アプリで運動習慣は作れるか?家族向け介入研究から学ぶ意外な発見

アプリで運動習慣は作れるか?家族向け介入研究から学ぶ意外な発見

歩数計アプリ、ダウンロードしたまま放置してない?

正直に言う。

私のスマホには、歩数計アプリが3つ入っている。全部使っていない。

「今日から1万歩歩こう!」と意気込んでダウンロードして、1週間で見なくなる。これを3回繰り返した。

でも、論文を読んで分かった。アプリだけでは運動習慣は作れない。そして、家族で使うと効果が変わる

がんサバイバー向けAPPROACH研究

2026年のJMIR Res Protocに掲載された研究は、がんサバイバー向けのウォーキング促進プログラム「APPROACH」のプロトコルだ。

対象はがん患者だが、その設計が参考になる。

APPROACHの介入内容

要素内容
アプリNHS Active 10(一般向けウォーキング促進アプリ)
電話/ビデオ通話2回の短い通話(行動支援)
リーフレット習慣形成のヒント
ウォーキングプランナー計画立案ツール

ポイントは、アプリだけでなく、習慣ベースの行動支援が組み合わさっていること。

電話やビデオ通話で「人」が関わる。プランナーで「計画」を立てる。これがアプリ単体との違いだ。

測定項目にも「習慣強度」が含まれている。つまり、この研究は**「習慣を作ること」を重視している**。

SMARTFAMILY研究の意外な発見

2024年のJMIR Mhealth Uhealthに掲載されたドイツの研究では、家族向けのスマホアプリ介入「SMARTFAMILY」を3週間実施している。

48家族(156人)が参加し、運動と健康的な食事を促進するアプリを使った。

主な結果

アウトカム結果
個人の身体活動有意な増加なし
健康的な食事有意な増加なし

アプリを使っても、個人の運動量は増えなかった

研究者は「参加者がすでに身体活動的だった」ことを限界として挙げている。

つまり、元から運動習慣がある人には効果が出にくい

SMARTFAMILY2.0で改良した結果

2025年の続報では、アプリを改良して再度実験している。

改良点

  • ゲーミフィケーション(楽しさ、競争要素)
  • ヘルスリテラシー(健康知識)
  • just-in-time adaptive interventions(適時の通知)

55家族(209人)で3週間の介入を行った。

改良版の結果

アウトカム結果
個人の身体活動有意な増加なし(変わらず)
果物・野菜摂取介入群で改善(p=.03)
家族で一緒の活動介入群で改善(p=.02, p < .001)
家族で一緒の食事介入群で改善(p=.004)

面白いのは、個人の運動量は増えなかったのに、「家族で一緒に活動する時間」は有意に増えたこと。

家族で一緒の食事も増えた。果物・野菜の摂取も改善した。

「家族で一緒に」という要素がカギらしい。

中学生のウェアラブル介入

2025年のPrev Med Repに掲載された研究では、中学生(12-13歳)を対象に、ウェアラブル活動モニターを使った6週間の介入を行っている。

介入内容

  • ウェアラブル活動モニター
  • 身体活動と健康の教育
  • 週次の動機づけ動画
  • 家族または仲間とのグループチャレンジ

結果

指標結果
身体活動有意な変化なし
座位行動有意な変化なし
ウェアラブルへの満足度高い(78%以上)
アプリ利用率低い(39%のみ頻繁利用)

子供たちはウェアラブルを気に入ったが、行動は変わらなかった

しかも、アプリを頻繁に使ったのは39%だけ。ダウンロードしても使わない、という私と同じパターンだ。

アプリ介入が効かない理由

論文を読んで見えてきた、アプリだけでは効かない理由。

1. すでに活動的な人には効果が出にくい

SMARTFAMILY研究の参加者は、元から運動習慣があった。

これは私も心当たりがある。「運動しなきゃ」と思う人は、そもそも健康意識が高い。アプリをダウンロードする時点で、平均より活動的かもしれない。

2. アプリをダウンロードしても使わない

中学生の研究で、アプリを頻繁に使ったのは39%だけだった。

歩数計アプリを3つダウンロードして全部放置している私も同じ。「ダウンロード」と「習慣化」は別物だ。

3. 短期間では行動変容が難しい

SMARTFAMILY研究は3週間、中学生の研究は6週間。

習慣化の記事で書いたように、習慣形成には平均66日かかる。3-6週間では足りない。

アプリ介入を成功させるカギ

論文から見えてきた、成功のポイント。

1. アプリ+人的サポート

APPROACH研究では、アプリに加えて電話/ビデオ通話、プランナーが組み合わさっている。

「人」が関わることで、アプリだけより効果が高まる可能性がある。

2. 家族で一緒に

SMARTFAMILY2.0では、個人の運動量は増えなかったが、家族で一緒の活動は増えた。

「自分のため」より「家族のため」「一緒に」の方が続くのかもしれない。

3. ゲーミフィケーション

SMARTFAMILY2.0では、ゲーム要素を追加して改善が見られた。

楽しさ、競争要素が動機づけになる。

4. 習慣形成の視点

APPROACH研究では「習慣強度」を測定している。

習慣化の3つの鍵は「楽しさ」「文脈安定性」「繰り返し」。アプリはこれを補助する道具に過ぎない。

我が家でのアプリ活用法

論文を読んで、アプリの使い方を見直した。

1. 家族で歩数を共有する

私一人で「1万歩」を目指しても続かない。

でも、「週末の公園で何歩歩けたか」を家族で共有すると、ゲームになる。5歳の息子は「今日は1000歩だよ!」と嬉しそうに報告してくる。

2. 「一緒に」をアプリで記録

SMARTFAMILY2.0で増えたのは「家族で一緒の活動」。

うちでは、週末に公園に行った日は写真を撮って、家族のアルバムアプリに入れている。「一緒に」の記録が、次も「一緒に」行きたい気持ちにつながる。

3. アプリは「きっかけ」程度に

歩数計アプリを「目標管理ツール」として使おうとすると挫折する。

「あ、今週全然歩いてないな」と気づく「きっかけ」程度に考える。数字に追われると辛くなる。

4. 人との約束を作る

APPROACH研究では電話/ビデオ通話が含まれていた。

うちでは「土曜の午前は公園」と夫と約束している。アプリより、人との約束の方が強制力がある。

まとめ

  • アプリだけでは個人の運動量は増えにくい(SMARTFAMILY研究)
  • 「家族で一緒に活動する時間」は有意に増加(SMARTFAMILY2.0)
  • アプリをダウンロードしても頻繁に使うのは39%だけ(中学生研究)
  • アプリ+人的サポートの組み合わせが効果的(APPROACH研究)
  • ゲーミフィケーション、習慣形成の視点が重要

歩数計アプリを3つダウンロードして全部放置していた私へ。

アプリは道具に過ぎない。大事なのは「家族で一緒に」という仕組み

週末の公園を「家族チャレンジ」にしてみる。アプリより、子供との「今日は何歩歩けたかな?」の会話の方が、よっぽど効果がありそうだ。


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桂木 瑛

エビデンス沼のワーママ。信頼できるインフルエンサー経由の情報を追い、エビデンスあるものを試して体感で続けるか決めるスタイル。

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