クレアチン10g/日は5gより効くのか、Rhonda Patrick流を効果サイズで切る
Rhonda Patrick は、クレアチンを 10g/日、しかも 朝5g + 夜5g で回している。
こういう routine を見ると、
- 5g では足りないのか
- 10g なら筋肉も脳ももっと伸びるのか
- 5g は entry dose で、本気なら10gなのか
という発想になりやすい。
ただ、effect size で切ると話はだいぶ落ち着く。
10g/日が 5g/日を長期で明確に上回る証拠は、かなり弱い。
今回見るのは、
- Rhonda Patrick の 10g routine は何を根拠に読めるか
- 筋力と除脂肪体重で 10g が上か
- 認知で 10g が上か
- もし早く効かせたいなら、10g連打と loading のどちらが筋が通るか
の4点だ。
先に結論
| 論点 | 数字 | 竹内の評価 |
|---|---|---|
| 筋力メタ | upper-body +4.43kg、lower-body +11.35kg | creatine 自体は強い |
| 高用量の上乗せ | lower-body で high-dose trend, p=0.068 | 有意差には届かない |
| 2025 dose subgroup | low-to-moderate dose > high-dose | 量を盛れば勝つ、ではない |
| 高齢者 dose trial | 0.3 g/kg/day vs 0.1 g/kg/day 差なし | 10g優位の直証拠なし |
| 認知RCT | 10g/day vs 20g/day vs placebo 差なし | 若年健常者では上乗せなし |
| 記憶メタ | overall SMD 0.29、older adults SMD 0.88、dose効果なし | 効く場面はあるが dose で説明しにくい |
| 早く効かせたい時 | 20g/day × 5 days の loading は有効 | ここは evidence が強い |
要するに、
標準解は今も 3-5g/日。
10g/日は「明確な上乗せが証明された default」ではなく、personal optimization の域を出ていない。
まず Rhonda Patrick の 10g/日は事実か
元ネタとして確認できるのは、BodySpec の 2026 guide だ。
BodySpec の guide では、Rhonda Patrick の routine として
- creatine 10g/day
- 朝5g + 夜5g
- 朝は コーヒーに混ぜる
という形が書かれている。
ただし同じ guide の読み方で大事なのは、これが
Rhonda の personal routine
であって、
一般向けの evidence-based standard
ではないことだ。
この点は、同日に出ている 結城の記事 が「続けやすさ」を主軸にしているのと、きちんと分けておきたい。
今回はあくまで、
10g は 5g より effect size が増えるのか
だけを見る。
クレアチン自体は強い。でもそれと 10g優位は別問題
まず土台を確認しておく。
2024年の strength meta では、レジスタンストレーニング併用のクレアチンは
- upper-body strength +4.43kg
- lower-body strength +11.35kg
と出ている。
さらに 2024年の body composition meta では
- LBM +1.14kg
- body fat -0.88%
- fat mass -0.73kg
まで見えている。
ここだけ切り取ると、
じゃあ量を増やせばもっと勝つのでは
となりやすい。
でも、そこが雑な飛躍だ。
creatine が効くこと と 10gが5gより勝つこと は、同じ話ではない。
一番近い筋力データでも、「高用量優位」は trend 止まり
同じ PMID 39519498 では、subgroup で高用量側の signal も見ている。
ここで出ているのは、
- lower-body strength で high-dose が有利な trend
- ただし p = 0.068
というものだ。
この数字は、SNS 的にはかなり都合よく使われやすい。
でも effect size 原理主義で言えば、
有意差に届いていない trend は、結論ではなく未確定情報
だ。
読み方として正しいのは、
- 10gが5gより明確に上、ではない
- small advantage の可能性は否定しきれない
- ただし今の証拠量では default を変えるほどではない
このくらいだろう。
むしろ 2025年メタでは「高用量の方が良い」と読めない
2025年の systematic review / meta は、かなり都合が悪い。
なぜなら subgroup で、
- untrained > trained
- low-to-moderate dose > high-dose
- high-intensity training > low-intensity training
という方向が出ているからだ。
つまり、
量を盛れば盛るほど伸びる
というストーリーには、そのまま乗らない。
ここで大事なのは、
高用量が危険という意味ではない。
ただ、
高用量にしたから長期の strength gain が上積みされる、という綺麗な dose-response が見えていない
ということだ。
高齢者でも、高用量が moderate dose を上回ったわけではない
Effect of Creatine Supplementation Dosing Strategies on Aging Muscle Performance は、用量差をかなり真正面から見ている。
デザインは
- 高齢者
- 10日間
- 0.3 g/kg/day
- 0.1 g/kg/day
- placebo
の比較だ。
ここでの結論はかなりシンプルで、
strength / endurance / physical performance に group differences なし
だった。
つまり、
- 高用量で大きく勝ったわけでもない
- moderate dose が負けたわけでもない
要するに、
dose を上げたこと自体が outcome を押した証拠は見えない
ということになる。
認知では 10g優位の根拠はさらに弱い
ここは誤解が多い。
「筋肉は5gでいいけど、脳まで見るなら10g必要」
という言い方があるが、今の PubMed を素直に読むと強すぎる。
2023年の dose-response RCT では、健康な若年成人に
- 10g/day
- 20g/day
- placebo
を 6週間入れている。
結果はかなり明確で、
- cognitive performance 改善なし
- PFC activation 変化なし
だった。
つまり、
10gでも20gでも、若年健常者の認知で上乗せは見えない。
さらに 2023年の記憶メタ では、
- overall memory SMD 0.29
- older adults SMD 0.88
- younger adults SMD 0.03
- dose(2.2-20g/day)は findings に影響しなかった
とされている。
ここから読めるのは、
- creatine が memory に効く場面はある
- 特に高齢者では effect size が大きい
- でも dose を5gから10gに上げれば解決、という話ではない
ということだ。
例外はある。でもそれは「日常の10g維持」とは別物
高用量側に筋がある研究も、ゼロではない。
2024年の睡眠不足研究 では、
- 0.35 g/kg single dose
- 21時間 sleep deprivation
という、かなり特殊な条件で processing speed や cognition の改善が見えている。
ただしこれは、
- 毎日の 10g 維持
- 5g vs 10g の routine 比較
とは別物だ。
解釈として正しいのは、
代謝ストレス下では高用量 rescue に意味があるかもしれない
であって、
だから日常も10gが superior
ではない。
早く効かせたいなら、10g継続より loading の方が evidence-based
10g/日に合理性があるとすれば、
5g/日より早く筋肉内クレアチンを飽和させたい
という文脈だろう。
ただ、ここも evidence で見ると、より筋が通っているのは classic loading だ。
- 20g/day × 5 days
で strength / anaerobic power 改善が見えている一方、
- 2 days では不十分
だった。
つまり、
早く効かせたい
という問いに対する答えは、
- なんとなく 10g/day を続けること
より、
- 20g/day を 5-7日 loading して、その後 3-5g/day に落とす
方が evidence-based だ。
ここはかなり重要で、
10g routine の魅力は「上乗せ」ではなく「中途半端な loading に近い感覚」
かもしれないが、
その感覚を裏づける直接 effect size はまだ薄い。
じゃあ 10g/日を完全否定するのか
そこまでは言わない。
10g/日を試す合理性がゼロとは思わない。
例えば、
- 体格が大きい
- 除脂肪体重が大きい
- 食事由来クレアチンが少ない
- 5gを長く続けても、もう少し認知や疲労耐性を試したい
なら、
personal optimization として 7-10g を試す
のは理解できる。
ただ、その時の前提は
「10gが長期で superior と証明されたから」ではない
ということだ。
この違いはかなり大きい。
実務結論
最後に実務だけまとめる。
1. 普段の標準解
3-5g/日で十分。
ここは今も動いていない。
詳しい土台は クレアチンの成分ページ にまとめてある。
2. 10g/日を試すなら
明確な上乗せを期待するより、personal optimization として試す。
評価軸は
- 胃腸相性
- 継続しやすさ
- 体感
であって、
論文上の確定 superiority ではない。
3. 早く効かせたいなら
loading の方が筋が通る。
つまり、
5gでじわじわ必要なら loading で早く
は evidence と整合する。
4. 認知目的で量を盛るなら
高齢者や sleep deprivation みたいな条件では signal がある。
でも、
若年健常者の日常認知を 5g → 10g で押し上げる根拠は弱い。
ここは盛らない方がいい。
まとめ
- creatine 自体は効く
- でも 10g/日が 5g/日より長期で明確に勝つ証拠は弱い
- strength meta でも high-dose superiority は trend 止まり
- 2025 meta ではむしろ low-to-moderate dose > high-dose
- cognition では 10g vs 20g でも差なし
- 早く効かせたいなら 10g継続より loading
Rhonda Patrick の 10g routine は、面白い。
ただ、effect size 原理主義で切るなら結論は地味だ。
5gが標準解。10gは趣味性の入った最適化。
そのくらいが、今の PubMed といちばん整合する。
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