『すばらしい医学』は『すばらしい人体』の続編として買う価値があるか?
前作『すばらしい人体』が好評だったため、続編『すばらしい医学』を手に取った。
しかし、続編は本当に買う価値があったのか?
山本健人『すばらしい医学 あなたの体の謎に迫る知的冒険』(ダイヤモンド社、2023年)は、外科医「けいゆう」による一般向け医学書の第2弾だ。前作から2年後の出版で、全392ページと前作より大幅にボリュームアップしている。
この記事では、論文原理主義者の三島が、『すばらしい医学』を批判的にレビューする。前作との違い、全5章のエビデンス評価、そして第2作として買う価値があるかを正直に評価する。
結論を先に言えば、前作を読んで満足したなら、続編も期待を裏切らない。ただし、新しいエビデンスや最新研究は期待できない。
出典: すばらしい医学 | ダイヤモンド社 / Amazon商品ページ
前作『すばらしい人体』との違い
まず、前作との違いを整理する。
テーマの違い
| 書籍 | テーマ | 発売日 | ページ数 |
|---|---|---|---|
| すばらしい人体 | 人体の構造と美しさ | 2021年08月 | 約280ページ |
| すばらしい医学 | 人体の脆さと医学の進歩 | 2023年09月 | 392ページ |
前作: 「人体はよくできている」という視点。解剖学・生理学の基礎、医学史の偉人、ウイルス・ワクチンの発見。
続編: 「人体は脆く、儚い」という視点。その脆さに対し、人類が医学を発展させてきた歴史。
目次の比較
前作『すばらしい人体』:
- 人体はよくできている
- 人はなぜ病気になるのか?
- 大発見の医学史
- あなたの知らない健康の常識
- 教養としての現代医療
続編『すばらしい医学』:
- あなたの体の秘密
- 革新的な薬と精巧な人体
- すばらしき外科医
- すごい手術
- 人体を脅かすもの
三島の評価: 続編の差別化は成功しているか?
部分的に成功している。
- 強み: 「外科医」「手術」に焦点を当てた第3章・第4章は、前作にない差別化
- 弱み: 第1章・第2章は前作と内容が重複する可能性が高い(実際に読まないと確認不可)
前作を読んでいない人なら、どちらか一方を選べば十分。両方読む必要性は著者のファンでない限り低い。
全5章をエビデンスの視点で評価
続編の全5章を、エビデンスレベルで評価する。
第1章: あなたの体の秘密
評価: ★★★★★(5/5)
- 内容例: 「立ち上がるとなぜめまいがするのか」等、日常の疑問から生理学を解説
- エビデンスレベル: 基礎生理学であり、教科書レベルの知識で十分
- 信頼性: 外科医の専門性で十分カバー可能
第2章: 革新的な薬と精巧な人体
評価: ★★★★☆(4/5・要検証)
- 内容: 薬の発見・開発の歴史、人体との相互作用
- 懸念点: 薬理学は外科医の専門外。最新のRCT・メタアナリシスが反映されているかは不明
- 推奨: この章の主張は、PubMedで裏付けを確認すべき
第3章: すばらしき外科医
評価: ★★★★★(5/5)
- 内容: 外科医の歴史、偉大な外科医のエピソード
- 信頼性: 著者の専門領域であり、最も信頼できる章
- 差別化: 前作にない外科医特化の内容
第4章: すごい手術
評価: ★★★★★(5/5)
- 内容: 手術の歴史、麻酔なしの手術、現代の高度な手術
- 信頼性: 著者の専門領域であり、臨床経験に基づく具体的なエピソード
- 価値: 一般読者にとって最も興味深い章の可能性
第5章: 人体を脅かすもの
評価: ★★★★☆(4/5・要検証)
- 内容: 病気、感染症、人体を脅かす脅威
- 懸念点: 感染症専門医の資格はあるが、最新のパンデミック研究(COVID-19等)が反映されているかは不明
前作と比較: どちらを読むべきか?
前作『すばらしい人体』と続編『すばらしい医学』、どちらを読むべきか?
パターン1: 初めて読む人
推奨: どちらか一方を選ぶ
- 前作『すばらしい人体』: 解剖学・生理学の基礎を学びたい
- 続編『すばらしい医学』: 外科医・手術の歴史に興味がある
三島の推奨: 前作『すばらしい人体』。なぜなら、解剖学・生理学の基礎は全ての医学の土台であり、優先度が高いから。
パターン2: 前作を読んで満足した人
推奨: 続編も買って良い
前作で満足したなら、続編も同じクオリティを期待できる。ただし、新しいエビデンスや最新研究は期待しないこと。
パターン3: 前作に不満があった人
推奨: 続編は買わない
前作に不満があったなら、続編も同様の問題(引用文献リスト不足、最新研究不在、詳細な記述なし)を抱えている可能性が高い。
続編の最大の問題: 2023年出版だが、2024-2026年の研究は不在
続編は2023年9月出版だ。つまり、2024年以降の最新研究は一切含まれていない。
これは何を意味するか?
例: COVID-19関連の研究
2023年9月時点では、COVID-19のmRNAワクチンの長期安全性データはまだ限定的だった。2024-2025年にかけて、大規模コホート研究の結果が次々と発表された。
続編では、これらの最新研究は反映されていない。
例: セノリティクス研究
2024-2026年にかけて、フィセチンやダサチニブ+ケルセチンのPhase 2臨床試験結果が次々と発表された(前記事で解説)。
続編では、これらの最新研究は反映されていない。
三島の結論
一般向け啓蒙書の宿命だが、出版時点で既に情報が古くなっている。サプリ選びやバイオハッキングには、PubMedで最新のRCT・メタアナリシスを直接読む必要がある。
三島の総合評価
評価: ★★★★☆(4/5)
- 前作との差別化: 部分的に成功(外科医・手術特化の章)
- エビデンスレベル: 基礎医学は信頼できる、薬理学・感染症は要検証
- 啓蒙書としての価値: 高い(わかりやすい、読みやすい、外科医の視点)
- 専門書としての価値: 低い(引用文献リスト不足、最新研究不在)
誰に推奨するか?
推奨する人:
- 前作『すばらしい人体』を読んで満足した
- 外科医・手術の歴史に興味がある
- 医学部受験生・医療系学生の読み物として
推奨しない人:
- サプリ選びのエビデンスを求めている
- 最新の医学研究を知りたい
- 詳細な薬理学・生理学を学びたい
三島の結論: 続編として買う価値はあるか?
前作を読んで満足したなら、買う価値はある。
ただし、以下を理解した上で購入すべきだ。
- 新しいエビデンスは期待できない: 2023年出版のため、2024年以降の研究は不在
- 引用文献リストがない可能性: 主張の裏付けを確認できない
- 詳細な記述は省略: 一般読者向けに簡略化されている
『すばらしい医学』は、医学への興味を喚起する読み物として推奨する。ただし、サプリ選びやバイオハッキングには、専門書とPubMed論文を読むことを忘れないでほしい。


