女性アスリートの三主徴、エネルギー不足で何がどれだけ落ちるか

女性アスリートの三主徴、エネルギー不足で何がどれだけ落ちるか

女性アスリートの三主徴というと、まだ「一部のエリート選手の特殊問題」と思っている人が多い。

でも数字で見ると、そういう話ではない。

三主徴の完成形、つまり

  • 低エネルギー利用可能性(LEA)
  • 月経異常
  • 骨密度低下

の3つが全部そろう人は確かに少数だ。だが、入口のLEAはかなり多い。しかも、その段階でパフォーマンスも骨も先に傷み始める。

結論から言うと、こうだ。

  • full triad は少数でも、どれか1つ崩れている状態は珍しくない
  • LEAは女性アスリートの44.2%
  • moderate risk で骨ストレス障害RR 2.6、高リスクでRR 3.8
  • 14日LEAで20分TTパワー -7.8%、疲労困憊時間 -18.9%

要するに、三主徴は「将来の健康問題」ではない。今の競技力を削る問題でもある。

先に結論

論点数字竹内の評価
full triad の頻度0%〜15.9%完成形は少数
LEAの頻度女性アスリートで 44.2%入口はかなり多い
骨ストレス障害リスクmoderate RR 2.6、high RR 3.8かなり重い
高持久系の長期無月経42%, OR 25.35 vs 他競技露骨に増える
14日LEAのTTパワー-7.8%(-17.5W)普通に痛い
14日LEAの疲労困憊時間-18.9%競技力にも直撃

三主徴は、見た目の細さと引き換えに競技力まで削る。

full triad は少ない。でも、それで安心するのは早い

2013年のレビュー は、65研究・1万人超のデータをまとめている。

結果はこうだ。

  • 三主徴3つすべて: 0%〜15.9%
  • 2要素保有: 2.7%〜27.0%
  • 1要素以上: 16.0%〜60.0%

ここで大事なのは、3つそろった人だけを数えると実態を軽く見積もることだ。

三主徴は「診断名」より、崩れ方の連続体として見た方がいい。

たとえば、

  • 体重は落ちた
  • 月経周期が少し乱れた
  • 疲れが抜けない
  • でもまだ骨折はしていない

この段階で止めないと、あとから骨ストレス障害で回収される。

さらに 2025年の systematic review and meta-analysis では、LEA該当が 44.7%、女性アスリートに限っても 44.2% だった。

full triad は少数。だが、入口のLEAはほぼ2人に1人。このズレが一番危ない。

どこから壊れるか。まず月経系が先に反応する

「少し食事を削るくらいなら大丈夫」と思われがちだが、ここはかなり楽観できない。

Loucks 2003 は、規則的月経のある女性が対象だ。energy availability を 45 / 30 / 20 / 10 kcal/kg LBM/day に5日間操作し、LH pulsatility を見ている。

結果はかなりはっきりしている。

  • 30 kcal/kg LBM/day では有意変化なし
  • 30未満 で LH pulse frequency 低下
  • 代謝側では cortisol 上昇方向、glucose 低下方向

つまり、よく言われる 30 kcal/kg FFM/day という数字にはちゃんと理由がある。

しかも重要なのは、たった5日 で反応していることだ。

月経が止まるまで待つ必要はない。身体はもっと早い段階で「今は再生産より生存を優先する」と判断している。

骨は“あとから”ではなく、5日で代謝が悪化する

骨密度低下というと、何カ月も何年もかけて起きるイメージがある。

それ自体は正しい。でも、骨代謝の方向はもっと早く悪くなる。

Papageorgiou 2017 は、女性で 45 vs 15 kcal/kg LBM/day を5日間比較した crossover 研究だ。

結果は、

  • β-CTX AUC上昇 = 骨吸収増加
  • P1NP AUC低下 = 骨形成低下

だった。

要するに、5日LEAで骨は「作る量を減らし、壊す量を増やす」方向に入る

DXAの数値がまだ普通でも安心できない理由がこれだ。

だから triad を見るときは「骨密度が低いか」だけでは足りない。骨密度が落ち始める前の状態を止める必要がある。

実害は骨ストレス障害として返ってくる

ここが三主徴の一番わかりやすい代償だろう。

Tenforde 2017 は、大学女性アスリート239名が対象だ。triad cumulative risk score で分類し、その後の骨ストレス障害を追っている。

結果は、

  • moderate risk: RR 2.6(95% CI 1.3-5.5)
  • high risk: RR 3.8(95% CI 1.8-8.0)

だった。

この数字はかなり重い。

「ちょっと細い」「月経がたまに乱れる」程度に見える状態でも、将来のBSIリスクは2〜4倍まで跳ねる。

さらに Tenforde 2022 は、どの部位の骨ストレス障害が triad に強く引っ張られるかまで見ている。

trabecular-rich 部位、つまり仙骨、骨盤、大腿骨頸部のような場所では、

  • spine BMD が1SD低い: OR 3.08
  • whole-body BMD が1SD低い: OR 2.38
  • 体重が1SD低い: OR 5.26

だった。

竹内的には、ここが重要だ。

三主徴は「どこかが少し弱る」ではない。仙骨や骨盤のような、競技継続に響く場所のBSIリスクをはっきり上げる

高持久系では、月経異常とBSIが露骨に増える

2024年の cross-sectional study は、高持久系の女性アスリートを他競技・非アスリートと比較している。

結果はかなり強い。

  • 長期無月経: 42%
  • vs 他競技: OR 25.35
  • vs 非アスリート: OR 6.20
  • BSI prevalence: 29%

しかも著者は、DXAが普通でも BSI リスクを否定できないと書いている。

つまり、

  • 走れている
  • 骨密度も一応セーフ
  • でも月経は乱れている

この状態でも、リスクは十分高い。

「細くて軽い方が速い」の副作用が、そのまま見えている。

競技力も普通に落ちる。しかも回復は遅い

ここを見落とすと、三主徴を“将来の健康教育”で終わらせてしまう。

でも実際は、今のパフォーマンスにも来る。

Jeppesen 2024 は、女性持久系アスリートで 14日間のLEA(22 kcal/kg FFM/day) を行った randomized crossover だ。

結果はかなり実務的だ。

  • cortisol: 22%増
  • 20分TT power: 7.8%低下-17.5W
  • 3日リフィード後も 6.7%低下-14.5W
  • fatigue test: 18.9%低下-22.9秒

これを「少し食事を削っただけ」と呼ぶのは無理がある。

しかも、3日食い直してもTTは戻り切らない

さらに Oxfeldt 2024 でも、10日間のLEA(25 kcal/kg FFM/day) で、

  • body mass 低下
  • muscle glycogen 低下
  • repeated sprint ability 低下
  • 4-min TT 低下
  • rate of force development 低下

が出ている。2日回復で一部は戻るが、OEA群にはまだ負ける

要するに、短期減量で得る「軽さ」より、失う glycogen と出力 の方が大きいケースがある。

何を優先して直すべきか

ここでサプリに逃げると、だいたい失敗する。

三主徴の本体は カルシウム不足 でも 鉄不足 でもない。まず エネルギー不足 だ。

順番はこうだろう。

  1. energy availability を戻す
  2. 月経の乱れを放置しない
  3. BSI歴、疲労、出力低下を同時に見る
  4. 必要なら ビタミンDカルシウム を補助で入れる

この順番が逆になると危ない。

「食事は足りていないけど、鉄とカルシウムは飲んでいます」では、本質は何も解決していない。

補助として使うなら、こういう基礎側のサプリはありだ。

California Gold Nutrition, ビタミンD3、2,000IU、ソフトジェル360粒

骨代謝の土台。三主徴の本体はエネルギー不足なので、これは代替ではなく補助として使う。

iherb.com

(Amazonと楽天では、同じ商品が見つからない場合があります)

ただし、これはあくまで補助だ。LEAを抱えたままのビタミンDは、赤字経営の会社に会計ソフトだけ入れるようなものだと思っている。

竹内の結論

女性アスリートの三主徴を数字でまとめると、こうなる。

  1. full triad は少数でも、LEAは高頻度
    • full triad 0%〜15.9%
    • LEA 44.2%
  2. 30 kcal/kg FFM/day を切ると、生殖系は5日で反応する
  3. 骨代謝は5日で悪化方向に入る
  4. moderate risk でBSI RR 2.6、高リスクでRR 3.8
  5. 14日LEAでTTパワー -7.8%、疲労困憊時間 -18.9%

だから俺の結論はシンプルだ。

三主徴は、痩せた見た目と引き換えに健康を失う話ではない。競技力まで一緒に削る話だ。

月経異常が出てからでは遅い。疲労、体重、食事、骨ストレス障害歴、出力低下。このへんが並び始めた時点で、まず疑うべきは 意志の弱さではなく、エネルギー不足 だろう。

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竹内 翔

効果サイズ原理主義者。エビデンスあっても効果サイズ小さいなら優先度は下がると考える。プロテイン、クレアチン、EAAがメインだが、効果サイズを基準に幅広く評価。

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