PQQ 20mgの効果サイズを検証、ミトコンドリア新生マーカーは上がるが
PQQ(ピロロキノリンキノン)。
「ミトコンドリアを増やす」「認知機能を改善する」「抗酸化作用がある」。
バイオハッカー界隈で人気のサプリだ。有名な研究者も摂取を続けている。
だが効果サイズで見ると、期待ほどではない。今回はPQQのRCT(ランダム化比較試験)を検証し、効果サイズを明らかにする。
結論:効果サイズC、優先度は高くない
先に結論を言う。
PQQはミトコンドリア新生マーカー(PGC-1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1α))を上げるが、運動パフォーマンスは改善しない。認知機能への効果は報告されているが、効果サイズは不明。
Examine.comの評価はC(中程度)。これは妥当な評価だと思う。
クレアチン(効果サイズA)やカフェイン(効果サイズB)と比べると、優先度は高くない。
PQQとは
基本情報
PQQ(Pyrroloquinoline Quinone、ピロロキノリンキノン)は、食品中に微量に含まれる化合物だ。
- 発見: 1979年、細菌の補酵素として発見
- 食品中: 納豆、緑茶、パセリ、キウイなどに微量含有
- サプリ用量: 10-20mg/日が一般的
期待される効果
PQQが注目される理由は3つ。
- ミトコンドリア新生の促進:PGC-1α活性化
- 認知機能の改善:神経成長因子(NGF)の発現増加
- 抗酸化作用:強力な抗酸化活性
理論的にはいい話だ。問題は、実際のRCTで効果サイズがどうかだ。
RCT検証1:運動パフォーマンスへの効果
Hwang et al. 2020(PMID: 31860387)
Hwang et al. 2020は、PQQの運動パフォーマンスへの効果を検証したRCTだ。
研究デザイン
- 対象: 23名(非持久系トレーニング男性)
- 介入: PQQ 20mg/日 vs プラセボ
- 期間: 6週間
- 並行: 持久運動トレーニング
結果
| アウトカム | 効果 | 判定 |
|---|---|---|
| 運動パフォーマンス | 有意差なし | ✗ |
| 最大酸素摂取量(VOpeak) | 両群で改善(トレーニング効果) | - |
| PGC-1αタンパク質 | PQQ群で有意に上昇 | ✓ |
重要な発見
バイオマーカー(PGC-1α)は上がるが、パフォーマンスは改善しない。
これは非常に重要な発見だ。
PGC-1αはミトコンドリア新生の主要な転写因子。PQQがこれを上昇させることは確認された。だがそれが運動パフォーマンスに転化しなかった。
バイオマーカーの改善 ≠ 機能的アウトカムの改善
これはサプリ研究でよくあるパターンだ。
RCT検証2:認知機能への効果
Shiojima et al. 2022(PMID: 34415830)
Shiojima et al. 2022は、PQQの認知機能への効果を検証した日本のRCTだ。
研究デザイン
- 対象: 58名完了(40-80歳の日本人男女)
- 介入: PQQ 21.5mg/日 vs プラセボ
- 期間: 12週間
- 測定: Cognitrax(認知機能テスト)
結果
| アウトカム | 効果 |
|---|---|
| 複合記憶 | 有意に改善 |
| 言語記憶 | 有意に改善 |
| 反応時間 | 有意に改善 |
| 複合注意 | 有意に改善 |
| 認知柔軟性 | 有意に改善 |
| 実行機能 | 有意に改善 |
| 運動速度 | 有意に改善 |
問題点:効果サイズが報告されていない
一見すると素晴らしい結果だ。だが俺にとって重要な情報が欠けている。
効果サイズ(Cohen’s d、SMDなど)が報告されていない。
「有意に改善」というのは統計的有意差があるという意味だ。だがp値が小さくても、効果サイズが小さければ実用的な意味は限られる。
例えば、クレアチンの認知機能への効果サイズはSMD(標準化平均差) 0.88(高齢者、大きい効果)と報告されている。PQQはどうか?分からない。
効果サイズを報告しない研究は、効果サイズ原理主義者として評価が難しい。
Tamakoshi et al. 2023(PMID: 36807425)
Tamakoshi et al. 2023は、若年・高齢両方を対象にしたRCTだ。
結果
- 若年成人(20-40歳): 8週間で認知柔軟性、処理速度、実行速度が改善
- 高齢者(41-65歳): 12週間で複合記憶、言語記憶が改善
年齢によって効果が出るタイミングと領域が異なる。興味深いが、やはり効果サイズは報告されていない。
RCT検証3:軽度認知障害への効果
Baltic et al. 2024(PMID: 38908296)
Baltic et al. 2024は、軽度認知障害(MCI)の高齢者を対象にした最新のRCTだ。
研究デザイン
- 対象: 34名(平均71.9歳、MCI患者)
- 介入: 水素水 + PQQ vs プラセボ
- 期間: 6週間
結果
| アウトカム | 効果 |
|---|---|
| 血清BDNF(脳由来神経栄養因子) | 有意に上昇 |
| ADAS-Cog(アルツハイマー病評価尺度-認知機能)(見当識) | 有意に改善 |
| 脳酸素飽和度 | 48.4% → 52.8%に改善 |
| N-アセチルアスパラギン酸 | 複数部位で上昇 |
問題点
- PQQ単独ではない:水素水との併用なので、PQQ単独の効果は分からない
- サンプルサイズが小さい:34名
- 効果サイズ不明:やはり報告されていない
PQQのエビデンスをまとめると
確認されていること
| 項目 | エビデンス | 研究 |
|---|---|---|
| PGC-1α(ミトコンドリアマーカー)上昇 | ✓ 確認 | PMID 31860387 |
| 認知機能への効果 | ✓ 有意差あり | PMID 34415830, 36807425 |
| BDNF上昇 | ✓ 確認 | PMID 38908296 |
確認されていないこと
| 項目 | エビデンス |
|---|---|
| 運動パフォーマンス向上 | ✗ 有意差なし |
| 認知機能の効果サイズ | 不明(未報告) |
| PQQ単独での長期効果 | 研究不足 |
Examine.com評価
- 効果サイズ: C(中程度)
- エビデンスレベル: Moderate
- 推奨用量: 10-20mg/日
クレアチンやCoQ10との比較
ミトコンドリアサプリの効果サイズ比較
| サプリ | 主な効果 | 効果サイズ | 俺の評価 |
|---|---|---|---|
| クレアチン | 筋力、認知(高齢者) | A(大) | ★★★★★ |
| CoQ10(コエンザイムQ10) | 心機能、ミトコンドリア | B(良) | ★★★★☆ |
| PQQ | 認知、PGC-1α | C(中) | ★★★☆☆ |
PQQはクレアチンやCoQ10に比べると、効果サイズの証明が弱い。
なぜ有名な研究者が摂り続けるのか
「ミトコンドリア新生を促進するメカニズムが明確」というのが主な理由だろう。
SIRT1(サーチュイン1)/PGC-1α経路を活性化するというメカニズムは、in vitro(試験管内)研究で確認されている。理論的には魅力的だ。
だが俺の基準は「メカニズム」ではなく「効果サイズ」だ。理論的に正しくても、実際の効果サイズが小さければ優先度は下げる。
俺の体験
正直に言う。
俺はPQQを3ヶ月間、20mg/日で試したことがある。
体感はゼロだった。
クレアチンは筋トレのパフォーマンスで体感できる。カフェインは覚醒効果を体感できる。だがPQQは何も感じなかった。
これは俺の主観だ。効果がないとは言わない。だが「体感できるレベルの効果サイズではない」というのが正直な感想だ。
どんな人におすすめか
検討する価値がある人
- すでにクレアチンやCoQ10を摂っている人:基本を押さえた上での追加として
- 認知機能の維持に強い関心がある高齢者:RCTで改善が報告されている
- ミトコンドリア機能を多角的にアプローチしたい人:CoQ10との併用で理論的な相乗効果
優先度を下げるべき人
- まだクレアチンを摂っていない人:先にクレアチンを優先すべき
- コスパを重視する人:PQQは高価(1日100-200円程度)
- 効果サイズを重視する人:Cランクは優先度低め
コスパの良いPQQ。20mg/日の標準用量
iherb.com
(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)
まとめ
- PQQはミトコンドリア新生マーカー(PGC-1α)を上げる
- だが運動パフォーマンスは改善しない
- 認知機能への効果は報告されているが、効果サイズは不明
- Examine.com評価C(中程度)は妥当
- クレアチンやCoQ10を優先した上で、追加として検討するサプリ
バイオマーカーが改善しても、機能的アウトカムが改善するとは限らない。効果サイズで優先順位をつけろ。
PQQと同じくミトコンドリアに作用するCoQ10については、長寿医師のサプリスタックを検証した記事でも触れている。効果サイズB以上のサプリを優先したい人は、そちらも参考にしてほしい。
今回紹介したサプリ
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