私に、この本は違う視点をくれた。
脳は「不夜脳」、眠らない
著者の東島威史さんは、脳神経外科医・医学博士。実際に手術で脳に触れ、電気刺激をする経験から脳機能を学んでいる方だ。
この本の主張は明快:
脳は24時間フル稼働する「不夜脳」であり、私たちが眠っている間も決して休むことなく、さまざまな作業を続けている。
「健康な脳には睡眠が必要」と一般的に言われるが、実は睡眠と脳の活性化には明確な因果関係がないことが分かってきた、と著者は言う。
「体の維持」には睡眠は重要。でも「脳の健康」には休息より継続的な刺激こそ重要——。
これは、私が読んできた睡眠本とは正反対のメッセージだった。
「老廃物除去のための睡眠」は俗説?
よく聞く話がある。
「脳内に溜まった老廃物(アミロイドβなど)を除去するために、脳は睡眠を必要とする」
グリンパティックシステムの話だ。私もこれを信じて、睡眠の質を上げるためにいろいろ試してきた。
でも著者は、これを俗説だと斬って捨てる。
起きたままでも老廃物は除去されているはずだ。
また、「睡眠不足の蓄積がアルツハイマー型認知症につながる」という話についても、因果関係が逆かもしれないと指摘する。
認知症の初期症状として睡眠障害が現れている可能性がある——つまり、睡眠不足が認知症を引き起こすのではなく、認知症が進行しているから睡眠障害が出るのではないか、と。
正直、この主張には驚いた。でも、読んでいて少し肩の力が抜けたのも事実。
結城として共感した点
この本から受け取った一番のメッセージは:
「眠れないからといって、過度に悩まなくていい」
これは、私の生き方にも通じる。
「エビデンスが弱いの分かってる。でもQOL込みで選んでる」
私がいつも言っていることだ。数値や研究結果に振り回されすぎない。自分の体感、自分の生活を大事にする。
睡眠も同じかもしれない。
「昨日6時間しか眠れなかった」と落ち込むより、「今日は元気だからOK」と思える方が、QOLは高い。
批判的に読んだ点も
ただし、この本を全面的に受け入れるわけではない。
気になった点:
- 選択的なエビデンス引用の可能性 — 著者の主張に合う研究だけを取捨選択している可能性も否定できない
- 睡眠の体への重要性は認めている — 「脳」と「体」を分けて考えているが、実際には分けられないのでは
- 個人差の考慮 — 睡眠不足で明らかにパフォーマンスが落ちる人もいる
私の体感として、睡眠の質が良い日は確かに調子がいい。カモミールティーを飲んで、エプソムソルト入浴をして、ぐっすり眠った翌朝は、明らかに違う。
だから、この本を読んでも私の睡眠習慣は変えない。
睡眠習慣は続けつつ、悩みすぎない
私の結論:
睡眠習慣は大切にする。でも、眠れない日を過度に悩まない。
この両立ができるようになった。
毎晩カモミールティーを飲む。エプソムソルト入浴をする。マグネシウムを摂る。これは続ける。
でも、仕事が忙しくて4時間しか眠れなかった日も、「まあ、脳は不夜脳だから大丈夫」と思える。
この本を読んで、睡眠に対する執着が少し緩んだ。
それ自体が、睡眠の質を上げることにつながっているかもしれない。「眠らなきゃ」という焦りが、一番の睡眠の敵だから。
こんな人におすすめ
向いている人:
- 睡眠に悩みすぎて、かえって眠れなくなっている人
- 「睡眠負債」「認知症リスク」という言葉に怯えている人
- 睡眠に関する新しい視点を知りたい人
向いていない人:
- 睡眠の重要性を科学的に確認したい人(むしろ従来の睡眠本を推奨)
- 具体的な睡眠改善法を知りたい人(この本は「考え方」の本)
まとめ:悩みすぎないことが、最高の休息
『不夜脳』は、睡眠に悩む人への処方箋になる本だった。
「脳は眠らない」「睡眠不足を過度に恐れなくていい」
このメッセージは、睡眠本をたくさん読んで不安になっていた私に、別の視点をくれた。
もちろん、睡眠が大切なのは変わらない。私のカモミールティーとエプソムソルトの習慣は続ける。
でも、眠れない夜があっても、自分を責めない。
続けられることが、私にとっては最強のエビデンス。そして、悩みすぎないことも、続けるためには大切。
そんなことを考えさせてくれた一冊でした。
