グリーン地中海食は何が違うのか。従来版との差をDIRECT-PLUSから読む

グリーン地中海食は何が違うのか。従来版との差をDIRECT-PLUSから読む

地中海食は、もう十分に強い。

以前まとめた地中海食メタアナリシスでも、心血管イベント30%前後の低減は十分に妥当だと書いた。だから次に出てくる疑問はこれだ。

グリーン地中海食って、普通の地中海食より本当に強いのか?

私は最初、この名前を見た時に少し警戒した。だいたいこういう名称は、マーケティングが先に走るからだ。

だが論文を読むと、意外と中身はきちんと定義されている。ただし、同時に限界もかなりはっきりしている。

先に結論を書く。

  • グリーン地中海食は、単に野菜を増やした版ではない
  • 実態は 高ポリフェノール化した地中海食
  • 普通の地中海食より差が出たのは、主に 内臓脂肪、肝脂肪、腹囲、炎症、インスリン抵抗性
  • 体重はそこまで変わらない
  • ただしエビデンスは、ほぼ DIRECT-PLUS単一試験群 に依存している

つまり、「面白い上位互換候補」ではある。だが、現時点で新しい標準と断言するには早い。

まず定義。グリーン地中海食は何を足した食事なのか

ここを曖昧にすると話が崩れる。

Heart誌のDIRECT-PLUS本論文では、3群比較になっている。

  • HDG: 一般的な健康食ガイドライン
  • MED: 通常の地中海食
  • green-MED: 強化版の地中海食

両方の地中海食群に共通していたのは、

  • エネルギー制限
  • 身体活動指導
  • クルミ 28g/日

だ。

そして green-MED だけに追加されたのが、

  • 緑茶 3-4杯/日
  • Mankai 100g/日 のグリーンシェイク
  • 赤肉・加工肉をさらに減らす

という構成だった。

つまり、これは「緑の野菜を多めに食べる地中海食」ではない。ポリフェノールをかなり意図的に積み増し、動物性タンパクの一部を植物性に置換した介入 だ。

ここは重要だ。記事タイトルだけ見て、サラダを増やせば同じだと読むのは違う。

6か月時点。体重より、腹囲と代謝に差が出た

まず、最初の6か月で何が起きたか。

DIRECT-PLUSの心代謝解析では、

  • 体重:
    • green-MED -6.2 kg
    • MED -5.4 kg
    • HDG -1.5 kg
  • 腹囲:
    • green-MED -8.6 cm
    • MED -6.8 cm
    • HDG -4.3 cm
  • LDL-C:
    • green-MED -6.1 mg/dL
    • MED -2.3 mg/dL
    • HDG -0.2 mg/dL
  • DBP:
    • green-MED -7.2 mmHg
    • MED -5.2 mmHg
    • HDG -3.4 mmHg
  • HOMA-IR:
    • green-MED -0.77
    • MED -0.46
    • HDG -0.27
  • hsCRP:
    • green-MED -0.52 mg/L
    • MED -0.24 mg/L
    • HDG -0.15 mg/L

だった。

見ての通り、体重差はそこまで大きくない。普通の地中海食でも十分落ちている。

だが、

  • 腹囲
  • LDL
  • 拡張期血圧
  • インスリン抵抗性
  • 炎症マーカー

は green-MED が一段良い。

この時点で、グリーン版の差は「痩せる食事」よりも、脂肪の質と代謝の質を少し深く削る食事 と読んだ方が正確だ。

一番大きい差は、肝脂肪だ

インパクトが最も強いのはここだ。

Gut誌の18か月RCTでは、肝内脂肪をMRSで見ている。

結果はかなり分かりやすい。

  • NAFLD prevalence:
    • HDG 54.8%
    • MED 47.9%
    • green-MED 31.5%
  • 肝脂肪減少:
    • green-MED -38.9%
    • MED -19.6%
    • HDG -12.2%

著者は、green-MED が肝脂肪減少をほぼ倍増させた と書いている。しかもこの差は、体重減少を調整しても残る

これは普通の地中海食との差として、かなり意味がある。

私はこの論文を読んで、green-MEDをただの地中海食の派生型としては見なくなった。少なくとも 脂肪肝寄りの文脈 では、追加の価値がありそうだ。

内臓脂肪も、体重以上に落ちている

2022年のVAT解析も同じ方向を示す。

  • 体重:
    • MED -2.7%
    • green-MED -3.9%
  • 腹囲:
    • MED -4.7%
    • green-MED -5.7%
  • VAT:
    • HDG -4.2%
    • MED -6.0%
    • green-MED -14.1%

ここでも、体重の差は modest。でも 内臓脂肪は green-MED で明らかに深い

つまり、体重計だけ見ていると green-MED の差は見えにくい。差が出ているのは、どこに脂肪が残るか の方だ。

この点はかなり重要だ。メタボ文脈で本当に怖いのは、皮下脂肪より内臓脂肪だからだ。

脳萎縮でも差はあるが、ここは少し慎重に読む

AJCNの2022年論文では、MRIベースで脳萎縮指標を見ている。

50歳以上では、MED群もgreen-MED群も加齢に伴う脳萎縮をある程度抑え、最良はgreen-MED だった。

これは面白い。だが、私はここを一番強くは推さない。

理由は単純で、

  • 主要な臨床イベントではない
  • サンプルは限られる
  • 同じDIRECT-PLUS群からの派生解析

だからだ。

後続論文では、HbA1cやHOMA-IRの改善がこの脳保護シグナルに関与している可能性も示されている。だが現時点では、「脳に効く食事法が確立した」ではなく、「かなり有望」 くらいが適切だと思う。

では、グリーン地中海食の本質は何か

私の読みでは、差の中心は3つある。

1. ポリフェノール量の上積み

通常のMED群でもクルミ由来のポリフェノールが入る。だが green-MED はそこに、

  • 緑茶
  • Mankai

を加え、polyphenol負荷を大きく増やしている。

2. 赤肉・加工肉の削減

地中海食でも赤肉は多くないが、green-MED はさらに絞っている。これは単なる「足し算」ではなく、引き算の介入 でもある。

3. 植物性タンパクへの部分置換

Mankaiは、単なる葉物ではない。植物性タンパク源として扱われ、動物性タンパクの一部を置き換えている。つまり green-MED は、低赤肉・高ポリフェノール・部分的植物化 のパッケージだ。

この3つがまとまっているから差が出たのであって、緑茶だけ足しても同じとは言えない。

ただし、現時点での限界はかなり大きい

ここを盛ると三島ではなくなる。

1. ほぼ単一コホート依存

肝脂肪、内臓脂肪、脳、proteomics、epigenetics。全部面白い。だが、ほとんどがDIRECT-PLUS由来 だ。

つまり、独立した別集団で再現されたわけではない。

2. 参加者の88%が男性

しかも、腹部肥満や脂質異常がある中年集団だ。健康な若年女性、後期高齢者、アジアの一般住民にそのまま外挿するのは危険だ。

3. 全群に運動指導とカロリー制限が入っている

これは良い設計でもあるが、同時に「グリーン地中海食だけ」の効果を純化しにくい。

4. Mankaiが再現しにくい

日本で普通に再現できるのは、

  • クルミ
  • 緑茶
  • 赤肉を減らす

くらいだ。Mankaiまで忠実にやるのは、ほぼ無理だと思っていい。

俺の結論: 普通の地中海食で十分強い。グリーン版は脂肪肝・内臓脂肪寄りなら検討価値あり

ここまで読んで、「じゃあ全員グリーン地中海食に切り替えるべきか」と言われたら、私はまだ No と答える。

理由は、

  • エビデンスが単一試験群依存
  • 再現性がまだ弱い
  • 実践の再現難度が高い

からだ。

ただし、普通の地中海食との差を論文ベースで見るなら、green-MED は明らかに

  • 肝脂肪
  • 内臓脂肪
  • 腹囲
  • hsCRP
  • HOMA-IR

あたりで上積みがある。

だから私の結論はこうなる。

  • 心血管予防の土台 としては、普通の地中海食でまず十分
  • 脂肪肝や内臓脂肪をさらに詰めたい人 には、green-MEDの思想はかなり面白い
  • ただし再現するなら「Mankaiを探す」より、赤肉を削って、緑茶とクルミを足し、EVOO中心にする ところから始める方が現実的

現時点での評価は、上位互換候補。ただしまだ標準ではない。これが一番フェアだ。

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三島 誠一

論文原理主義者。PubMed、Examine.comを週末に巡回するのが娯楽。メタアナリシス・RCTまで読み、成分フォームと生体利用率を重視する。

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